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昭和な少年。

「のーんちゃーん!あーそーぼー!」

ちかごろ、小学校低学年くらいの子どもが近所に遊ぶようになった。
団地に越してきた子たち。または、保育園から小学生になった子たち。
学校帰りの子どもたちが遊ぶ光景。
元気にお外で遊ぶのは、見ていて微笑ましい。かわいい声がするとにんまりする。

その中に、半袖短パン、よく日に焼けた、坊主頭の少年がいた。見た目、わんぱくBOY。
足元は素足にビーサン(ゴム草履)だ。

「わっ。昭和な少年だ」
勝手に私の中で、彼を「昭和な少年」呼ばわりすることにした。

昭和な少年は、我が家の斜めお向かいさんの娘さん「のんちゃん(仮)」とお友達になったもよう。夕方、私が仕事から帰ると、
「のーんちゃーん、あーそーぼー!」
とキックスケーターで乗り付けて、一緒に遊んでいた4月ごろ。
半袖短パン、ビーサン、キックスケーター。

ほぼ毎日。

けれども、のんちゃんは、ここのところ帰りが遅いらしい(学童クラブへ入ったのだ)。
昭和な少年は、ほぼ毎日、肩透かしを食っている。持て余し、キックスケーターで、シャーッ!シャーッ!と、全力で我が家の前の道を行ったり来たりしている。
もとい、行ったり来たりを全力でしている。昭和な少年よ。

少年は休日もめげない。

GW中、朝も9時くらいから、キックスケーターの音。のんちゃん宅前に乗り付ける。
けれどものんちゃんは、ずいぶん年の離れたお姉ちゃんに連れられて、お出かけに行ってしまったようだった。

その日私は、家の裏で、DIYだ!本棚だ!と、大きさのさまざまな廃材を組み合わせたり、並べたりして、夢中になっていて。
かたや、夫は庭の芝生を手入れしようと、裏の倉庫から芝刈り機を用意したり、肥料をはこんだりしていた。何かを裏の倉庫に、持ちに来る度に、私のDIYの進み具合を「どう?」「できた?」と覗いたりしながら。

と、三回目くらいに夫が来た時。
後ろからついてくる、ちっちゃいの。

昭和な少年だ。「え?」

「なんかついてきちゃってさ〜  笑」
とタレ目気味に笑顔な夫。少年は夫と、人懐こく話していて、仲良くなっていた。

「友達になったの?」と聞くと、

「うん!」と少年。

私の「おなまえは?」には、ごにょにょと、こちらはあまり重要ではなさそうな返答。
そんなことよりも、昭和な少年は、裏の倉庫を覗き込み、娘たちが昔乗り回していたサビだらけのキックスケーターを見つけ、
「それ乗りたい!」とねだり、夫に出してもらった。

シャーッ!シャーッ!  ッシャーー!

昭和な少年、全力で疾走。
サビサビのキックスケーターで風を切る。
行ったり来たりを全力でする。

「うまいこと乗るもんだな〜」と夫。

近所のおじちゃんと、昭和な少年の休日。
古き良き時代の風景、ノスタルジック。

しばらくすると、少年の兄弟たち?がわんさかやってきて、「ママー!いたよーっ!!」と少年は捕獲されていった。どうやら、勝手に遊びに来ていたもよう。


今どき。

お外で元気に遊ぶ子どもは少なく、近所の子どもが勝手に遊びに来ちゃう、みたいなこともなくなっていたけれど。

私たちが子どもの頃は、近所の子どもたちと自転車をわけもなく乗り回したり、友達の家にアポなしで集まったり、近所のおじちゃんやおばちゃんも登場人物だった。
昭和な光景。

よく日に焼けた、半袖短パンにビーサンな、
人懐こい少年。まるで、昭和からタイムスリップしてきちゃったと思うほど。

日が長くなり、元気な子どもの声が
日暮れまで聞こえる。

「のーんーちゃーん!あーそーぼー!」

私は近所のおばちゃん。

せめて少年が
「いつまで遊んでんの!?」
と捕獲されていくのを見守る。



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