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ふるきよき。

白地にレースの刺繍。

振袖の裾に散りばめられた、
スパンコールの光の反射。

フワフワっとした端が襟から覗き、
あてられた帯の淡いブルーとグリーンとピンクのクラシカルな花柄。
黒の帯あげが品良く色合いを締め、くすみピンクのベルベットの花飾りが帯に映える。

鏡の前で、次第に笑顔になっていく長女。

成人式の振袖は、事前にこんなイメージでと要望を伝えてあったけれど、これかこれかこれなんてどうかしらと三枚のご提案の中、「これ」と即決したのは純白の振袖だった。

半衿や帯、帯揚げによってさまざまなテイストになりうるその着物は、着付け師の手によって、上品に、そしてどこか可愛げを残す、クラシカルな仕立てとなっていった。

イメージしていたものよりも、数段も素敵になりそうで、全身鏡の前の長女はすでに、立ち居振る舞いが優雅になっていた。

着物に袖を通したとたん、視線が憂いを帯びていく。帯が締まり、帯揚げ、帯締の飾りに、髪に手をやる指先もどこかしとやかに。

いつの間に、
こんなに大きくなったんだろう。

「わぁ」
と目を輝かせ、喜びがこぼれ。

「くるっとまわって見せて」

ゆっくりと、ちょこちょこと、ぎこちなく回る長女を見る私の目は、ちゃんと母親の眼差しだったろうか。

素敵な女性になったものだ。

秋には紅葉の中、写真撮影をしていただく。
式当日にもまた、少し雰囲気を変えて。

古き良きものを大切にする、心のある人になってほしいと願い、彼女の名前には「古」という字が入っている。

着物は導く。
彼女を、しなやかで品のある女性へ。

                                                             衣装合わせ にて。

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