整う。
サウナが好きです。
岩盤浴も好きです。
汗をかくことが好きです。
仕事初めの帰り、娘たちとお風呂屋さんへ。
そのお風呂屋さんの岩盤浴には、「笑」「健」「潤」「静」「爽」の部屋がある。各部屋の温度は、その順。「静」はホットヨガなどのアクティビティスタジオも兼ね、「爽」は火照った身体をクールダウンする部屋となっている。
一番高温で多湿な「笑」。時間によって、ロウリュウも行われる、熱さを求める強者たちの部屋。がっつり汗かきます、常連です、なんならこの席らへんが一番熱い場所や、と陣取ってる主もいます。扉の開け閉めにも目を光らせ、そない開けたら部屋の温度が下がるじゃろがい…な視線をはなっているよう。
ひょひょいと私や長女が座り、汗をじわじわかき、ポッタポッタと滴がたれおちて、すっかり蒸しあがるまでの間に、主はころよく退席していくのです。おそらく一連の流れのなかの、小休止。
水を飲むとか、「爽」で冷やすとかの。淀みない流儀をくずさない主、に一目置きながら、ホッカホカのべちゃべちゃの肉まんみたいな私たちは、出るやいなや水を飲み「爽」でクールダウン。涼しく無機質な部屋。そして、鏡。なりふり構わず汗をかいて、茹だった己の、振り乱す勢いのテンションまで沈静してゆく、尽くクリアな空間。冷静さを取戻す。
はたまた「健」の部屋。トルマリンやゲルマニウムやの砂利石か、石版か、に寝ると、プラネタリウムな天井と癒し音楽に浸ることになる。腹ばいに2分、仰向けに10分。薄暗く星が瞬く天空。じんわりと汗をかき、VIPなスルメイカのように気持ちよいままに発汗してゆく。高級で芳醇な干物の作り方みたいに。
このまま気持ちよく干物になるわけにはいかないので、と、はたと気がついて退室。水を飲む。たっぷりと。
「潤」へ入ってみたり(52℃ほどの岩塩の部屋)、「静」をのぞいてみたり(ピンク色の照明がちょっといかがわしく、たまたまカップルもいて気まずくふわっと見渡す程度)したが。
とにもかくにも、たくさん汗かきました。
その後、温泉へとうつり、やっほいとするり裸ん坊になり、炭酸泉や露天風呂やつぼ湯にぽっかりと浸かり、月夜の雲の流れをながるるままに見上げていました。
赤の他人と裸ん坊。
湯船にぽっかり裸ん坊。
ツルンと満月に近い月は、うすく雲に走られながら、おおらかに見下ろしている。
狭く熱いいろいろな部屋で、あっちやこっちやの位置取りと、もう少しあと少しの粘りと、濃い汗をベチャベチャにかいたあとで。もしくは、VIPな干物になりそこねたあとで。
すこーんとぬける夜空と、かくす術もない裸ん坊でぽっかり。
大きくもなく、少し小さく、肋骨がすこし浮き出て、小さな出臍のある、昔からの馴染みのある裸ん坊で。
あぁ、私はこれ以上でもこれ以下でもない。
ここのこのでっぱりと、ここのこの傷跡と。
「整う」。
私の、ちょうど、正確な形を知るのである。
すっかり裸ん坊の寸法を。
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