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【読書感想文】黄色いマンション 黒い猫

原宿の黄色いマンションに住んで いたことがある。アイドルとして 忙しかった私の青春は、原宿と共 にあった。私にだって普通の日常 があったのだ─家族のこと、秘 密の恋、猫との日々、生と死······。 変わり続ける街並みを見つめ、過 去、現在、未来、さまざまな時間を行き来しながら大切な記憶を綴ったエッセイ。文庫化にあたり、「和田さんの今日子ちゃん」 他1 編を追加。講談社エッセイ賞受賞

本書  うらすじ より

なんてったってアイドルで、俳優で、舞台プロデューサーで、そして執筆のお仕事もする、キョンキョンこと小泉今日子さん。

男兄弟の中で育っているノリコ、二歳年上の姉ヒロコ、「スター誕生!」のオーディションに誘ったハルコ、ナオミとのタイマン、湿布を貼ってくれた保健の先生、トシちゃん、テレフォン歌謡曲で聴く石野真子ちゃん、便箋七枚のラブレターをくれたボーイフレンド、お母さんというより女という感じのユミさん、スタイリストのミカちゃん、革ジャンを売りつけてくるあの男、小雨、原宿、夾竹桃。

芸能界のキラキラした仕事をしながら、それでも彼女には、生活も日常もあって、きっとその生活や日常があってこその小泉今日子さんなんだな…と思うエピソードの数々。

面白そうな人が面白いことを言うより、面白くなさそうな人がちょっとシュールでブラックなことを言う方が本当に面白いのだと思う。

真剣に親権問題  より

今日子さんのお父さんはそんな人だったみたい。リリーフランキーさんみたいなお父さんを想像する。Spotify「ホントのコイズミさん」を聴いていても、そんな人の話を興味津々に面白がって聴く様子がうかがえる。

少しずつ肩の力が抜けていて、それでもちゃんと本質に目を向けていて。良い子過ぎず、悪い子ってわけでもなくて。たくさんの人と、たくさんの関係を作りながら、50歳を迎えた彼女は、とても素敵な女性だと思う。

かつて(ナオミとタイマン張ったあと)笑って湿布を貼ってくれた保健の先生に、「こういう大人の女の人になりたいなぁ」と夕暮れの保健室で涙をこらえながら思った、そんな「大人の女の人」に、今の小泉今日子さんはなっているのだと思う。

私もあと数年後には50歳になる。

大切な記憶も、悲しい別れや不思議な体験も、跡に残る傷も、たくさんの人たちとの関係も、猫も、全部が今の私に繋がっている。

宇宙規模で見たら、私が生きた時間なんてほんの瞬きするような時間なのだと思う。だから何をしたって大したことではない。自分にとって美しいと思える瞬間を重ねて、追悔の澱を少しずつきれいな水にできたらなと思う。

あとがきのようなもの より

私もそんな風に生きていけたらいいな。
前へ進む勇気をもらえた一冊。


ちなみに、私が初めて自分で買ったCDは、8cmシングルの「丘を越えて」だった。


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