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カムフラージュ。

気まぐれにきたメッセージは、
ちょうどまあるいオレンジの夕陽が
家々の窓に丸ごと映っているのを、
運転しながら見かけた帰り道だった。

子どもたちが手を離れて、急に自分の時間ができちゃったら、何か趣味でも見つけないとって焦ってます。柊は楽しく生活してる?
たくさん趣味ありそうね。

良妻賢母な彼女らしいメッセージに、家族のために夕飯の下ごしらえをするキッチンでの姿を思い出す。ソファーに座って編んでいたのは子どもの習い事用のカバーで、自分用の物すら編まなかった。

趣味かぁ。絵を描いたり、本を読んだり、陶芸をしたり、くらいかな。仙人みたいな生活をしているよ。笑

車を停めて、霞む空にぼんやりと沈んでいくオレンジを見届けながら、そう返す。

柊は本も絵も好きだったものね。陶芸もまだ続けてるんだね。いつか個展開いてね。

彼女を待ちながらよく本を読んでいた。二つの月のある世界*へ逃げ込んでは、根気よく彼女を待っていた。「待っている」ことを、私はいつも「本読んでる」と言った。

個展かぁ。笑
いつかできるようにがんばるよ。

絵も本も陶芸も、「好きだった」んじゃない。
あの頃から、私は、何か変わったろうか。
今も変わらずに「好き」なのだ。

絵を描きながら、
本を読みながら、
土を捏ねながら、
「待っている」ことを隠して生きて。


個展を開いたら、
彼女は見に来てくれるだろうか。
私は、
「見に来てほしい」と
言うだろうか。

いつか。







 二つの月のある世界*
村上春樹による長編小説「1Q84」の中で、主人公 天吾と青豆は二つの月が浮かぶ世界へ紛れ込む。

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