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陶を抱く。

冷たく固くなったその塊に、
両手根を当て、
ゆっくりと真上から体重を乗せる。
向きを変えながら
ぐぉんぐぉんと押しつけ、
じんわりとほぐれてゆくまで
繰り返す。

俵にまとめ、
両手で包み込み、
両手根を央へむけて体重を乗せてゆく。
躰ごとギッシギッシと、
押しつけては起こし、押しつけては起こし、回転しながら捏ねる。

ギッシギッシと、菊の花を咲かせてゆく。

轆轤に真上から叩きおろしパチンと据え、
濡らした平手でパンパンと叩き
廻し尖塔をたてる。

轆轤の回転をゆっくりに廻しはじめながら、腹筋に力をこめ、
両足を踏みしめ、
肘をその膝に固定し、
十分に濡らした掌で、
押し負けず力強く根元から
ぐぅんと立ち上げる。
 
上へと立ち上がった尖塔のその先頭に、
そっと掌の中央で、
向こう側へ押し倒すように宥めてゆく。
両手にしっくりとドーム状に。
すっぽりとなめらかに収まるまでに。

幾度かそうするうちに、
掌の熱にあてられ、芯を持ち、

従順になってゆく。

十分に濡れた親指と人差し指とで、摘むように括れを作り、その上部を、両手で包む。

手水を含む両親指を
芯に真上から押し当て、

ぐっと挿れる。央へ下へ。

そしてそのまま、ゆっくり押し広げてゆく。厚みを保ったまま玉ぶちに、
小さなその穴どこにたっぷりの泥を潤して。

祈るように両手の親指を重ね、
中指と中指で優しく挟み、
添わせ滑り上げる。
下からそっと中指の腹を這わすよう、
内と外との力を互いに感じながら。

十分に濡れたその指に、
従順に導かれ、
なだらかなその曲線を描いてゆく。

ふくよかなその膨らみを、中指がなぞる。

滑らかに、目を閉じても、感覚が造る。

手にしっとりと馴染む、
細い括れとふくよかな丸みを。

内と外とで、
触れ合う感触にその薄さを図り。

水を含んだなめし革。

触れるか触れないか
口元をそっと舐めす。
 



芯を持つ
やはらかにすべらかにまるい

貴方は

陶のよう


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