雨。


 雨が激しく降っていた。


駅に向かう道の途中。
公園の前で、ふと足を止めた。
公園の真ん中に、姉と弟であろう小さい兄弟がいた。
ひとつの傘を二人で分け合って、寄り添って立っていた。
弟は、姉の手をしっかりと握りしめていた。
その手はとても力強くて、何かを我慢しているように見えた。


「泣いてもいいんだよ?」


姉が弟に言った。
弟は、何も言わないまま、首を横に大きく振った。


「どうして?」


弟は、また何も言わぬまま、首を横に大きく振った。
姉は、困ったように微笑むと、空を見上げた。


「雨が降ってるね」


そう言うと、弟も空を見た。


「雨はね、神様が泣いてるの。神様だってこんなに泣くんだもん。だから、泣いたっていいんだよ?」


姉がそう言うと、弟の顔が、少し、ゆがんだ。


「おねえちゃんは?」


弟が、歪んだ顔で姉の顔を見た。
姉は、優しく微笑んで、弟の顔を見た。


「おねえちゃんはね、上手に泣けないの。だから、代わりに泣いてくれる?」


そう言われると、弟は「わっ」と涙を流し、姉に抱き着いた。
姉は、弟の頭をなでながら、


「ありがとね」


と微笑んだ。
それを見届けて、また歩き出した。
心の中で、

「ありがとう」

とつぶやいた。


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