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担当連載の書籍が出ます。「デザインの言語化」の編集者は何をした?


編集者として関わっているウェブメディア・Workship MAGAZINEから新しく本が出ます。

著者はこげちゃ丸さん。編集をWorkship MAGAZINE編集部(少年B、じきるう編集長)が担当しています。

こちらの本ですが、Workship MAGAZINEの人気連載「デザインの言語化ってなんだろう?」の書籍化となります。この連載の担当編集がわたしなので、そのまま書籍の編集も担当することになったかたちですね。

ところで、編集者っていったい何やってんの?って思う人が大半じゃないですか?著者やライターであれば文章を書く人です。わかりやすい。でも、編集者って、いまいち仕事が見えづらい気がするんですよね。

なので、今回は「デザインの言語化」に関しての、わたしの仕事について書かせていただこうと思います。

①ライター探し

まず、編集者の仕事として「ライターを探すこと」があります。わたしがWorkship MAGAZINE編集部に入った2020年10月はちょうど、新たな書き手を探している最中だったんですよね(その時々によって、ライターは募集していたりしていなかったりします。現在はある程度ライターが充実していることもあり、Workship MAGAZINEでは積極的な新規ライター募集をしていません)。

当時は特に、「デザイナー」の分野で骨太の記事を書けるライターさんを探していて、そこでわたしが提案したのがnote関係で知り合った、デザイナーのこげちゃ丸さんでした。

とは言っても、別にデザイナーなら誰でもよかったわけではありません。noteやTwitterを通じて、こげちゃ丸さんの人となりや、たまに上げるお遊びのデザインを見て、「信頼できそうだな」と思ったことがまずひとつ。

そして、決定打になったのがこのnoteでした。

これだけこだわりをもって書ける人、なかなかいなくないですか?

元々、noteを読んでいて「文章の上手な方だなぁ」と思っていたんですが、こんなに色々と考えて書いているとは思っていませんでした。正直、わたしよりよっぽど考えてる。「こげちゃ丸さんにはライター経験はありません。でも、これだけ文章にもしっかり向き合っているデザイナーさんであれば、絶対にいい記事を書いてくれるはずです!」そう言って編集長に推薦したのを覚えています。

②連載の方向性決め

こげちゃ丸さんにDMで相談し、OKの返事をいただいてからは企画の相談です。相談と言っても、「いくらなんでもライター未経験の人に企画出しは厳しかろう」と思って、最初はわたしが企画案を持っていったんです。

それは「全3回の連載で、各回ごとに違ったデザインを作ってもらい、その制作過程をねらいや工夫、失敗を踏まえてレポートする」という、いわばデザインの実践レポートでした。こげちゃ丸さんはふだん、noteやTwitterでお遊びのデザインを上げていたので、そこをイメージしての企画だったんですね。

SNS上での付き合いはあるとはいえ、本名も知らなければ、どれだけのことができる/書けるのかもわからない人です。しかもウェブメディアに上げるための原稿である以上「その人が確実に書ける内容」でなければいけません。わたしとしても初の編集業ということで、いま思うとかなり「置きに行った」企画案だなぁと思います。もしこの企画案がそのまますっと通ってたら、この本はできていなかったわけで、いま考えるとぞっとしますね。


ところが、こげちゃ丸さんのほうから「今回の企画、Bさんとしてはどんな方に読んでもらいたいと思っていますか?」という質問とともに、4つの逆提案が来ました。

①フリーランスのデザイナーに「あるある、そうだよね~」という共感してもらえる記事

②普段デザインに馴染みのない方に、デザイナーってこんなこと考えてるんだ、という息抜きのような記事

③何か発想方法のヒントになるようなノウハウ系のデザイン記事

④デザインエッセイみたいなデザインを題材にした日常+αの記事

身震いがしました。ライター未経験で、しかもやり取りの最初の数往復で、ここまで提案ができる人がいるとは、正直思っていなかったんです。自分の見る目は間違っていなかった。いや、何ならこの人はわたしの想像以上にスゲェかもしれない……!その時点で、かなり手ごたえを感じていました。

そこから、①の「デザイナーに共感してもらえる記事」に軌道修正したなかで、こげちゃ丸さんから出てきたキーワードが「デザインの言語化」でした。「『デザイナーが苦手だと思っていること』をあえて書いてみるのはどうでしょう」という提案だったと思います。

個人的には②の記事案も好きだったので、もしかしたらいつか、その方向性で記事を書いてもらう未来もあるかもしれません。

③原稿の編集

こうして連載が走り出しました。「編集者の仕事」と言われて、一般の人が真っ先に思い浮かぶのはこのフェーズかもしれません。

Workship MAGAZINEには、一番大切な編集のルールがあります。それは「そう編集した理由をライターさんに聞かれたときに説明できるか」です。

「うまく説明できないけど、なんとなくこっちのほうがいいと思うんで……」では、言われた側は納得できないですよね。それはただの個人の好みです。ちゃんと理由があればライターも納得できるし、逆に「それならこのほうがいいんじゃないですか?」と逆提案もできるはずです。

たとえば、上の段落の文章だと、「ですよね」「個人の好みです」「できるはずです」と「です」が3つ続いています。これは違和感があるし、しつこく感じるので、2番目は「それはただの個人の好み」にしました。みたいな感じです。


理由のある赤入れ(編集)のほかに、個人的にはもうひとつ大事にしていたことがありました。

編集者とは、ライターから上がってきた原稿の最初の読者です。自分もライターなので思うんですが、ここの反応ってけっこう大事な気がするんですよね。自信満々に提出した原稿でも「うーん……」なんて言われちゃうと、「えっ?今回の記事、ダメだった!?」と不安になってしまう。逆に「こんなんでいいのかな……」と思って出した記事でも、編集さんから褒められれば「意外と大丈夫なんだ!」と安心できます。たとえ原稿が修正だらけになっていても、です笑

なので、なるべくネガティブな反応はしないようにしよう、と決めていました。でも、原稿のクオリティは確保しなくてはいけません。編集はしっかりしつつ、感想は伝え、いいところを褒める。新米編集者のわたしはそう心がけて編集作業に挑んだのですが、杞憂でした。

いい記事って、初稿でおもしろいんです。もちろん、おもしろいからといって、そのままOKになることはまずありません。「このおもしろい記事を、どうやってもっとよくしていくか」と、こちらも気合いが入ります。

SNSではよくクリエイターと編集者のバトル、みたいな文脈の投稿がバズっていたりしますが、それはよっぽどこじれたときだけ。編集者はクリエイターの敵じゃないんです。相手を否定するために赤入れをしているんじゃない。お互いに全力を尽くして「いいものを作ろう」としているだけなんですよね。こげちゃ丸さんとはこの過程で、かなり深い信頼関係を築くことができたような気がします。

④企画案の相談

原稿が完成したら次は次回企画の相談です。

連載の企画はこげちゃ丸さんに提案していただくことが大多数でしたが、時には編集部から「このテーマで書けませんか?」と聞くこともありました。

もちろん、デザインの言語化にまつわることなら何でもOK!とはいきません。ウェブメディアは読者の需要があることが大前提。あえなくボツになった企画もたくさんあります。

そのへんの見極めも編集者の仕事です。とはいえ、せっかく考えたネタ案がボツになるのは悲しいもの。この要素を足せばいけるかも……とか、このキーワードを入れればSEOが取れるのでは……?とか、せっかくの企画がなるべくボツにならないようにしたい、とは思っていました。

この連載に関しては、第2回の「シンプルとミニマルの違いってなに?」や第7回の「デザイナーの言語化能力を高める4つのコツ。「本をたくさん読め」から抜け出そう」など、定期的にパワーのある企画を出してもらえたことが大きいと思います。

どちらもいい記事なので、ぜひいまのうちに読んでみてくださいね。書籍ではさらに手を入れて、よくなっているので、お楽しみに!

⑤効果測定

お金を払って記事を書いてもらっている以上、ちゃんと記事を出す意味があるのか?を確認するのも編集者の仕事です。メディアの運営資金も無限ではないですからね……。

細かい数字は出せませんが、Workship MAGAZINEにも恐怖の「打ち切りライン」があります。連載3回ごとに独自の基準でコンテンツを評価し、基準を超えていれば連載継続、満たしていなければ打ち切り。せっかくがんばってきた連載が終わってしまうのはイヤなものです。そして、それをライターさんに伝えなきゃいけないのもつらいんですよね。

いまでこそ大人気の「デザインの言語化ってなんだろう?」にも、じつは一度ヤバい時期がありました。というか、これは正直、覚悟をしていました。

Workship MAGAZINEにはさまざまな導線があり、「他のメディアに比べると記事を読んでもらいやすい」という恵まれた環境にあることは事実です。でも、それは他の記事でも同じこと。こげちゃ丸さんのフォロワー数は200人台と、決して多くはありません。いや、正直に言ってしまうとめちゃめちゃ少ない。フォロワー数が4ケタ、5ケタのライターさんが当たり前にいる状況のなかでは、告知力という意味では圧倒的に不利なんですよね。

なので、「数字に関しては、自分が告知をがんばろう」と心に秘めていました。基準ギリギリの時には、何度も過去記事の告知をしたり、告知のツイートをRTしたり……。こげちゃ丸さんの連載に限りませんが、できる限り打ち切りを回避するための努力をしてきたつもりです。

なので、これを読んでいるみなさまにおかれましては「あいつまた告知してるよ」ではなく「必死で一生懸命がんばってるんだな」と暖かく見守っていただければ、そしてできれば記事のリンクを踏んでいただければ幸いです。

「書きました!」って告知にはたくさん反応してもらえても、「編集しました!」まではなかなか反応してもらえない……ってのはまぁ、そりゃそうだよなぁとも思うのですが、めちゃめちゃ大事なので、この機会に改めてお願いをしておきます。担当した連載は打ち切りになってほしくないんだ~!!!

⑥書籍化の打ち合わせ・編集

以上が連載における編集者の仕事ですが、書籍化するとなると、追加で仕事が入ります。定期的な打ち合わせの同席です。

連載とのテイストを合わせるために、書籍分の書き下ろし記事もわたしが編集をすることが早々に決まり、となると状況把握のためにも打ち合わせの出席はマストになってきました。

とはいえ、出版社側との交渉はほぼ編集長の役割で、いち編集者である自分はそこまで口を出すことはなかったんですが。あんまし出しゃばって越権行為になるのもアレですしね……。大きな話は編集長に任せ、わたし個人はスケジュールやタスクの確認、会議の茶々入れが多かったような気がします。

あとは書籍化にあたってレイアウトの変更やページに収めるための文章変更などもあるんですが、ゲラを通しで読んで確認したり、どこを削るか、足した文章に違和感はないか、あたりのチェックを重点的にやっていました。


さて、そんなわけで。著者はもちろん当然ですが、編集者にもいろいろな苦労や努力がある、ということがわかってもらえたでしょうか。もうお分かりですよね。この本、わたしに取ってもめっちゃ思い入れがあるんですよ。

2年間にわたって、こげちゃ丸さんと二人三脚で育ててきた大事な連載の集大成ですし、だからこそ、多くの人に読んでもらいたいと思っています。

だからこそ、言いたいことはただひとつ。「デザインの言語化」、ただいま予約受付中です!みんな、ぜひ買ってください!!!

デザイナーはもちろんのこと、言語化が必要なビジネスマンにも絶対役に立つ本だと思うので、「俺デザイナーじゃないし」と言わずに、ぜひ読んでみて欲しいです。よろしくお願いします~!!!!!!!


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