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ライティング読書会10月度

毎月テーマ本を決める

読書サークル『書斎倶楽部』では、

毎月一作品、テーマの本を決めて、その本を読んだ感想をコメントとして書く。

それが、『ライティング読書会』です。

今月のテーマ本は『堕落論・続堕落論~坂口安吾著』でした。

サークルメンバーには、読書サークル内で発表してもらっています。

以下、読書サークル主宰の感想です。

ご興味ありましたら、サークルへのご参加をお待ちしています。

【堕落論・続堕落論~坂口安吾】

「堕落こそ、人間を救う道である」
堕落とは何か?
太宰治、小田作之助と並ぶ、坂口安吾は無頼派の作家の代表作です。
戦後、自由な思想や表現を許されない時代に、歯に衣着せぬ物言いで作品を書き上げ、世の中をペン一本で斬りに行った、それが無頼派です。

この作品は終戦の日本に、鞭を打つような作品です。
人は、抗えない運命を静かに受け入れて、滅びていく姿は、美しく見えてしまう。
それに、感動していた。見とれていた。
そこに異論を唱えるものはいなかったが、戦争が終わってみたら、そこに人間らしさは無い。
それは、真実の美しさではないと、安吾は訴えています。

人は正しき道を落ちきることが必要だ。
しかし、人は落ちきることはできない。
落ちきるには、人間は脆弱すぎる。
自分の内側に目を向けて、人間らしさを取り戻して、自分の生命力に従って生きる。それが必要だ。

日本人の農村文化と、天皇制に対しても批判をしています。
天皇陛下の「耐えがたきを絶え、忍び難きをしのぶ」という言葉に、「陛下がそうおっしゃるのなら、耐えがたきを絶えて、戦争を終わらせよう。」
そういって、国民は納得したが、それは、軍人が天皇という道具を利用して、天皇に号令させ、自分たちがそれに従うことで、人民にそれを押し付けているのだ。
「私たち国民は、戦争を終わらせたくて仕方なかったのに、それが言えなかった。」
あやつられ、ものを考えていない日本人に、考えろ、人間らしさを取り戻せと激しく叫んでいるのです。

本当に激しい表現ですが、この時代、特攻隊などがゆるされ考えることが許されず、皆が孤独だった。
本当はみな、特攻なんて作戦に賛同できるはずもなく、異論を唱えたかったのに、お国に逆らうようなことは言えず、我が子を差し出さなくてはいけない。
どんな気持ちだったのか、察することしかできません。
考えることが許されなかったこの時代に、従うしかなかった国民を、戦後になり堕落したと言われた国民を安吾は肯定しています。
堕落することが、人間じゃないか。
考えること、人間らしさを取り戻すことが『堕落すること』と安吾は言われているんですね。
人間らしさ。今の時代、人間らしく生きることが難しくありません。
政治批判しても、処罰されることもない今の時代に生きている私たちは、坂口安吾のいう『堕落した生き方』が出来ているのでしょうか。

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