![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86956620/rectangle_large_type_2_4a6dcd1b9a4a657b3132bdb14ffade68.png?width=800)
AIが選んだ毎日新聞「らしい」本14冊(新聞書評の研究2019-2021)
はじめに
筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています
なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。
過去の連載はこちらをご覧ください。
AIが選んだキーワード
前回は日経新聞が書評した書籍のタイトルを他紙と比較して、キーワードを抽出し、そのキーワードを含む書籍を紹介しました。
キーワードは、「経営」(23冊)、「投資」(6冊)、「構築」(5冊)、「マクロ」(4冊)、「強国」(3冊)、「評価」(3冊)、「値段」(3冊)、「原論」(3冊)でした。手法については以下にまとめてあります。
今回は毎日新聞のキーワードと書評された書籍を紹介します。
毎日新聞のキーワードは、「歌集」(3冊)、「漱石」(3冊)、「大江」(3冊)、「医師」(3冊)、「パチンコ」(1冊)、「日没」(1冊)です。
毎日新聞「らしい」タイトルはこれだ
歌集
「馬場あき子全歌集」(馬場 あき子著@角川文化振興財団)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) February 1, 2022
毎日新聞11/13
『早笛』から『あさげゆふげ』まで全二十七歌集、現代短歌を代表する歌人の偉業を1冊に完全収録!解題や詳細な年譜のほか、画期的な上句・下句索引を収載した決定版。https://t.co/xJ4417ciZj
「池田理代子第一歌集 寂しき骨」(池田 理代子著@集英社)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) March 4, 2021
毎日新聞1/16
初恋、老い、そして「最後の恋」-『ベルサイユのばら』の作者が短歌とエッセイで綴る、私的で普遍的な11のテーマ。https://t.co/VP1wMjEtrj
「歌集」がキーワードになっているのは、歌人の小島ゆかりさんが書評メンバーであることも関係しているのかもしれません。
「毎日歌壇」(毎日新聞の短歌投稿欄)の選者を20年ほどつとめた歌人の故河野裕子氏は、ある座談会で、「(時事問題をテーマにした題材が多い)朝日歌壇とは違うなということ。毎日歌壇は文芸色が強い。歌としてのレベルの高さを感じましたね」と述べています。
毎日新聞は短歌の文芸性に重きを置いているので、歌集の紹介が多いのかもしれません、
他紙では読売新聞が
「葛原妙子歌集」(川野里子/葛原妙子著@書肆侃侃房)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) April 1, 2022
読売新聞12/26https://t.co/d4yIEju7c9
「歌集 滑走路」(萩原 慎一郎著@KADOKAWA)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) December 16, 2020
32歳という若さで命を絶ち、遺作となった唯一の歌集は、若い世代が抱える不安や葛藤、希望を求める姿を描き、多くの共感を集めた。異例のベストセラーとなった歌集、待望の文庫化!https://t.co/rwJA2z11Jy
を紹介しています。読売新聞も書評子に歌人がいます。なお、『歌集 滑走路』は本稿の分析対象ではない2018年11月3日に朝日新聞も取り上げています。
漱石
「漱石と鉄道」(牧村健一郎著@朝日新聞出版)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) May 22, 2020
毎日新聞5/2
漱石は汽車で旅する近代の申し子でありながら、鉄道を通じて、競争、能率、スピード、利便性、成果主義の近代文明のあやうさ、戦争の愚かしさを語った。できるだけ忠実に、漱石の汽車旅の足跡をたどる。https://t.co/Pxxt55Z0H7.…
「江戸っ子漱石先生からの手紙」(渡邊文幸/マット和子著@理論社)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) September 15, 2019
毎日新聞9/1
夏目漱石が書き送った手紙は残っているだけでも2500通以上にのぼるそうです。小説以上に人間性が伝わる「手紙」をひもとき、生身の漱石にせまります。https://t.co/n1Ujl014HQ…
「漱石のいない写真」(前田潤著@現代書館)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) August 26, 2019
毎日新聞8/11
大正版“決定的瞬間”!著名な作家とカメラの衝撃的出会いをきっかけに世間を歩き出した一枚の写真。いかにして写真は日本人の日常に入り込んだか。https://t.co/GgOc6qwtUV…
なぜ「漱石」をタイトルに含む書籍が毎日新聞に複数回紹介されるのかは不明です。他紙では読売新聞も「漱石」をタイトルに含む書籍を複数紹介しています。読売新聞のキーワードにもなっていますので、読売新聞の分析の中で触れたいと思います。
大江
「石原慎太郎・大江健三郎」(江藤 淳著@中央公論新社)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) August 28, 2021
毎日新聞6/26
同世代随一の批評家が、盟友・石原慎太郎と好敵手・大江健三郎とに向き合い、その文学と人間像を論じた批評・エッセイを一冊にした文庫オリジナル作品集。https://t.co/x3Etml7Nt1
「大江健三郎全小説全解説」(尾崎 真理子著@講談社)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) October 23, 2020
毎日新聞9/26
あらすじ、登場人物、状況設定、執筆時の時代背景、作者の年譜的状況、主要批評、新解釈、年譜、全作品書誌、文献一覧。読解の手がかりを満載!長編30作、中・短編66作を徹底解剖!https://t.co/HgsXb8081m
「大江健三郎とその時代」(山本 昭宏著@人文書院)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) February 7, 2020
毎日新聞1/19
本書では、半世紀以上にわたり書き継がれた数々の作品と発言を隅々まで渉猟し、相互に影響し合った作品と時代の関係を丹念に解き明かしていく。気鋭の戦後史研究者が挑む、画期的評伝。https://t.co/Mq1A4Ov8Lq…
「大江」というのはすべてが大江健三郎氏のことを意味しています。他紙では朝日新聞が『大江健三郎全小説全解説』を紹介しています。
医師
「誰がために医師はいる」(松本俊彦著@みすず書房)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) July 12, 2021
毎日新聞5/15
著者は患者たちの訴えに秘められた悲哀と苦悩の歴史のなかに、心の傷への寄り添い方を見つけていく。嗜癖障害臨床の最前線で怒り、挑み、闘いつづけてきた精神科医の半生記。https://t.co/QU8EopqK5n
「医師が死を語るとき」(ヘンリー・マーシュ著@みすず書房) 毎日新聞1/16 イギリスを代表する脳神経外科医マーシュが、該博な知識から生命と人生の意味を問い、患者たちの死、そしてやがてくる自らの死に想いをめぐらせる自伝的ノンフィクション。https://t.co/j3fPGcStCD
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) March 3, 2021
「患者の話は医師にどう聞こえるのか」(ダニエル・オーフリ著@みすず書房)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) December 22, 2020
毎日新聞11/21
患者は、自分の症状を伝える努力を、医師は、患者がほんとうに伝えたいことを受けとる努力をしているだろうか?医師と患者のコミュニケーションの問題を徹底分析する。https://t.co/gPM82EOdps
「医師」は書籍のタイトルに多く使わていそうなのですが、意外と書評に取り上げられていません。毎日新聞以外には、日経新聞が『医師が死を語るとき』と『誰がために医師はいる』を紹介しています。つまり、3年間で書評されたのは、上記3冊のみです。
パチンコ
「パチンコ 上下」(ミン・ジン・リー著@文藝春秋)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) October 16, 2020
毎日新聞9/19
日本に併合された朝鮮半島、釜山沖の影島。キム・ソンジャが出会ったのは、日本との貿易を生業とするハンスという男だった。1910年の朝鮮半島で幕を開け、大阪へ、そして横浜へー。https://t.co/1vdLvw3WMx
「パチンコ」は、通常とは違う意味で、毎日新聞「らしい」ワードです。
毎日新聞は原則として、書評子に書籍を自由にピックアップさせていますので、同じ本が複数回紹介されることがあります。重複を避けるための調整をしないのですね。
『パチンコ』は、まず2020年9月19日付け書評欄で池澤夏樹氏が紹介しています。さらに各書評子がその年のベスト3を紹介する「この3冊」(2020年12月19日)で、角田光代氏と中島京子氏が取り上げています。3人がそれぞれ同じ本を紹介したことから、「パチンコ」という単語の頻度が他紙に比べて非常に大きくなったわけです。
他紙では日経新聞が同書を取り上げています。
日没
「日没」(桐野 夏生著@岩波書店)
— 新聞書評報「汗牛充棟」 (@syohyomachine) November 29, 2020
毎日新聞10/31
あなたの書いたものは、良い小説ですか、悪い小説ですか。小説家・マッツ夢井のもとに届いた一通の手紙。それは政府組織からの召喚状だった。出頭先に向かった彼女は、断崖に建つ海辺の療養所へと収容される。https://t.co/T6fDW59yxs
「日没」も「パチンコ」と全く同じ理由で毎日新聞「らしい」単語です。
2020年10月31日付け書評欄「著者に聞く」に著者の桐野氏が登場して、自著について語っています。さらに、年末の「この3冊」では、沼野充義氏(12月12日付け)と角田光代氏(12月19日付け)で紹介しているのです。
他紙では日経新聞が同書を取り上げています。
年末の「この3冊」に複数の書評子が取り上げた本は、重みをもって受け止められると思います。実際、紙面ではその書籍が重複したかを書いています。新聞社によってやり方が違うのはある意味当然で、調整しないことの利点もあると思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?