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AIが選んだ毎日新聞「らしい」本14冊(新聞書評の研究2019-2021)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

過去の連載はこちらをご覧ください。

AIが選んだキーワード

前回は日経新聞が書評した書籍のタイトルを他紙と比較して、キーワードを抽出し、そのキーワードを含む書籍を紹介しました。

キーワードは、「経営」(23冊)、「投資」(6冊)、「構築」(5冊)、「マクロ」(4冊)、「強国」(3冊)、「評価」(3冊)、「値段」(3冊)、「原論」(3冊)でした。手法については以下にまとめてあります。

今回は毎日新聞のキーワードと書評された書籍を紹介します。

毎日新聞のキーワードは、「歌集」(3冊)、「漱石」(3冊)、「大江」(3冊)、「医師」(3冊)、「パチンコ」(1冊)、「日没」(1冊)です。

毎日新聞「らしい」タイトルはこれだ

歌集

「歌集」がキーワードになっているのは、歌人の小島ゆかりさんが書評メンバーであることも関係しているのかもしれません。

「毎日歌壇」(毎日新聞の短歌投稿欄)の選者を20年ほどつとめた歌人の故河野裕子氏は、ある座談会で、「(時事問題をテーマにした題材が多い)朝日歌壇とは違うなということ。毎日歌壇は文芸色が強い。歌としてのレベルの高さを感じましたね」と述べています。

毎日新聞は短歌の文芸性に重きを置いているので、歌集の紹介が多いのかもしれません、

他紙では読売新聞が

を紹介しています。読売新聞も書評子に歌人がいます。なお、『歌集 滑走路』は本稿の分析対象ではない2018年11月3日に朝日新聞も取り上げています。

漱石

なぜ「漱石」をタイトルに含む書籍が毎日新聞に複数回紹介されるのかは不明です。他紙では読売新聞も「漱石」をタイトルに含む書籍を複数紹介しています。読売新聞のキーワードにもなっていますので、読売新聞の分析の中で触れたいと思います。

大江

「大江」というのはすべてが大江健三郎氏のことを意味しています。他紙では朝日新聞が『大江健三郎全小説全解説』を紹介しています。

医師

「医師」は書籍のタイトルに多く使わていそうなのですが、意外と書評に取り上げられていません。毎日新聞以外には、日経新聞が『医師が死を語るとき』と『誰がために医師はいる』を紹介しています。つまり、3年間で書評されたのは、上記3冊のみです。

パチンコ

「パチンコ」は、通常とは違う意味で、毎日新聞「らしい」ワードです。
毎日新聞は原則として、書評子に書籍を自由にピックアップさせていますので、同じ本が複数回紹介されることがあります。重複を避けるための調整をしないのですね。

『パチンコ』は、まず2020年9月19日付け書評欄で池澤夏樹氏が紹介しています。さらに各書評子がその年のベスト3を紹介する「この3冊」(2020年12月19日)で、角田光代氏と中島京子氏が取り上げています。3人がそれぞれ同じ本を紹介したことから、「パチンコ」という単語の頻度が他紙に比べて非常に大きくなったわけです。

他紙では日経新聞が同書を取り上げています。

日没

「日没」も「パチンコ」と全く同じ理由で毎日新聞「らしい」単語です。
2020年10月31日付け書評欄「著者に聞く」に著者の桐野氏が登場して、自著について語っています。さらに、年末の「この3冊」では、沼野充義氏(12月12日付け)と角田光代氏(12月19日付け)で紹介しているのです。

他紙では日経新聞が同書を取り上げています。

年末の「この3冊」に複数の書評子が取り上げた本は、重みをもって受け止められると思います。実際、紙面ではその書籍が重複したかを書いています。新聞社によってやり方が違うのはある意味当然で、調整しないことの利点もあると思います。


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