若早称平

小説を書いています。最近はブログ的なことも始めました。WEBライター一年生です。 かま…

若早称平

小説を書いています。最近はブログ的なことも始めました。WEBライター一年生です。 かまってくれたら嬉しいです。スキやフォローは本当にモチベーションが上がります。 どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

読書感想文「列」

 個人的に三冊目の中村文則作品で、過去二作はあんまりハマらなかったんだけど、今回のはだいぶ面白かったです。  気がつくと長くて動かない列に並んでいる主人公。前後に並ぶ人とトラブルになったり、交流をしたりするが、空に鳥が飛ぶと少し前の記憶を失ってしまう。果たして列の先にはないがあるのか、彼らはなんのために並んでいるのか。  カフカ系(?)不条理もの純文学でラストも全然スッキリしないけど、ミステリ要素もあってだいぶ読みやすかったです。よくわからない行列に並んじゃうのって題材と

    • 読書感想文「6」

       だいぶ気持ち悪ホラーでした。そもそも表紙も気持ち悪いもんなぁ。後半はずっと眉間に皺が寄ってて、嫌すぎる読後感でした。(褒めてます)  タイトル通り六篇からなる短編集。なんの話やねんな不気味な話がだんだんちょっとずつリンクしていって最後にタイトル回収とともに全体像が見えるのですが、それがまた嫌(笑) デパートの屋上で遊んでいたら奇妙な世界に迷い込んだ私 2都市伝説記事のライターが失踪前に書いていた山の中のモニュメント 3謎のラジオ電波が入る山中にその謎を録画しようと車を走

      • 読書感想文「透明になれなかった僕たちのために」

         青春サスペンスの傑作という話でした。  双子として生まれたアリオとユリオ。全く同じ顔、同じ行動の二人だったが、中学生の時にユリオが自殺してしまう。それからアリオは人を殺したいという衝動を抱えながら虚しい日常生活を送る。大学生になったアリオが新歓荒らしをしていると、同じように荒らしを繰り返す美少女、蒼と出会う。彼女に紹介された自分と瓜二つの顔を持つ市堰との出会いによって、ユリオの死の真相と自らのルーツが明らかになっていく。  面白かったです。電撃大賞受賞作家の方だそうで、

        • 読書感想文「K+ICO」

           意外と初上田岳弘作品でした。純文の中ではとても読みやすかったです。ウーバーイーツ文学でした。 あらすじ  自分磨きのためにウーバーイーツ配達員をしつつ英語、法律を勉強する若者Kと、TikTokerとして活動しつつ大学卒業を機に普通の生活に戻ろうとするICOのそれぞれの日常がたまに交差するストーリー。  面白かったです。分量だと中編くらいの薄さなんですけど、もっと読みたいなって思いました。純文によくある、特に何も起きないけど、つらつらとお気持ちを表明し続けるのと違い、「

        読書感想文「列」

          読書感想文「三体Ⅲ死神永生(下)」

           完結しました! 一冊挟んだけど二ヶ月かかりました。でも読んでよかった。思考が広がった気がするし、翌朝散歩した時に世界が少し美しく感じました。  暗黒森林攻撃に備える地球人に三編の物語を通してそのヒントを与える雲天明。それを智子遮蔽部屋で解析した結果、 1木星などの影に隠れて太陽の爆発を回避する掩体計画 2光速宇宙船で別の恒星に移住する計画 3光速の速度を低下させることで太陽系の安全性をアピールする計画 の三つが検討され、結果人類は掩体計画を選択し、大型惑星の影にコロニーを

          読書感想文「三体Ⅲ死神永生(下)」

          読書感想文「三体Ⅲ 死神永生(上)」

           いよいよ最終章です!  ルオジーによる暗黒森林抑止によって一旦は危機が去ったと思われた地球だったが、三体人は平和の陰で密かに反撃の時を待っていた。それを食い止める鍵を握るのが階梯計画を立案した若きエンジニア、程心。そして彼女に思いを寄せる末期癌患者の雲天明。ルオジーは全宇宙に居場所を発信する「重力送信システム」のボタンを握る執剣者となっていた。    巻が進むにつれてスケールアップしてきました。流石に宇宙規模の用語とかスケール感とか理解できてきました。光速が秒速何キロだと

          読書感想文「三体Ⅲ 死神永生(上)」

          読書感想文「ヨモツイクサ」

           ホラーミステリーでした。怖いというより、気持ち悪いというか、おぞましかったです。別バージョンの表紙でやたらキラキラしたホログラムみたいなパターンのを書店で見かけたのですが、読んでから思い返したらなんて悪趣味な表紙を作るんだろうと(褒め言葉です) あらすじ  7年前に家族が神隠しに遭い事件の真相を探し続ける女医の佐原茜が主人公。怪物が棲むと伝えられ、地元の人間は決して近寄らない『黄泉の森』のリゾート開発作業員が惨殺された事件をきっかけに茜は黄泉の森に足を踏み入れていく。

          読書感想文「ヨモツイクサ」

          読書感想文「三体Ⅱ暗黒森林(下)」

           前作から約200年後に目覚めたルオジー&シーチアンとそのテクノロジーの進化、人類の変わった所と変わらない所に触れるパートと宇宙軍の戦いを描いた下巻。 あらすじ  200年の冬眠から目覚めると、想像していた以上に進化したテクノロジーにより、三体世界の侵略はもはや脅威ではなく、地球には楽勝ムードが漂っていた。しかし、ラオジーは謎の勢力から命を狙われ続ける。一方、宇宙戦艦「自然選択」の艦長代行になった章北海は三体世界からの先行勢力「水滴」との邂逅の前に独断で戦線離脱を図る。

          読書感想文「三体Ⅱ暗黒森林(下)」

          読書感想文「三体Ⅱ 暗黒森林(上)

           三体の二巻目。まさかの一巻の登場人物はほぼほぼ出てこないし、ストーリーの舞台も中国を飛び出してほぼ地球全体にスケールアップしました。骨太SFらしく物理用語が連発で、どこまでが実際ある技術でどこからがフィクションなのかわかんなくなりましたが、多分そんなこと考えなくてもいいんだろうなと思います。 あらすじ  三体世界からの侵攻と智子による監視が始まった地球は対策として国連直下の組織地球防衛軍を設立し、未来の宇宙軍のベース作りを始めるとともに、防衛戦略のため面壁計画を実施する

          読書感想文「三体Ⅱ 暗黒森林(上)

          読書感想文「三体」

           最初がどうしようもなく面白くなくて、途中で読むのをやめようかと思ったくらいだったけど、結果めちゃくちゃ面白かったです。  中国で大ヒット、アジア初のヒューゴー賞受賞、最近ネットフリックスでドラマが始まると話題だらけだけど、読んだよっていう人にあったことない小説No. 1の作品。  全三部の一作目。突然視界にカウントダウンが見えるようになったナノマテリアル研究者のワンミャオがその原因を探るうちに謎のVRゲーム『三体』に辿り着く現代の話と、文化革命で父を殺されたウェンジエが謎

          読書感想文「三体」

          読書感想文「スワン」

           去年話題になった「爆弾」でお馴染みの呉勝浩さんの作品。重かったです。だいぶ考えさせられる内容のミステリでした。 あらすじ  ある日巨大ショッピングモール「スワン」で二人の犯人による無差別殺人事件が起きた。自作の銃と日本刀が使われて21人の死者を出した。自害した犯人たちに代わって責められたのは、対応の遅れた警察、客よりも先に逃げた警備員、そして犯人に脅されて殺す順番を決めたという女子高生いずみだった。  事件から半年が過ぎた頃、被害者の一人で大企業の社長の母である菊代の代

          読書感想文「スワン」

          読書感想文「君が手にするはずだった黄金について」

           著者の直木賞受賞後一作目。自身をモデルにした小説家を主人公にした連作短編集。  面白かったです。さすが本屋大賞候補は伊達じゃないと思いました。 1プロローグ  就職活動するにあたって記入しようとしたエントリーシートで「あなたの人生を円グラフで表現してください」という問いでつまずいた主人公。  哲学専攻の主人公が面倒臭すぎてあーあーまたこのタイプか。と思ってしまいました。 2三月十日  同窓会で話題になった「震災の日何してたか」というよくある話の後でふとその前日は何をして

          読書感想文「君が手にするはずだった黄金について」

          読書感想文「肉を脱ぐ」

           会社の人事部で働く佐藤慶子は柳佳夜というペンネームで小説を書いている。とはいえ一度文芸誌に載っただけなのだが。  自身の身体に嫌悪感を抱き、性欲、食欲などの生命活動にも冷ややかな彼女は自分の存在価値をネット上に探すようにエゴサを繰り返すが、芥川賞候補になる友人とは違って誰も自分のことを話題にすることはない。  ある日いつも通りエゴサをすると、同姓同名のVチューバーが見つかる。登録者も少なく、白々しい設定だったので無視していたのだが、二作目の小説が掲載される頃にはまもなく登録

          読書感想文「肉を脱ぐ」

          読書感想文「対怪異アンドロイド開発研究室」

          タイトルと設定だけで絶対面白いじゃん!ってなりました。 心霊スポットや怪談の舞台となった場所に超高性能アンドロイドを調査に向かわせる大学の研究室。人間が近づけない極地の活動にロボットを使うように恐怖心を持たず、様々なモニターと「怪異検出AI」を搭載したアンドロイド、「アリス」と研究室メンバーの活躍を描く連作短編集。 怖いといえば怖かったけど、それよりは怪談や怪異を新しい切り口で攻めたのが面白かったという印象でした。寝る前にベッドライトで読んでたらしっかり怖かったけど。回収さ

          読書感想文「対怪異アンドロイド開発研究室」

          読書感想文「両手にトカレフ」

           タイトルとカバーとあらすじを見て、ヤンキー少女の痛快ストーリーかと思ってたんですけど、全然違いました。そもそも日本が舞台じゃなかった。  イギリスの底辺層が暮らす団地の中学生ミアはドラッグとアルコール依存症の母と、不安定でパニックを起こしがちの弟チャーリーと三人家族。ある日、居場所を求めて入った図書館で一冊の本と出会う。大正時代の日本のアナキスト金子文子の自伝だった。自分と同じような、過酷な境遇のフミコに共感し、その本を読むことだけが楽しみになる。と同時に文章を書くという

          読書感想文「両手にトカレフ」

          読書感想文「あわのまにまに」

           一つの家族を2029年から10年ごとに遡ってそのルーツが次第に明らかになっていく人間ドラマみたいな話を聞いて読んでみたんだけど、読んでみたら全然嫌ミス要素満載じゃないですか。  とはいえ、家族といえども秘密はあったり、父母や祖父母にも若かりし日もあるという当たり前のことに気付かされるような作品でした。 とりあえずこの作品の相関図が見たいですね。 2029年 夏休み、小学生の木綿は母のいのり誘われて亡くなった祖母の家の片付けをする。変わった外観の家で、中はゴミ屋敷となってい

          読書感想文「あわのまにまに」