若早称平

小説を書いています。最近はブログ的なことも始めました。WEBライター一年生です。 かま…

若早称平

小説を書いています。最近はブログ的なことも始めました。WEBライター一年生です。 かまってくれたら嬉しいです。スキやフォローは本当にモチベーションが上がります。 どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

読書感想文「あなたに聞いて貰いたい七つの殺人」

 新人発掘プロジェクトで本作がデビュー作だそうです。 あらすじ  殺人の様子を実況中継するネットラジオ『ラジオマーダー』を放送する謎の殺人鬼ヴェノム。探偵業を営む主人公鶴舞はオッドアイで全身黒づくめの美女でフリーライターのライラからヴェノムを捕まえるという依頼を受ける。ラジオの音源という限られた情報から殺害場所、殺人の法則を見出していく二人と、自作自演説を元に犯人を追う刑事たちを軸にしたミステリ。 感想  面白かったです。わかりやすい伏線が大量で、後々の展開を色々勘ぐ

    • 読書感想文「龍の墓」

      概要 VRゲーム✖️警察小説。特殊設定なのにしっかり本格ミステリ。 あらすじ とある事情により警察を退官し、VRゲームにのめり込んで引きこもりのような生活を送る瀧川と、その元同期の真萩の二人の視点で語られる連続殺人事件。『ドラゴンズ・グレイブ』というVRゲーム内イベントの殺人事件の見立てであることが判明し、捜査にあたる真萩はそのイベントをシンク中である瀧川に意見を求める。 感想 面白かったです。ゲームと実際の事件がリンクするタイプのミステリは結構よくあるものですが、さすが

      • 読書感想文「踏切の幽霊」

         ゴリゴリのミステリ作家の描くホラー小説。と思いきやゴリゴリのミステリでした。  妻を亡くした喪失感から新聞記者を辞めて雑誌のライターに転職した松田。女性誌の心霊特集で下北沢の踏切で撮影された心霊写真に出会う。記者時代の事件を深掘りする癖が抜けない松田が幽霊の正体を探る中で思いがけない事実にぶつかっていく。  面白かったし、怖かったです。しっかりと幽霊と祟りと事件と謎が描かれていて、ホラー好きもミステリ好きもどちらも満足できる作品だと思いました。  ただやっぱり超常現象を

        • 【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々9

          エピローグ  勢いよく二人が湖面から顔を出すと館はほとんど燃え尽き、ところどころ煙が燻っていた。ジェレミーはフラフラとした足取りで湖から出ると草の上に倒れこんだ。 「いくら水温が高いからってこんなに長時間潜ってるのはきついよ」  ガリューも背中の酸素ボンベを投げ捨て、ジェレミーの隣に座り込む。 「でもうまくいっただろ? これで男爵は俺たちが死んだと思い込んでるはずだ」  ガリューが涙ながらに「この世界でたった一人の友達」と語ったおかげで彼の持っていた別世界の道具の存

        読書感想文「あなたに聞いて貰いたい七つの殺人」

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々8

           マレクが屋敷に帰って二日が経った。ガリューが窓の外に揺れる草木をぼんやりと眺めていると、トレイに朝食を乗せたジェレミーがやってきた。パンケーキの上のバターが溶け出し、その香りに刺激されてか、ガリューの腹が鳴った。 「今日も暑くなりそうだな」  本格的な夏はまだ少し先だというのに、このところやたら暑い日が続いていた。湖畔でこの暑さでは町の方は耐えきれない程だろうとジェレミーは想像していた。 「午後までにデッサンを終わらせて僕は昼寝をするよ」  ナイフで一口大に切ったパ

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々8

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々7

           カタリンは三日に一度のペースで早朝の館に顔を出した。本当は毎日でも訪れたいのだろうがそれではマレクの修行と自立の邪魔になると考えているらしい。 彼は来るたびに口癖のように言う言葉があった。 「良い報告はゆっくりでもいいが、悪い報告はできるだけ早くするように」  おそらくそれは彼が男爵に仕える上で信条にしていることなのだろう。ジェレミーはまだマレクになにがあったのかを本人から聞き出せずにいた。それをカタリンに報告するべきか否か、いつも通りの他愛のない雑談をしつつ悩んでいた

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々7

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々6

           マレクがやって来る日の朝、二人は夜明け前から起き出して出迎える準備を始めていた。玄関に板を張り合わせたアーチを作り、それに絵を描いていく。『ようこそマレク!』と大きく描いた周りにはガリューが猫の絵を描いた。 「どうして猫なんだ?」 「だって子供は猫が好きだろう?」  その偏見には納得できなかったが、描き直す時間もアイディアもなかったので聞き流すことにした。  エグバード男爵の屋敷から帰った二人は三日三晩掃除と片付けに忙殺された。最初は引き続き文句を垂らしていたジェレ

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々6

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々5

           立派な石造りの門を通ってから広い庭を抜け、ようやく辿り着いた屋敷に入ると、待っていたのはやはりどこまでも続くかのように長い廊下だった。家をここまで大きくする意味はあるのだろうかとジェレミーは疑問に思ったが、貴族には貴族の考えや文化があるのだろうとカツカツと靴音がよく響く大理石を歩きながら勝手に納得していた。  それよりも、二人を先導する使用人の目を盗み、ガリューに耳打ちをする。 「なあ、本当にこれがお前の持ってる最高の服なのか?」  ガリューは使用人とジェレミーの格好

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々5

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々4

           本格的な冬が訪れると湖は凍り、館の周りも白一色に染まる。寒さで絵筆を持つ手が震え、自然と館から出ない日々が続く。雪解けの春はまだ先だ。  夕食は干し肉の入ったスープと蒸した芋だった。最近はこれが多い。夕食は交代で作る取り決めになっていて、今晩の担当はガリューだった。他の飲食については各々で用意することのなっていたが、大抵の場合ガリューが自分が食べるついでにと二人分用意してくれている。寒さに堪え切れなくなってからは唯一暖炉のある部屋にテーブルを運び込み、食事はもちろん寝る以

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々4

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々3

           数日後、ジェレミーが這うようにベッドから出た。まだ眠い目を擦りながらリビングへ行くとガリューはすでに朝食を終えて食器を片付けているところだった。いつもは日が高くなるまで寝ていることもある彼が自分よりも早く起きているのは初めてのことだった。 「珍しいな」 「今日は町に出ようかと思ってね」  ガリューからコップを受け取ると、注がれた水を一気に飲み干した。 「買い出しか?」 「そうだよ。なにか必要なものがあればついでに買ってくるけど」  ジェレミーは空のコップを手にし

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々3

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々2

           それはまるで恋に落ちるのにも似た感情だった。駆け出しの画家であるジェレミーは偶然立ち寄った画廊で一枚の絵に出会った。もう半日もその前から動けずにいる。彼がみすぼらしい服装をしていることもあって、周囲から奇異な目で見られていたがそんなことが気にならない程にその絵に没頭していた。 『湖畔』というシンプルなタイトルの下には『ヨエル=ガリュー』という聞いたことのない作者名が記されていた。日が沈むまで絵を見た後、ジェレミーはその名を忘れないように頭の中で反芻しながら帰路についた。

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々2

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々1

          【あらすじ】  駆け出しの画家、ジェレミーはある日一枚の絵に出会う。その絵に使われている青色の顔料を求めて、作者であるヨエル=ガリューなる人物の元を訪ねる。 色の秘密を探るため、館で共同生活を始めた二人。それぞれの理由で人との交流を絶ってきた二人に遊女が芽生え始めるが、ある日ガリューの秘密が明らかになる。  それから数ヶ月後、貴族の屋敷に招かれた二人は男爵の息子マレクを弟子にするよう依頼される。三人の共同生活の中、ガリューの青色に肉薄していくことでやがて悲劇が訪れる。 【

          【創作大賞2024】遅れてきた青春の日々1

          読書感想文「彼女はそこにいる」

           どんでん返しに定評がある織守きょうやさんのホラー。以前読んだ「花束は毒」はまんまと騙された人怖系ミステリだったので楽しみにしてました。  郊外の賃貸一軒家に引っ越してきた母娘。引っ越し初日から様々な違和感に襲われる。前の住人もみんな短期間で出て行ってしまうというが事故物件である事実はないという。一体この家で何が怒っているのか。  面白かったです。一軒の家を舞台にしているのに、三編の連作のそれぞれで違ったパターンの怖さがあって流石の手腕だなと思いました。  ちょっとネタ

          読書感想文「彼女はそこにいる」

          読書感想文「ジョニ黒」

           1970年代の横浜を舞台に小学生アキラのひと夏を描いた青春小説。文体が独特だったけど慣れるとすんなり読めました。国語の教科書に載ってた小説の雰囲気があって、学生の読書感想文に良さそうだなと思いました。    実の父親が行方不明で、母親のマチ子、ヒモの日出男と三人で暮らす小学四年生のアキラ。同じく父親がおらず、母親も離れて暮らす町会長の孫モリシゲ。二人は平凡な夏休みを送るはずだったが、日出男に連れられ、小さな冒険が起こったり、出会いと別れがあったり、9歳から10歳へほんの少

          読書感想文「ジョニ黒」

          読書感想文「列」

           個人的に三冊目の中村文則作品で、過去二作はあんまりハマらなかったんだけど、今回のはだいぶ面白かったです。  気がつくと長くて動かない列に並んでいる主人公。前後に並ぶ人とトラブルになったり、交流をしたりするが、空に鳥が飛ぶと少し前の記憶を失ってしまう。果たして列の先にはないがあるのか、彼らはなんのために並んでいるのか。  カフカ系(?)不条理もの純文学でラストも全然スッキリしないけど、ミステリ要素もあってだいぶ読みやすかったです。よくわからない行列に並んじゃうのって題材と

          読書感想文「列」

          読書感想文「6」

           だいぶ気持ち悪ホラーでした。そもそも表紙も気持ち悪いもんなぁ。後半はずっと眉間に皺が寄ってて、嫌すぎる読後感でした。(褒めてます)  タイトル通り六篇からなる短編集。なんの話やねんな不気味な話がだんだんちょっとずつリンクしていって最後にタイトル回収とともに全体像が見えるのですが、それがまた嫌(笑) デパートの屋上で遊んでいたら奇妙な世界に迷い込んだ私 2都市伝説記事のライターが失踪前に書いていた山の中のモニュメント 3謎のラジオ電波が入る山中にその謎を録画しようと車を走

          読書感想文「6」