「老害」

 「ライブハウス」や「クラブ」は廃れたなと思います。ここでも高齢化が進んでいます。なぜ若い人たちが来ないのか。理由を考えてみました。

 口うるさい年長者と一緒に時間過ごしたくないというのも一因ではないでしょうか。

 これは近年、話題に上がりやすい「老害」問題が「ライブハウス」や「クラブ」にも下りてきているのだと思います。

 実際に年齢を重ねた迷惑な老人でなくても、自分より年上で面倒臭い人間はすべて「老害」と同じことでしょう。クラブやライブハウスには常連と称する昔から出入りしている人間がたくさんいます。その中に「老害」が結構な割合でいることは否定できません。

 僕自身も大そうな年齢になっていますし、全ての人がそうではないと断ってはおきます。でも、そいうい場で会った途端に年齢を聞く人間が多いことがそれを物語っています。僕は年齢を聞いてくる人間はすぐに警戒します。

 年齢を聞くということはどういうことか。それは年齢というものは上であれば一瞬で相手にマウントを取れる要素だからです。そう思って聞く人間がかなりいます。

 僕はライブハウスやクラブで絶対に自分からは年齢を言いませんし、聞きません。誕生日も教えません。年齢不詳に見られるようにしています。だから明らかに年下とわかっても話の最初は敬語で話します。

 ある時、僕はロックバーでDJをやっていました。そこに見慣れない客がきました。どう見ても僕らのかけるような音楽と無縁の男女4人を連れていました。その男は僕らのかけているものが全くわかっておらず、イベントのコンセプトも理解できないようでした。

 DJブースに来ると、酔いに任せて絡んできたのです。話を聞いていると自分の知らないものばかりがかかっているのが気に入らなかったようです。連れの人間は我関せずで飲み続けています。

 その場はなだめながらやっていましたが、「俺にもちょっとやらせてくれる?」と言い出しました。僕は痛んでも良いような適当な盤を乗せて「どうぞ」と言いました。できもしないのにスクラッチの真似事を始めました。

 彼の連れはゲラゲラ笑うばかりで止めようともしませんでした。仲間は僕がいつキレるか身構えていたそうです。「あーあー針が痛むなあ...」なんてことを考えながら気がすむまでやらせました。

 僕はそれが終わると自分のレコードを片付けて一旦は店の外に出ました。すると仲間が出てきて、キレても良かったし、ちゃんと言った方が良かったんじゃないかと言いました。

 でも僕は「店に迷惑かけたくなかったから好きにさせたんだよ」と言いました。そんな人間でも店からすれば金を落とす客だと思います。

 まだ中で彼が飲んでいるので、「まあ見てなよ」「あれは俺より年下だぜ、たぶん」と言って店内に戻りました。彼が連れと飲んでいるテーブルのところに行き、「ありがとうございました」と言いました。彼は連れに音楽知識を披露でもしたかったのでしょう。だからイメージと違う知らない曲しかかかっていないことに不満だったようでした。

 散々、言われたい放題に言われましたが、僕は終始ニヤニヤしていました。「失礼ですけどおいくつですか?」彼は自身たっぷりに年齢を答えました。僕より2つ歳下でした。僕は若く見えるのでしょう。下に見ていたようです。

 すぐに態度が変わりました。「先輩なんですね」と敬語に変わっていきます。まあその姿の醜いこと。僕はニヤニヤしながら「こういうところでは年齢関係ないからね」と余裕たっぷりで返しました。連れも一緒になって謝ってきました。

 その後、すぐに店から逃げるように出ていきました。店の外で見送りましたが、僕にやり込められたのが不満なのか連れに当たり散らしていました。

 見事な返し技でことを荒立てることなく撃退できて満足しました。自分の年下にもこういう輩がいるんですよね。こんなのが僕より下の年齢でいるようじゃ世の中、お先真っ暗です。

 僕がよく行くロックバーでの出来事だったのですが、そこにはジャズにうるさいジジイもよく来て若い子にマウントを取っているそうです。そのジジイと若い子で口論にもなったと聞きました。そりゃ若い子は居心地悪いですよね。僕もこの手のジジイは大嫌いです。若い頃には喧嘩を売ったこともあります。

 日本がいかに年功序列や先輩後輩という学校教育の中で培われていく悪しき慣習に囚われ続けている結果であると思います。「老害」と括ってしまうのも、年齢を考えるからでしょう。でも30代でも20代でも「老害」いますよね。

 みんな年齢に囚われることをやめてみたらいかがでしょうか。

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