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#ファンタジー

白梅

白梅

「しらうめ?何それ」

「しらうめさ、ま、じゃ。白梅様。この町を守る御神木じゃ」

煙を吐きながらじいちゃんは言った。

「昔はわしも白梅様と話せたんじゃがのう…」

「今はしらうめとお話できないの?」

「まだ若かった隣のじいさんと、近所の悪ガキを川に流そうとしてサツに世話んなったり、そこらのばあさん騙して金せびろうとしたりしてたら、いつの間にか声すら聞こえんようになっとったな」

かっかっ、と

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蝕

今日も水晶玉を見つめる。

水晶玉に映るのは、私より537歳若い人間の男。
…と、いつもそばにいる人間の女。

楽しく笑う2人。

水晶玉の向こうの彼を見るたび、あの日を思い出す。

森で帽子を無くした私。

隠さなければ、隠さなければ、と必死になって帽子を探していた。

「これ、君の帽子?」

そう声をかけられて見上げると、帽子を持っていたのは人間の若い男。

「あり…がとう」

久々に私の口か

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森のケーキ屋さん【ヘーゼル】

森のケーキ屋さん【ヘーゼル】

オレンジ色の光が窓から差し込み、テーブルが影を作った。空になったグラスとお皿を引き上げ、こぼれていたカスを拭き取る。ティータイムが過ぎると、店内はがら空きになった。

ようやく一息つける。と、ミルクティーを入れていると、ドアのベルが鳴った。

「いらっしゃいませー。あ、ヘーゼル」

「こんにちは〜、あ、もうこんばんは かな?」

きょろきょろしながら入ってきたのは、リスのヘーゼルだった。誰もいな

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