見出し画像

切り絵アニメって?

こんばんは。前回に続き、岡林です。

「シナぷしゅ」は、個性と才能豊かな数々のクリエイターの皆さんと一緒に
各コーナーを丁寧に制作しています。
番組の中にどんなのタネを蒔いたら、
見てくれた赤ちゃんたちの毎日が明るくなるかなあ
どう表現したら、夢中になって楽しく見てもらえるかなあ
なんてことを、皆で日々あーでもないこーでもない、と真剣に議論しながら
心を込めて番組を制作しています。

さて、今回は、「シナぷしゅ」で
「ヒカリの森の黒うさぎ」と「ビリビリ」コーナーを
一緒に作ってくださっている切り絵アニメ作家・名取祐一郎さん

ご紹介します。(名取さんHP:https://natorie.com/)

名取さんは、自然豊かな子育て環境を求めて7年前に石川県に移住
作曲家の奥様と子供3人、犬、カメ(←ほかにも?)と暮らしています。
石川県の自然・歴史・文化豊かな情景や季節感を体に感じながら、
それを存分に創作活動に活かしていく生活

素敵だなあ、羨ましいなあ!と思います。
昨今のコロナ拡大を受けて在宅ワークが全国的に広がっていますが、
名取さん、ずいぶん前から石川県に住みながら、
東京の会社のお仕事を引き受けてきたのですね。

画像1


名取さんの「切り絵」との出会いは、ひょんなキッカケだったそうです。

"芸術大学で油画を学んでいた時に、東京・阿佐ヶ谷のミニシアターで
ロシアの切り絵アニメ作品をみて「絵画が動く」ということに衝撃を受け、雷が落ちました。
たまたま同じ日、その作品の作家が来日していて、
講演と作り方指導のワークショップが開かれていて。こりゃ運命だ!と。 どうにかその作家に近づきたいと考え、
受講者でもないのにワークショップの打ち上げに参加し、
「日本文化を一緒に体験しよう」ということで、花火とスイカ割りをし、
その足でともに銭湯にいきました。まさに巨匠と「裸の付き合い」(笑)! 

その日からアニメ作家としての時計の針が動き出して
今に至ります。”(名取談)

そんな名取さんに、このクリエイティビティ―に満ちた
「切り絵アニメ」の世界について教えていただきました!

切り絵アニメとは⁉

絵画×アニメ=切り絵アニメ 

学校の教科書やノートの端っこに絵を描いてパラパラめくって
動かしたことがある方もいると思います。
ドラえもんやアンパンマンのような一般的なテレビアニメは
1枚1枚絵を描いて動かします。
毎週30分のアニメを作るには、約3000枚の絵を大人数のスタッフが流れ作業で作る必要があります。
他の人が塗っても同じ色が使えるように、できる限りシンプルに効率よく 作り、絵具のムラなどは厳禁です。

一方、切り絵アニメはその方法と違い、
正月遊びの福笑いのように、目鼻口、手足をパーツに切り分けて
少しずつ動かすアニメ
です。
なぜその方法を取るかというと、絵具のムラ、クレヨンのざらつきなど、
画材独特の豊かな質感が表現
できるからです。
    


切り絵アニメの制作工程

画像2

まず、お話のアイディアを考えます。
机に向かって、散歩をしながら、お風呂など、考える場所はいろいろ。
アイディアをメモ書き(自分だけがわかる形でいいのでなぐり書き)。   次に番組プロデューサーやアニメスタッフに伝える絵コンテを作ります。
絵コンテとは、お話の筋、キャラクターの動きやカメラの動き、音楽の指示などを書いたアニメの 設計図
後でもっとこうした方が面白いかもしれないと思えば 、
絵コンテから変わることもよくあります。
絵を描き、キャラクターのパーツに分けて(切り絵アニメ独特な制作手法)
パソコンで扱える素材にしてアニメスタッフに渡しします。
絵コンテをもとに全国各地の精鋭アニメスタッフとテレビ電話で     打ち合わせ。パソコンで動きをつけてもらいます。
次は音楽です。
「ヒカリの森の黒うさぎ」は、セリフを一切なくし、代わりに音楽で感情、言葉を表現しています。
そのため、1話1話、キャラクターの動きに合わせて音楽をつけています。
通常のアニメは先に音楽を作り、それを作品の中で背景音楽として何回も使いますが、この作品は、作曲家の妻に音楽をお願いしているので、
スケジュールギリギリの段階で 1話1話、絵の動きにぴったり合わせた音楽をつけることが実現しています。

そして、音楽作りと並行して名取が動きの修正を行い、
背景を描いてキャラクターと合わせます。
最後に、空気感を描く感覚で光、色をきれいに整えて仕上げます。
それでようやく完成!

名取さんの作風と名取さんの人柄を初めて知った時に、
私自身大きな衝撃と運命を感じました。
興奮して眠れず、その日のうちに連絡をしました。
名取さんの切り絵と音楽の豊かで優しい世界を通して、
日本の赤ちゃんたちに情感たっぷりのお話をお届けしたい、と。


一枚一枚手で描き、パーツに切り分け、切り絵でアニメを作る
名取さんの制作工程は、とても手が込んでいて大変な作業ですが、
伝えたい思いを共にしながら、
これからも一緒に物語をお届けしたいと思います。

*   *   *

最後に名取さんからシナぷしゅnoteを読んでくださった皆様への
メッセージをご紹介します。

「ひかりの森の黒うさぎ」は 、美しい絵画、やさしいタッチの絵本が動き出すようなアニメをテーマに制作しています。
東京出身の自分にとって子供の頃から妙に田舎(自然)に対して憧れがありました。

憧れはどんどんエスカレートし、ママチャリで東京から九州まで行ってみたり、日本を飛び出して1年間インド を放浪し、ネパールのヒマラヤの奥地の村でしばらく生活し、電気はなく、牛で畑を耕し、川で体 を洗い、結構いくところまでいきました。

ヒマラヤの5000mまで登ると、森が生い茂っていた世界から、
生き物が全くいない世界に変化していきます。
ヒマラヤは、登るたびに数日で夏→春→冬と虫や草花がどんどん変わっていきます。圧倒的な雪山の前に感じた自分の小ささ、頭ではなく皮膚が身体が勝手に感じる恐怖、自然への畏敬の念。下山して最初に見つけた高山の小さなチョウや草花の命の力強さ。

その後子供が生まれ、石川に移住しました。そこで感じた季節の移ろい、冬を越えてやっと訪れる春の輝き。子育ての大変さやよろこび…
今まで体験してきたことをやっとストレートに出せる場がやってきました。
帰国してから、15年かかりました。 
この黒うさぎのアニメはそんな自分の全身全霊を込めて作っています。
制作できることがとても幸せです。
プラスチックのような映像よりも、木の温もりのような映像を届けたい。
自然を大切にとか、知育とか、細かいことはおいていて、
お子さんはもちろん子育てに関わっている大人も見ていただいて
少しでも心が温かくなってくれたらうれしいです。

                  

「シナぷしゅ」は、放送の他に下記にて配信中!
★YouTube公式 ★TVer ★paravi
YouTube公式「シナぷしゅ」『ヒカリの森の黒うさぎまとめ』https://www.youtube.com/watch?v=UmSqgCuFx30








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?