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地球温暖化と生活の中の環境保全

※この記事は過去にシン・エナジーの公式ブログ「ミラトモ!」に公開された2019年11月の記事の再掲です。内容はすべて当時のものです

1974年7月6日から8日にかけて九州から関東までの広い範囲を台風8号が襲った。通称「七夕台風」と呼ばれる大型台風で、各地に洪水と地滑りをもたらした。
静岡県清水市(現・静岡市)にある私の実家も洪水に見舞われ大人の膝くらいまで浸水、倉庫に保管していた家業の和菓子に使う小豆が入った30kgの麻袋が何袋も水に浸かってしまった。
私は当時東京の大学に通い、七夕台風の時は複数の入社試験を受けていて、台風被害を実家が受けていることに気が回っていなかった。後から被害の大きさを聞いて洪水には縁がないと思っていたことの思い込みの怖さを肌で感じた。

画像1台風19号 上田市千曲川鉄橋崩落

今年(編註・2019年)は大型台風の当たり年なのか。瓦ごと民家の屋根を軒並み吹き飛ばし、千葉県だけでも十数万軒の停電を起こした台風15号。そして中部から東北にかけての71河川の堤防を130カ所以上も破壊した台風19号。堤防が決壊した千曲川周辺の住宅地は民家の2階にまで達しようとする洪水で、波立つ様相は湖というより海のようだった。
気象庁気象研究所の「台風と海水温の関係」を読むと、台風は亜熱帯海域の暖かい海上(海面水温が26.5度以上)で発生し、高い海面水温は、熱帯で形成される弱い渦を最大風速17m/s以上の台風へと強化する――と説明している。海面水温が高いほど水蒸気を生み、渦が強くなるほど水蒸気を巻き上げる力と運ぶ力を強める。
同庁の「海面水温の長期変化傾向(全球平均)」「世界の年平均気温偏差」という二つのレポートでは1981年から2018年の間に年平均海面水温の上昇は100年当たりで0.54度となり、世界の平均気温は同じ期間に100年当たり0.73度の割合で上昇している、という。台風の発生確率や大型化する条件はそろってしまった。

今年(編註・2019年)9月23日に開かれた国連の地球温暖化サミットで、16歳のスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんは「今後10年間で(温室効果ガスの)排出量を半分にしようという、一般的な考え方があります。しかし、それによって世界の気温上昇を1.5度以内に抑えられる可能性は50%しかありません」と、遅々として進まない温暖化対策と、それを担うべき世界の指導者、企業経営者、私たち大人世代を厳しい言葉で非難した。

温室効果ガスを大量に発生させる化石燃料を使うのを大きく減らすには、太陽光、風力、水力、バイオマスといった再生可能エネルギーに転換していくことが効果を発揮する。特にバイオマス発電は下級材として山に放置されていた間伐材などを燃料として林業者から買って発電するから、地域経済も潤う。
再生可能エネルギーによる電気は、価格設定の仕方もあるが、環境問題に関心を持ち、既存の大手電力会社の電気から切り替えようとする意識の高い利用者がいてこそ普及に弾みがつく。

今年の夏休みに台湾を旅行した。土産物店の一角にある喫茶コーナーで「タピオカ・ミルクティー」を頼んだら、直径1cmほどの紙製のストローを渡してくれた。台湾でも環境意識が高まっていることを肌で感じた。

画像2台湾にて タピオカミルクティーの紙のストロー

地産地消で移動による二酸化炭素排出を抑える、食べ物を捨てない、ごみを分別し資源として使う、リサイクルやリユースに取り組む――など生活の中でできる環境保全活動はたくさんある。社会や企業に対応を求めるだけでなく、私たちの生活から変えていかないと気象災害に象徴される環境問題は解決しない。

(2019/11/15 シン・エナジー広報/元日本経済新聞記者 府川浩・記)