ドラマチック餅騒動
note98にちめ。また【日曜知財劇場】を。
今週は餅のおはなしを2つもしたので、有名な「切り餅事件」について。細部不確かゆえ調べつ勉強しつで書かん。(誤りあればご指摘ください)
切り餅事件とは、越後製菓が佐藤食品工業(サトウの切り餅やごはんで有名な餅業界最大手。以下「サトウ」)に対し特許侵害を訴えた事件である。
(サトウの餅、線を描きすぎまして。ただしくは右下の小図)
これに対してサトウは、
①サトウの製品が越後製菓の特許の権利範囲に含まれないこと
②越後製菓の特許が無効であること
を主張した。
まず①権利範囲、
越後製菓の特許(第4111382号)の権利範囲は、以下のようなものである。(読み飛ばして支障ありません)
焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする餅。
長い。
要するに
切餅の「載置底面又は平坦上面ではなく」上側表面部の立直側面である側周表面に切り込み等があって、切餅を焼いて膨張したとき、切り込み部分が開いて中身が逃げるため、きれいに焼けますよ、という発明である。
この「載置底面又は平坦上面ではなく」の解釈が争われた。国語の世界である。
サトウの製品は、側面に加えて、上面にも切り込みがある切り餅であったのでね。
越後製菓は〈かっこ部分は「側周表面」を修飾するものである〉、つまり〈権利範囲から底面や上面に切り込みがあるものを除外する記載ではない〉と主張した。
たほう、
サトウは〈底面や上面に切り込みがあってはならない〉と捉え、〈側面に切り込みがあっても、底面や上面に切り込みがあるものは権利範囲から除外される〉と主張した。
知財高裁は越後製菓の主張を認め、また②についても無効理由なしの判断をして、越後製菓が全面勝利。サトウは製造販売等を禁止され、賠償金の支払いを命じられた。
ニモカカワラズ、
サトウはその後も製品の販売を続け、越後製菓から再度訴えられ、汚名返上とばかりに臨むもまた敗れ、賠償額が2倍に膨れ上がった。
事情は知れぬが、ことの流れだけ見ると悪あがき、甲斐なく泣き面に蜂である。
(用紙の配分を誤りたいへん見づらい配置になってしまった)
さらには裁判でサトウ側の証人であった企業(きむら食品)も特許侵害で訴えられた。蜂はよく飛ぶ。
(いちばん右、証拠を出すに加担した)
果てはこれは余談ながら
数年後にはこんどは越後製菓が、外野たる印刷会社(凸版印刷)から「鏡餅」の包装容器の特許侵害で訴えられた。
ト、
餅なだけにどんどん膨らみドラマチック、外から眺めるにはお餅ろい事件なのです。
お餅ろい事件なのです。
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