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ぼくが好きな場所

映画館が好きだ

小さなシネマも

大きなシネコンも

昔からあるような 席が階段式でない劇場も


黒い壁と

重たい 厚いドア

映写室からの明かり

古い緞帳の あの湿っぽい匂い


チケットを クシャッとちぎる音

ポップコーンを カサカサする音

コーラと混じる 氷の音

近くの席の人の 衣擦れの音


ワクワクする

暗転の瞬間


ひとりぼっちになる

エンドロールのあと


物語の中にいるままの気持ちで

どこをどうやって歩いたのか

わからないままに 家までたどり着く


家族と観て 祖父母と観て

いとこ達と観て 友達と観て

片想いの相手と観て

恋人と観て 元恋人と観て

仲間と観て 知らない大勢と観て

ひとりで観た


面白いことに

観た映画の内容より

どんな状況で 誰と観たかの方が

思い出せる自分がいる



映画館という場所がなくなったら

きっとこの世界は またひとつ

ぼくにとって

つまらなくて乾燥した所になるんだろうな

そして

思い出せない想い出が

増えてしまうんだろうな









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