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2021年 大学入学共通テスト(リスニング) 所感

 初めての大学入学共通テストが終わりました。英語(リスニング)について所感を述べたいと思います。

(1) 出題傾向

 第1問と第2問は2回読み,第3問~第6問は1回読みです。以下はそれぞれの大問の構成と出題傾向です。

[第1問]
 短い発話を聞き,Aでは最もよく合う選択肢を,Bでは最もよく合うイラストを選ぶ問題が出題された。

[第2問]
 日本語で状況設定が与えられ,短い会話を聞いて,最も適切なイラストを選ぶ問題が出題された。

[第3問]
日本語で状況設定と問いが与えられ,短い会話を聞いて,選択肢を選ぶ問題が出題された。

[第4問]
 Aでは,図表が与えられ放送される説明を聞きながら,図表の空欄に当てはまるものを選ぶ問題。Bでは,日本語で状況設定と条件が与えられ,ミュージカルに関する4人の説明を聞き,条件に合うものを選ぶ問題が出題された。

[第5問]
 講義を聞き,ワークシートを完成させる問題,講義の内容に一致するものを選ぶ問題,与えられたグラフを参考に講義内容に一致するものを選ぶ問題が出題された。

[第6問]
 Aでは,2人の会話を聞き,話者の主張を選ぶ問題と,主張を踏まえてどのような決定をする必要があるのかを選ぶ問題が出題された。Bでは,4人の会話を聞き,賛成の立場にいる人数を選ぶ問題,会話を踏まえて図表を選ぶ問題が出題された。

 アメリカ英語・イギリス英語以外の英語も流れましたが,それほど癖の強いものではありませんでした。

(2) 試行調査と何が変わったか

 基本的には,試行調査を踏襲したもので,それほど混乱はなかったのではないかと思います。

 変更点としては,第4問のAが試行調査では「聞こえてきた順に並べ替えなさい」という設問が消え,図表を見ながら答える問題が出題されたこと,第4問のBの表に「条件」が英語で書かれるのではなく,"Condition A" のように書かれたため,きちんと日本語の条件を読まなくてはいけなくなったこと」,第6問のAが試行調査では2題とも「話者の主張」を選ぶものだったのに対し,本番では,1題が「話者の主張」,もう1題が「主張を踏まえてどのような決定をするべきか」という問題になったことなどが挙げられます。

(3) どのような力が求められたか

 英語が聞き取れることは前提として,事務処理的能力や思考力を要する問題になりました。

① 事務処理的能力
 具体的には以下のようなものが挙げられます。

1.与えられた状況やイラストや図表を瞬時に把握する力

2.読み上げられる英文の数値を聞き取り,計算して処理する力

3.選択肢を記憶し,聞き取るべき情報をすばやく把握する力

 リーディングでも求められた,必要な情報を聞き取るスキャニング能力が求められます。

② 思考力
 具体的には以下のようなものが挙げられます。

1.直接的には述べられていないけれど,消去法や推測して解答を導く問題

2.視点の切り替えを必要とする問題(読まれる英文と異なる視点で選択肢が作られている問題)

3.言い換えを考えて解く問題

 この辺りは,いかに解き慣れているかということとも関連してくることだと思います。


 リーディングと同様,情報処理能力を問うものが中心なので,決して中身自体は面白いものではありません。また,解き方に関するテクニックが必要である点もリーディングと同様です。そして,リスニングもまた立場によって賛否両論あるでしょう。

 情報処理能力を問うと,必然的に,処理の仕方のコツを教えなければならないため,テクニカルな指導(テクニカルに解ける部分)が増えてくるだろうという懸念も増えます。解きなれで,一定水準の点数が取れるようになるということにもなります。今後どのような出題になっていくのかという点も含め,気になるところです。


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