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現代の注目テーマ〜「トロッコ問題」

 「トロッコ問題」は,倫理学において注目されているテーマです。大学入試の英語長文でもしばしば出題されます。2018年の同志社大学(法),2017年の慶應大学(環境情報),2016年の早稲田大学(政治経済)などが出題歴です。早稲田大は「トロッコ問題」そのものを取り上げた英文,同志社大と慶應大学は「トロッコ問題」から派生する「自動運転車の問題」をテーマとした英文でした。

 では,「トロッコ問題」とは何でしょうか。次の画像を見てください。

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 トロッコが走っていて,このまま進めば5人の人が轢かれて死にます。しかし,レバーを引いてレールを切り替えれば1人の人は死にますが,5人の人は助かります。あなたはレバーを引きますか?

 次の画像を見てください。

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 トロッコが走っていて,このまま進めば5人の人が轢かれて死にます。陸橋の上には太った人がいます。この人を突き落とせば,この太った人がトロッコに引かれて死にますが,5人の人は助かります。あなたはレバーを引きますか?

 実験によれば,上記の2つでは,1人を救うか5人を救うかに関する意見が変わるようです。また,2つ目の状況で「太った人」を「チンパンジー」にすると,チンパンジーを落として,5人の人を救う人が増えるようです。

 ベンサムが提唱した「最大多数の最大幸福」という「功利主義」の視点から考えれば,どちらの状況でも「5人を救う」べきですが,カントの「義務論」の視点から考えれば,誰かを他者のために使うべきではないため,「何もするべきではない」ことになります。この「ジレンマ」をどう考えるかが倫理的なテーマとなっているわけです。

 この問題が自動運転車を設計する際に,関係してきます。子供が急に飛び出してきたときに,

子供を助けるために乗客を犠牲にするようにインプットするのか

乗客を助けるための子供を犠牲にするようにインプットするのか

という問題が発生します。

 トロッコ問題は2010年に亡くなったイギリスの哲学者・倫理学者であるフィリッパ・フットが提起したものです。科学技術の進歩に伴い,「トロッコ問題」は現在さらに身近なものとして捉えられ,議論すべきテーマとなっています。以下の本も参考になると思います。

 「トロッコ問題」は一つの事例であり,ファクターを変えた様々な事例があり,身近な倫理的テーマだということがわかります。ぜひ考えてみてください。

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