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雲をそんな風にみたことがなかった「よそ見ひとつせずに、急ぎ足でどこかに向かって飛んでいく素気のない灰色の雲」

学生の頃、見上げる空が好きで、これを手元に残しておけないか、好きな時にパッと見られないか、と思い、空の写真集を作ったことがある。
今思うと、空の写真集に対する憧れだったかもしれない。

空や海を見ると、ヒトは、心が落ち着いたりする。
誰しも、長い人生の中でそういう経験はあるものだ。
そう思うと、学生の頃は、心の開放を求めていたのかもしれない。

最近、心に余裕ができてきた。
自分の生き方の方向性を見定めたこと、そしてこれまで信じていた信念のようなものが、間違っていないなと確信できたからかもしれない。
よし、村上春樹の作品と対峙しようじゃないの。
そう思った。

村上春樹の作品は、とても壮大で大がかりなものだけれど、一気に読みたい。この仕事をしながらちびちびと、強いお酒を割らずに時間をかけて飲むのとはまた違う。一気に世界観に没入して、「はぁー今回も大作だったよ、お腹いっぱいだよ、村上春樹さん。」と思いたい。
でも、お腹いっぱいになると現実に戻れなくなってしまうから、村上春樹の小説ではなくて、エッセイを読むことにした。
そうしたら、出会ったんだ。この表現に。

よそ見ひとつせずに、急ぎ足でどこかに向かって飛んでいく素気のない灰色の雲

雲を表現しているのに、普段の自分の歩き方が素気ないと言われているみたいで、ハッとした。村上春樹すぎない表現がとても心地良くて、お酒をゆっくり飲みながら一気にエッセイを読み干した。

自分が灰色の雲になっていないか、ショーウィンドウに映る自分を確認して今日も前を向いて歩こう。

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