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オールドレンズが好きな人は

カメラや撮影にハマっていくと「オールドレンズ」という言葉を耳に目にする機会が出てきます。オールドレンズとはその名の通り古いレンズです。発売から15年も経てばオールドレンズと呼ぶのかどうかはわかりませんが、現在の最新の機能性能を持ったレンズよりもはるか昔に作られたレンズ、ということになるかと思います。

オールドレンズの良さには「フワッと写る」「独特のボケ」その他諸々、現在の最新レンズには無い写真が撮れることから、好きな人にはドンピシャでハマるレンズが見つかることもあります。それらのレンズを使うことでレンズ独特の世界観と、個人の感性を組み合わせることで、現在ではあまり出回らない写真のリバイバルになり、他者の心をつかみやすいレンズ、とも言えます。

人は見慣れたものには感動を覚えにくいものです。見慣れない景色、情景、そんな場面に心動きます。わかりやすいのは朝日と夕日です。晴れた日や雨上がりの夕焼け、1日の中でほんの数十分しか見ることができない時間の写真は、お昼間に撮った写真よりも情緒的でなんとなく心に来るものがあるのではないでしょうか。

そういった場面を最新レンズではなく、あまり人が使わないオールドレンズを使うことによって、表現力をかけ合わせればオリジナルの1枚が残せる可能性が高くなります。

対して、商業的な写真に必要なものは写真に写る商品の個性であって、その商品写真からカメラマンとカメラとレンズの個性が出てはいけません。カメラやレンズ、カメラマンのセンスで商品を歪曲してはいけないわけです。

例える写真が手元にないのでわかりにくいですが、下の写真はタイル張りの壁です。レンズの性能+カメラ内の補正もかかっているはずですがタイルの歪みがありません。これはNikonのZ8と35mm F1.8のF3.2で撮影した写真の撮って出しになります。

 タイル張りの壁の歪みがない

タイルの歪みも無く、職人さんが仕上げた壁がきれいなマス目になっているのがわかります。

 対して下の写真はFマウントの35mm F3.3のいわゆるオールドレンズで撮影した同じ場面の撮って出しの写真です

レンズの歪曲に4隅の収差が際立つ

タイルの線が見事にレンズの曲面状に歪曲しているのがわかります。さらに四隅の周辺減光もひどく、悪い意味でパネルが正確に写っておらず、良い意味でレンズの個性が溢れています。

商業写真で下の写真を納品したら仕事は無くなります。そのためこういった歪曲がひどいレンズの場合はPhotoshop等で補正の作業を施して納品します。悪く言うとレンズの個性を補正で殺す作業が必要になるわけです。

商業撮影では商品を正確に、綺麗に、さらにはより良く写す必要があるので、こういったレンズの個性は邪魔になってしまい、こうしたオールドレンズの良さを良いと感じて機材を使っている人の個性も殺さなければなりません。

かつてはズームレンズのズーム域で一番歪みが少ない場所を探し出して歪まない写真を撮る、みたいな事もカメラマンの知識と経験の差でしたが、今ではそんな知識も経験も全く必要なく全てデジタル技術によってカメラ内補正もしてくれる時代になりました。

そうしてカメラマンの知識と経験の差はどんどん埋まって行きます。そうなると、仕事としての商業的撮影は今一番最新のカメラ、レンズの性能を全力で駆使して使える人が一番ベストなカメラマンと思うので、カメラもレンズも入れ替えは激しく行います。

商業カメラマンとは没個性です。いかに商品、被写体を明確に綺麗に写せるか、レストランの写真やブランド商品の写真を見て、料理なら美味しそうと思い、商品なら格好良い、素敵と思わせることが必要な事であり、どんなレンズで撮ってるんだろう、なんていう事を感じさせる写真はダメなのです。

対して所謂写真家と言うジャンルになると話しは変わります。人とは違う表現方法や技、カメラやレンズを組み合わせる事で自分だけのオリジナルな写真表現に近づきます。

同じカメラマンと言ってもその立場によってレンズひとつ取ってもアプローチが全く違いますね。





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