見出し画像

「お風呂が沸きました」の音楽が商標登録に。音商標とはどんな商標か?

弁理士/ネーミングアドバイザーのヤマダです。

日々報道されるニュースの中から皆さんのビジネスに役立つネタ、知的財産に興味を持ってもらえそうなネタを紹介します。

今日のネタは、ノーリツの「お風呂が沸きました」の音楽が商標登録されたというニュースです。

■ ノーリツの「お風呂が沸きました」の音楽が商標登録される

皆さんもおなじみ、「ノーリツ」の「お風呂が沸きました」の音楽が商標登録されました。


商標登録6369662

(リンク先の公報番号をクリック⇒「音声再生」のボタンをクリックすると音商標を聞くことができます)

■ 音商標とはどんな商標か?

この商標は、音商標(Sound Mark)と呼ばれるものです。


商標は商取引で用いられる標識。
商売の看板として用いられる表示と言っても良いかもしれません。
商品の製造元や販売元、サービスの提供元を示す役割があります。

文字商標(ネーミング)や図形商標(ロゴマーク)が代表的ですね。
立体商標なんていうのもあります(例えば、不二家のペコちゃん人形、サントリーの角瓶等)。


ただ、文字や図形、立体以外にも商売の看板となる表示はあるのではないか、ということで平成27年4月から導入されたのが新しいタイプの商標です。

動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、位置商標、そして今回話題となっている音商標です。
文字商標や図形商標を伝統的商標というのに対し、これらの商標は新商標と呼ばれています。

新しいタイプの商標の保護制度の概要について|特許庁

音商標は音楽、音声、自然音等からなる商標であり、聴覚で認識される商標です。
音楽的要素(メロディー等)は必須ではなく、言語的要素だけのものもあります(例えば、大正製薬「リポビタンD」の「ファイトー,イッパーツ」のセリフ等)。

商標登録5804565

■ 音商標の審査でも通常の商標と同じ条件が求められる

音商標と言っても、審査は通常の商標と同様に行われます。
例えば、その音を聞いても誰の商品・サービスかを認識することができない場合、商標登録は認められません(識別力なし)。

この点、言語的要素を含む音商標の場合、文字商標とさほど変わりません。

例えば、社名や商品名を含むような音商標は社名や商品名自体に識別力があるので登録を認められやすいわけです。
「音商標」の登録第1号、テレビCMでお馴染み、久光製薬の「ヒサミツ♪」のサウンドロゴが典型的ですね。

商標登録5804299


その後も登録されるのは言語的要素を含む音商標ばかり...。
音楽的要素のみからなる音商標が登録されたのは制度施行から2年半後の平成29年10月。

音楽的要素のみからなる音商標について初の登録を行いました|特許庁


登録されたのは、

大鵬薬品「正露丸」のラッパの音 と、

インテルのサウンドロゴ

でした。


音楽的要素のみからなる音商標の登録が難しいのは、その音楽なり音色なり「だけ」で商品やサービスをイメージさせることができなければいけないからです。

ノーリツの音商標は難産の末、商標登録された

今回登録されたノーリツの音商標はピアノ曲「人形の夢と目覚め」の一部と「お風呂が沸きました」のセリフを組み合わせたものです。

しかし、この商標を使用する「給湯器用リモートコントローラー」等の商品において、「お風呂が沸きました」というセリフは誰でも使う表現なので、ノーリツの商品を認識することができません。
即ち、「お風呂が沸きました」のセリフの部分には識別力がありません。

そうすると、音楽の部分だけで多くの人がノーリツの商品であることをイメージできなければ商標登録を認めてもらうことができないわけです。


実際、ノーリツの音商標もこの点が問題となり、審査官から商標登録できない旨の通知(拒絶理由通知)を受けています。

その後、代理人弁理士が、多くの人がこのメロディーを聞けばノーリツの商品であることを認識することができる旨の証拠書類を積み重ね、出願から3年8ヶ月かかって漸く商標登録に辿り着きました。

通常の審査だと概ね1年位で審査結果が出るので、難産の末の商標登録と言えます。

■ まとめ

今日のまとめです。

実際、音商標の実益を受けるのは、TVCM等を多用する大企業ではないでしょうか。

やはり、商標登録をするなら文字商標と図形商標が基本です。
私は文字商標と図形商標をうまく使いこなすことが中小企業のブランド戦略に資すると考えています。


では今日はこの辺で。


note|ヤマダ@小さな会社のビジネスプロデューサーはブログランキングに参加しています。
ポチッとリンクをクリックしてくださいm(_ _)m

にほんブログ村

人気ブログランキング