砂町銀座で宝探し
曇り空のもと、朝食を抜いてきたウサギは砂町銀座商店街のゲートの下で立ち止まり、目を細めて前方を見つめていた。
「さて、今日は何から食べようかな」と彼女は呟いた。その声は低く決意に満ちていた。
「最初はここかな」とウサギは足を止めて、「上海肉まん」の看板を見上げた。店先には春巻きやシュウマイがずらりと並び、その中でも五種類の肉まんが彼女の目を引いた。
「先は長いから一つだけ選ぼうね」と、隣のカメが優しく囁いた。「一つだけ、一つだけ」とウサギはその言葉を、まるで呪文のように唱えた。目を閉じて深呼吸し、彼女が手に取ったのは「えび入り高菜肉まん」だった。
「一つだけを選ぶのは難しいわ」と、ウサギは肉まんを手に再び歩き始めた。しかし、何歩も歩かないうちにまた足を止めた。
「なんとも言えないいい匂い」と呟きながら匂いを辿っていくと、見つけたのは「惣菜なかふじ」というお店だった。
「うーん。迷うわ」と店頭でしばらく考え込んでいたウサギは、「鶏ごぼう」を手に取った。その瞬間、ふわりと幸福感が彼女の中に広がった。
「あっ、あれも美味しそう」と、ウサギが次に駆け寄ったのは「手づくりの店 さかい」というお店だった。彼女の瞳は輝き、期待に満ちた目で店頭を見つめた。
「ここはやっぱりこれでしょ!」とウサギはキッパリと指をさした。その先には大きな「マグロメンチ」があった。その見事な形と香ばしい香りが彼女の心を引きつけた。
「そろそろ持ちきれないんだけど」と訴えるようなウサギの視線に気づいたカメは、近くの公園に彼女を導いた。
そよ風に乗って、ウサギの手元からお腹をくすぐるような香りが漂ってきた。彼女はその匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、マグロメンチを目の前にかざした。
「私の宝物って、やっぱり食べ物なのよね」
彼女はカメに向かってニッコリと笑った。
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