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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年2月19日 07:11
春の柔らかな陽射しのもと、新しいシューズを足にしたウサギとカメが、人々が集まるスタート地点に静かに立っていた。他のランナーたちも、それぞれのドラマを胸に抱き、緊張と期待で息を潜めていた。ランナーの列の先頭に立つウサギの視線は、遥か前方に固定されていた。彼女にとって、タイムや順位は意味をなさない。ただ精一杯走ることが全てだった。それでも心の片隅では常にカメのことがちらついていた。「カメくん、ゴー
2024年2月4日 07:11
次の朝、ウサギとカメは石垣島北部の平久保半島のほど近く、伊原間公民館の広場で準備運動をしていた。産まれたばかりの海風が、二人を優しく包んでいた。これから挑むのはオーシャンビュートレイル。ただのレースではない。それは自然との、そして自分自身との対話であった。「ウサギさん、今日は距離が長いし、足元も危険がいっぱいだから気をつけてね」とカメが静かに言うと、その言葉に彼女は微笑み、「無理はしないけれど