「静かな退職」は増えているのか
アメリカでコロナ禍を境に台頭してきた概念がある。
「静かな退職(Quiet Quitting)」
これはキャリアアップなどを目指さずに、必要最低限の仕事はこなし、形式的には退職をしていないものの、心は退職したかのような働き方のことらしい。
社会情勢の変化や経済のグローバル化に伴う競争激化など身の回りの環境は刻々と変化している。
そのような環境の変化からくる人々の変容として、より一層プライベートを充実させたり、結婚や育児、介護などのライフステージの変化を重視する価値観をもつ従業員(労働者)が増えており、働き方や仕事、キャリアに対する考え方の変容があったと言われている。
この情報に触れて、筆者パラディソがぱっと思い浮かんだのは1988年~1990年代の日本でヒットした”映画:釣りバカ日誌”だった。
西田敏行さんが演じる主人公の浜崎伝助(通称:浜ちゃん)の姿である。
今回は現役働き盛り世代の「静かな退職(Quiet Quitting)」という現象を「釣りバカ日誌」という顕微鏡で覗きながら考察していきたい。
本題の前に釣りバカ日誌のハマちゃんとは
映画とコミックではストーリーと設定が若干違うようですが、概要としては下記となる。
要するに、会社内での出世や仕事に対する意欲よりも、大好きな妻(ミチコさん)と大好きな魚釣りに人生を全集中している男なのだ。
ミチコさんと一緒にいる時間や魚釣りをする時間が削られるくらいであれば、ヒラ社員のまま過ごし、自分の人生の中で本当に大切なものを優先するのである。
もはや時代が違うと言っても過言ではない36年前の映画に、現代を投影している部分があるのではないか、と思うのである。
静かなる退職が増えている原因
改めて、現代の状況を整理してみよう。
・・・まさに前項で紹介した浜ちゃんこと浜崎伝助そのままではないだろうか。
今の働き世代の価値観とは
「静かな退職(Quiet Quitting)」問題とは今に始まった話やコロナ禍以降、突然生まれた新しい価値観や行動様式ではなく、昔からあった価値観や行動様式だと考えるのが自然ではないだろうか。
実際、”釣りバカ日誌”は1988年に公開された映画なのである。
インターネットやテクノロジー、コミュニケーションツールの進歩によって、現代ではSNSやブログを通じて誰でも情報を発信し、それなりの影響力を持てるようになった。
日本でFIREを達成したロールモデル的な存在である三菱サラリーマンこと穂高唯希さんも自身のブログでの発信を通じてFIREという概念を2015年から唱えてきた。
穂高さんはFIREを志した理由として、
と、表現している。
このように、イチ個人の様々な価値観が現代を生きる我々ひとりひとりの目に届きやすくなったことが要因で「静かな退職(Quiet Quitting)」なる表現(ラベリング)が生まれたのだろうと想像している。
今の働き盛り世代(20代~40代)のなかに、ワークライフバランスを重視する価値観を持っていたり、キャリアプランの描きづらさにより必要以上に頑張らないという人がいても全く不思議ではないし、
逆に、ビジネスマンとしてのキャリアを描き、リゲインの旧CMキャッチの如く24時間働けますかとモーレツに働いている人もいるだろう。
自分の所属組織に誇りと愛着をもって献身している人もいるだろう。
結局、今の働き世代の面々は、昔の人と比べ劇的に何かが変わったというわけではなく、多様な価値観が単に我々の目に付きやすくなった、という環境面の変化の方が大きいのではないだろうか。
今後の世界を妄想
「静かな退職(Quiet Quitting)」が脚光を浴び、半ば社会問題化しそうな背景には行き過ぎた資本主義の弊害があるのかもしれないとも考えられる。
格差の拡大が叫ばれ久しいが、人は基本的に不幸を願うのではなく、幸せを望む生き物だと仮定するならば、時代に合わせて幸福を定義した結果、この静かな退職現象が台頭してきた一つのファクターかもしれない。
また、現在の大きな潮流として、資本主義社会が成熟していくにつれ、様々なものが共産主義化方面に逆方向に揺り戻されている部分も散見されてきている。
資本主義国家の象徴、アメリカ合衆国も国民皆保険制度を議論しているし、FRBの影響力が大きくなり、政府の財政出動も増え、イギリスのマクロ経済学者ケインズの唱えた大きな政府化傾向が顕著である。
何事も、行き過ぎるということがある。
そして行き過ぎたものは反対方向に戻る力が働くが、それもまた行き過ぎる。
いわゆる、平均への回帰である。
ここでは資本主義 VS 共産主義のようなイデオロギーの話は割愛するが、上手くいけばとても理想的だが、上手くいく確率が低く、悪くなった時には徹底的にディストピアな全体主義・共産主義的な世界にならないことを願うのみだ。
おしまい
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