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【短編小説】ぐるりTHE ヴァージニア

 視聴覚室の硬い木の椅子に潜り込む。
 スカートの間にある空間は暗く曖昧に歪んでいた。俺はそこを知らない。少なくとも当時は知らなかったし、今でも知っているとは言えないかも知れない。だから今でもそのスカートの中は暗いのかも知れない。

 俺はそこに光を当てる事ができない。
 暗闇の中に虹が射す事はない。
 どうしたって光を閉じ込める事は出来ないからだ。
 光は出ていく。
 怒り狂ったお前が部屋を出て行った様に。俺は光もお前も捕まえる事ができない。だから俺は壁伝いに手をつきながら歩いて廻るしかない。
 手探り。
 人生そのもの。

 水面から顔を出したが、辺りは暗く陰鬱な雰囲気だった。
 暖かくも無く寒くも無いその場所は恐らく秋のようだ、と死に損ないの中国人が語った話を高校の漢文教師から聞いた事がある。
 なんでも時折、松茸が顔を出したからだそうだ。そいつが何年そこで過ごしたのか知らないが、四季があるなら少し笑える。
 俺は再び目を閉じて粘り気のある水の中に沈んでいった。

 膝を抱えて丸くなる。
 俺はゆっくりと沈んでいく。
 それは俺が小学生の頃だ。
 俺の正面に座った派手な服装の女はサングラスを外して頭に乗せるとゆっくりと膝を開いた。
 高いヒールから伸びた膝の間から緑色の下着が見えた。
 蛍光色の緑色だった。
 俺の視線は釘付けにされた。おそらくその女は微笑んでいただろう。そして俺の視線はそれ以降、そこから動いていない。
 ずっとあの蛍光緑のパンツを見ている。

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