「読みたいことを、書けばいい。」自分のために書く文章術|読書感想
こちらのnoteで紹介されていた本を読みました。
購入の決め手になったのは、冒頭のこの一文です。
「人生が変わるシンプルな文章術」と銘打った本に、いきなり「あなたはゴリラですか」なんて問われて思わず飛びのいてしまいます。人生を変えるどころか、人間であることを疑われているのです。俄然、興味が沸いてきました。
まさか「ゴリラになって文章を書き進めよう!」なんて言わないよな……と恐怖を感じながらも文字を追いかけます。
どうやらこの質問は、読者をゴリラに染め上げるつもりで載せたのではなく、筆者が中学生のときに出会った「職業適性診断チャート」のはじめに置いてあった設問らしいのです。
若い頃の筆者もこの質問を見て、困惑の色を浮かべたようでした。しかしここで「No」を選ばずに「Yes」に進むあたり、筆者の好奇心の高さがうかがえます。
矢印の先にはこう書かれていたそうです。
いったいどういうことでしょう。設問者の意図がまったく読めず、謎は深まるばかりです。最初の質問でゴリラかそうでないかで分ける必要があったのでしょうか。
筆者は、これを書いた人のことをこのように分析しています。
「あなたはゴリラか」なんて絶大なインパクトのあるエピソードに、本のタイトルを絡めてきました。「自分が書きたいから書く」「自分が読みたいから書く」「自分が楽しいから書く」この本を通じて伝えたいことを、冒頭で矢継ぎ早に披露したのです。
いきおいは衰えず、次々に「書くための考え方」を説いていきます。「読みたい文章を書く」ことを原動力に編まれた本書は、読者と同じ目線に立って説明をしてくれるのです。そして書かれているアドバイスのどれもが説得力をもっています。
ときおり入る筆者のツッコミのおもしろさもさることながら、本の作りも考え尽くされていました。文字が大きく印刷され、行間もたっぷり取られていて、ものすごく読みやすいのです。ページの構成の仕方と筆者の語り口が学校の授業のようで、さくさく読めます。
ページの上と下の余白に横線が引かれているのも大きなポイントです。本を読むとき、気になった行にふせんを貼り付けるわたしにとって、この線は良いガイドとして働きました。
出版社の編集さんから熱烈なメッセージを受けて、この本は作られたのだと筆者は語ります。担当者からの依頼メールをそのまま載せたページからは、彼の熱い想いが痛いほど伝わってくるのです。まったく関係のないわたしでも、文字からあふれ出る熱意にのけぞってしまいます。
わたしは本に書かれている編集者の名前に見覚えがありました。noteで記事を見あさっていたとき、読むだけで鳥肌がたつ文章を書く方が何人かいたのです。
その中でもとくに際立っていたのが、アーティスト「aiko」に対してとてつもない熱量の愛をつむぐ人でした。
他にもたくさんの記事を出していらっしゃいますが、今野さんの世界を堪能するのなら、この記事が一番だと思います。
おもしろい人たちで寄り合ったら、すごくおもしろい本ができあがるのだと悟った冬の夜でした。
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