すずめやね のぼる

某国立研究所の博士研究員。獣医師。 動物園・水族館獣医師を目指して獣医学科に進学。在学…

すずめやね のぼる

某国立研究所の博士研究員。獣医師。 動物園・水族館獣医師を目指して獣医学科に進学。在学中に基礎研究分野に興味を持ち、大学卒業後そのまま博士課程へ進学し学位取得。動物に関する小話を備忘録がてらに執筆する予定。

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ライオンの爪切り

10数年前のちょうど今時期、ライオンの爪切りを手伝ったことがある。たった一度の経験だったが、強烈に僕の心に残っている。 大学一年生の夏休み、動物園獣医師に興味があった僕は、地元の動物園への実習を申し込み、1週間の飼育実習をさせてもらうことになった。当時、大学デビューをはきちがえた僕は丸坊主だった。実習中は大学名がプリントされた真っ白なつなぎを着て、ゴム長靴を履いていたため、囚人あるいは電波系の宗教信者のように見えたことだろう。そんな風体を面白がってくれたのか、飼育員の方はと

    • AIと精神科

      先週末、学会に参加した。久々のオンサイトでの参加 & 口頭発表だった。準備不足感が否めなかったが、それなりに満足のいく発表ができたと思う。 学会の中身とは全く関係ないが、とにかく会場が大きかった。ハイブリッド開催なのに2階席まであった。気になって調べてみたところ、「最大収容人数1300人」と書いてあった。武道館がこの10倍以上入ると考えると、売れてるアーティストってすごいところでライブやってんだなーと思った。「2階席ー!」。言ってみたかった。 精神科領域におけるAI研究の応

      • 宇宙飛行士選抜試験書類選考の結果

        落ちました。 正直、書類選考で落とされるような経歴でもなく、エントリーシートの出来も悪くなかったと思っていました。それなりに若いし、自然科学系のPh.Dだし、今もアカデミアで研究続けてるし、受賞歴とかもあるし、健康診断も問題ないし...。 やっぱり既往歴の精巣腫瘍が引っかかったのかな?それとも宇宙飛行士類似業務の部分が弱かったのかな?それかA4自己アピールかな...?など、色々と落選の理由を考えていましたが、結局のところ「日本代表として月面に立てるだけの人物でなかった」と

        • 金玉をとった話

          今から約5年前、僕は金玉を取った。精巣腫瘍だった。 この病気の啓発のため、僕が経験したことの一部を記そうと思う。決して暗い話ではない。どうか最後まで読んでもらえると嬉しい。なお、摘出したのは片側だけであり、僕ともう一つの金玉は無事なので、安心して読んでほしい。  最初の違和感はソファに座ったときだった。家に帰り、いつものようにコンビニで買った弁当を机に置き、テレビをつけ、ソファにドスンと腰をおろした瞬間、下腹部に鈍痛が走った。男性ならば一度は経験したことであろう、あの痛み

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        ライオンの爪切り

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          5本

        記事

          Ying GuとJun Wuのグループから異種間キメラに関するシングルセルRNA-seqの論文が3月に出てたみたい。今年1月にNatureに発表されてた論文の続報的内容のよう。パット見た感じだと若干怪しい雰囲気もあるからどっかでちゃんと読まねば

          Ying GuとJun Wuのグループから異種間キメラに関するシングルセルRNA-seqの論文が3月に出てたみたい。今年1月にNatureに発表されてた論文の続報的内容のよう。パット見た感じだと若干怪しい雰囲気もあるからどっかでちゃんと読まねば

          性分化の遺伝子とオンライン学会

          昨日今日とオンライン学会に参加していた。今回オンラインということで参加費が無料だった。しかも、ランチョンセミナー用のお弁当も希望すれば無料で届けてくれるという夢のような学会だった。 無料+お弁当付きなだけでなく、学会の内容もすごく良かった。初めてのオンライン学会だったが、口頭発表やポスターセッションでの質問のしやすさや、回答がテキストでも追っかけて見れることなど、リアルの学会に戻っても継続してほしいような仕組みがいくつかあった。特に、テキストでの質問特有の伝わりにくさを、座

          性分化の遺伝子とオンライン学会

          ヒトiPS細胞から胚盤胞 世界初、新たな生命つくる可能性も

          数日前、Yahooニュースに掲載されていた朝日新聞デジタルのヘッドラインだ。 ふわっとした内容のおためごかしな記事だったので、ヒトiPS細胞を使ったことのある身として原著論文をざっくりと読んでみた。最近はiPS関連論文を追っかけてなかったので、色々と進んだのだなーと思った。以下、要約。 ざっくりまとめそもそも今回の報道は、3月17日にNatureに同時掲載された2報の論文をもとにしている。1報はオーストラリアのMonash大学から、もう1報はアメリカのUniversity

          ヒトiPS細胞から胚盤胞 世界初、新たな生命つくる可能性も

          雑記

          今日は全く仕事に身が入らなかった。 何かやらねばと思い、Natureを流し読みしていたら子供心をくすぐられる論文を見つけた。 Apffel, B., Novkoski, F., Eddi, A. et al. Floating under a levitating liquid. Nature 585, 48–52 (2020). https://doi.org/10.1038/s41586-020-2643-8 上の写真がこの論文のキーフィギュアだと思う。 全くの専門外

          ライオンが逃げた

          「本日〇〇動物園で、動物脱走対策訓練が行われました」 アナウンサーの和やかなナレーションとともに、ライオンのきぐるみが大勢の大人に囲まれ、捕まえられる、そんな茶番じみた訓練風景を、誰しも一度はニュース番組で観たことがあるだろう。不必要な訓練だと侮るなかれ。時として動物は逃げ出すのだ。 僕は大学一年生の夏休みに、地元の動物園で飼育実習をさせてもらった。この時見学させてもらったライオンの爪切りは僕にとって衝撃的な経験であり、以前noteに書いているのでご参照いただけると幸いであ

          ライオンが逃げた

          シマヘビ

          学名:Elaphe quadrivirgate 和名:縞蛇 分類:ナミヘビ科ナメラ属 シマヘビを見たことない人に説明してみる体長80~150 cmの黒いラインの入った、手足のない紐状の生き物である。日本固有種であり、無毒である。田んぼやヤブの中など様々なところに生息しており、日本中どこでも見ることができる一般的なヘビである。カラスヘビとよばれる真っ黒なヘビは、シマヘビの黒色変異体であり、同種である。 シマヘビはカエルやネズミを食べ、カラスやイノシシに食われる。変温動物なの

          ペンギン

          学名:Sphenisciformes Spheniscidae 和名:ペンギン(人鳥) 分類:ペンギン目ペンギン科 ペンギンを見たことない人に説明してみるつもりで書いてみるとにかく可愛らしい鳥である。6属18種が現存し、体長40~130 cmくらいの2足歩行をする飛べない鳥だ。飛べない鳥と聞くと、ダチョウやエミュー、ヒクイドリなど屈強な脚を持つ、まるで恐竜のような鳥を思い浮かべるかと思うが、ペンギンは全く異なる。あえて鳥で例えるとするならば、ニュージランドに生息する飛べない

          キリン

          学名:Giraffa 和名:キリン(長頸鹿) 分類:キリン科キリン属キリン キリンを見たことない人に説明してみるつもりで書いてみる地上にいる四足歩行動物で、とにかく背が高い。生まれたての子供キリンでも1.5 mくらい、大人キリンともなると4~5 mもある。信号機の高さがだいたい5 mらしい。そんくらい大きい。足と首が長く、それぞれ1.8 m, 2 mくらいあり、足が長くてシュッとしたブラキオサウルス、もしくは足と首の長いウシといった感じ。顔つきは少しラクダに似ている感じでま

          東京都知事選挙と統計

          結論:50歳以上投票率が変わらず、50歳未満投票率が58.77%である時、50歳未満投票数が過半数を超える。 背景先週の日曜日は東京都知事選挙の投開票日だった。 今回は過去最多の立候補者数(22人)であり、いわゆる泡沫候補と評される立候補者も数多く出馬していた。結果は小池前都知事の圧勝だったが、投票する前から結果は見えていた、という人が多いのではないだろうか。私もそんな一人であった。 都知事選に限らず、選挙全般に対して、「結局団塊の世代とかバブル世代とかの票で決まるんだ

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