宇宙飛行士選抜試験書類選考の結果

落ちました。

正直、書類選考で落とされるような経歴でもなく、エントリーシートの出来も悪くなかったと思っていました。それなりに若いし、自然科学系のPh.Dだし、今もアカデミアで研究続けてるし、受賞歴とかもあるし、健康診断も問題ないし...。

やっぱり既往歴の精巣腫瘍が引っかかったのかな?それとも宇宙飛行士類似業務の部分が弱かったのかな?それかA4自己アピールかな...?など、色々と落選の理由を考えていましたが、結局のところ「日本代表として月面に立てるだけの人物でなかった」ということに尽きると思います。

今回の募集は月面探査プロジェクトであるアルテミス計画に送り出すクルーのリクルートが目的です。
アルテミス計画では2024年までに月面に人類を送り、その後月周回軌道上に拠点を築き、月面拠点の建設を行うことで、人類の持続的な月面活動を実現することを目指しています。つまり、今回の選抜で選ばれる人は月面着陸&月面労働の可能性がある人物ということになるのです。言うなれば、日本人初のムーンウォーカーであり、ムーンワーカーです。

この点を踏まえて、自分が合格に足る人物だったかを考えてみると、納得の不合格です。正直、自分が月面に立ち、月面で働く姿が想像できないです。きっと選ばれる人は「激レアさん」や「クレイジージャーニー」に出るような人か、宇宙開発界/科学界の大谷翔平選手のような人物だと思います。イメージとしては、「バッタを倒しにアフリカへ」の著者、前野ウルド浩太郎さんみたいな人やJAMSTECの高井研さんのような人です。彼らと比べて、野性味と冒険心が僕には圧倒的に足りていません(学術的な業績も)。

敗戦の将がベラベラと語っていますが、今回の受験は私にとって良いものだったと感じています。今後受験することを迷われている方は、受験することを強くおすすめします。まず、エントリーシートを久々に書いたことで、自分のこれまでの軌跡と将来について向き合うことができたと思います。また、エントリーシート作成を通して能力的・経歴的な個性や弱点の把握もできました。個性は伸ばし、弱点は補い、完璧超人を目指したいと思います。さらに、割としっかりめの健康診断を受けたのも良かったと思います。人生で初めて尿酸値を測りました。基準値ギリギリだったので少し気をつけようと思います。そして何よりも、この選抜を通して今後の宇宙開発に興味を持てたことが大きいと感じています。

人工知能の分野ではAI効果という言葉があります。AIがタスクを解決した時、そのタスク自体が陳腐化したように感じてしまう認知バイアスのことです。イメージとしては「Siriすごいよね!」という人が今更いない感じに似ています。Siriは音声認識やトークナイズ、音声でのチャットなど、それなりに高難易度のタスクであるにもかかわらず、あまり評価されません。その結果、AI開発自体に冷ややかな視線が向けられたり、「結局何が便利なの?」と言われたりしちゃいます。宇宙開発もこれに似たところがあるように思います。

人工衛星や国際宇宙ステーションなど、今の僕らにとっては身近になりすぎて、そのスゴさやありがたみを正しく認識できず、国民と開発者や宇宙関連事業者との間に温度差が生まれているように思います。しかし、今回の選抜試験にエントリーすることで、技術的・資源的価値やスゴさを学び、宇宙開発に関わる様々な人の熱気の一端に触れることができました。前述したAI効果を克服するためには、正しい知識を持った利用者になるか、あるいは開発者側になるかの2択です。今回の試験で開発者側になることは叶いませんでしたが、前者には近づけたと思います。科学を愛する一人の国民としてこれからの宇宙開発と選抜試験を見守りたいと思います。わくわく。

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