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性分化の遺伝子とオンライン学会

昨日今日とオンライン学会に参加していた。今回オンラインということで参加費が無料だった。しかも、ランチョンセミナー用のお弁当も希望すれば無料で届けてくれるという夢のような学会だった。

無料+お弁当付きなだけでなく、学会の内容もすごく良かった。初めてのオンライン学会だったが、口頭発表やポスターセッションでの質問のしやすさや、回答がテキストでも追っかけて見れることなど、リアルの学会に戻っても継続してほしいような仕組みがいくつかあった。特に、テキストでの質問特有の伝わりにくさを、座長の先生が質問内容を噛み砕いて質問してくれるので、質疑応答が分かりやすく、「結局こいつ何が聞きたいんだよ...」というたまに学会で感じるイライラみたいなのがなくて良かった。

演題に関しては、Sry遺伝子の隠れExonを見つけた話が面白かった。そもそもSry遺伝子(Sex-determining region Y)はその名の通り哺乳類のY染色体に存在するオス化に関わる遺伝子で、Sryを導入した胚はXXでもオス化させることができる。発見は30年くらい前で、イントロンを持たない単一Exon遺伝子として同定されていた。しかし、オスのRNA-seqの結果をY染色体にmultipul-hitでMappingすると、SRY遺伝子のすぐ近傍にMappingされる部分が存在していた。「なんだこれ?mRNAとして出てる?それともただのノイズ?」という疑問がこの研究の出発点とのこと。その後、CAGE-seqで再解析し、Exonとして読まれていることを確認。このExonを2つ持つSryをSry-Tと名付け、今まで知られてきたものをSry-Sと呼び、Sry-Tの機能解析。

CRISPRを使ったSry-TのKO実験において、Sry-Sがintactでも、Sry-TをKOするとオスにならずメス化する、という衝撃の結果だった。その後、Sryのタンパク質発現解析などからmRNAの安定性がSry-Sだとめちゃめちゃ低く、Sry-Tのほうが安定、という結果を得ていた。じゃあmRNAの安定性に重要なのはどこの配列?という疑問を解決するために、Sry-Sの配列にSry-Tの配列を組み込んだものをたくさん作って、安定性に関わる配列(degron配列、正確には分解に関わる配列)を同定していた。

やっぱり性分化はFigureのインパクトが半端ないなーと思った。論文としてもきっちりしているし、何よりもSryのようなメジャーな遺伝子を今更深堀りしようとした情熱にちょっと感動した。かっこいい。原著の論文ちゃんと読もうと思って調べてみたら2020年のScienceの論文だった。すげーというのと、最近Scienceちゃんと読んでなかったなと少し反省...。質疑応答では「なんで今まで誰もやってなかったの?」という質問にも答えていた。Sryによるオス化は発見当初、Bac-cloneで入れたり、ウイルスベクターで入れたりしていたらしく、オス化の効率もそこまで良くなかったとのこと。経験的にPosition-effectやコピー数で効率が変わることは分かっていたけど、とりあえずの表現型は取れるからそれ以上突っ込んだ研究がされてこなかったらしい。CRISPRのおかげで進んだ研究の一つだと思った。

改めて分子生物学の面白さと表現型が取れる遺伝子のインパクトの大きさを感じた。年度の終わりにちょっとやる気出た。明日から頑張ろう&明日科研費の結果出ることに気づいてソワソワしてきた。あと、noteで斜体が使えないことにモヤモヤした。そもそもが遺伝子の話とか書く媒体じゃないんだろうけどさー。

科研費通ってますように...。

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