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AIと精神科

先週末、学会に参加した。久々のオンサイトでの参加 & 口頭発表だった。準備不足感が否めなかったが、それなりに満足のいく発表ができたと思う。
学会の中身とは全く関係ないが、とにかく会場が大きかった。ハイブリッド開催なのに2階席まであった。気になって調べてみたところ、「最大収容人数1300人」と書いてあった。武道館がこの10倍以上入ると考えると、売れてるアーティストってすごいところでライブやってんだなーと思った。「2階席ー!」。言ってみたかった。

精神科領域におけるAI研究の応用に関しての演題があった。精神科とAIと聞くと、SF好きとしてはPSYCHO-PATHのシビュラシステムやマイノリティ・リポートのプリコグのようなディストピア的想像をしてしまうが、認知症の早期発見や重症度判定に応用するとのことだった。
精神科領域の診察では、診断や重症度判定がどうしても属人的になる & 検査にものすごい時間と経験が必要であるため、専門医でもない限り認知症の重症度まで含めて診断するのは難しく、AIを使って早期発見・早期支援を行いたいらしい。早期発見できれば、薬に頼らずとも症状を緩和・予防できることもあるそうだ。

発表の中で、典型的な認知症の患者の特徴として「あれ・これなどの指示語が多い」「文脈が不明瞭なことがある」「話が噛み合わない」などが挙げられると説明していた。話を聞きながら母の顔が浮かんだ。AI的には認知症と判断される可能性大だが、僕が物心ついた頃から安定してフシギな人であるように思う。小説家の朝井リョウが、「運転免許証を財布に入りやすい形にセルフカットしていた母が検問で引っかかった」というエピソードをエッセイの中で書いていたが、世の中の母親は概してフシギな人であることが多いのではないだろうか。安定してフシギな人と医学的介入が必要な人との境界線をAIに判断させるのはまだまだ難しい問題のように感じる。ちなみにこの精神科AIは、慶應の医学部が頑張っているらしい。精子ドナーもそうだけど慶應医学部の行動力の高さには驚かされる。

もう一つ個人的に面白いと思ったのは、チップ付き薬剤の話。錠剤に小さなチップがついていて、胃酸と反応すると微弱な電波を発信する。この電波をスマホでキャッチして投薬管理に使うことで、認知症の患者さんの飲み忘れ防止に役立つとのこと。ナイスアイデア。アメリカでは既にFDA承認されているらしいが、国内では未承認らしく、統合失調症の患者さんに対する治験を行っているそうだ。
治験の目的としては、”チップ付き”の薬剤を飲むことで精神的に不安定にならないかの確認とのこと。統合失調症の患者さんの典型的症状として、「考えを読まれている」「電波による遠隔攻撃を受けている」「ずっと悪口を囁かれている」などの被害妄想を抱くことが挙げられるので、"チップ付き”の薬剤によって被害妄想が加速することがどれくらいの頻度と程度で起こるかを確認するのである。統合失調症症例への適応はともかく、個人的には近未来感 & 実益がありそうなので積極的に進めていってほしいと思った。

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