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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2022年10月の記事一覧

書記の読書記録#678『暗号理論と楕円曲線』

辻井 重男,笠原 正雄(編著)『暗号理論と楕円曲線』のレビュー レビュー楕円暗号に関する2008年最先端を集めた本で,特に4〜6章は難易度が高く,ヴェイユ予想を要するレベルになるまでは他で修行が必要。 もくじ1章 数学と暗号―その交流の軌跡 2章 暗号の基盤となる数学 3章 楕円曲線上の公開鍵暗号 4章 超楕円曲線上の公開鍵暗号 5章 ヴェイユペアリングとその暗号への応用 6章 多変数公開鍵暗号とグレブナ基底 7章 誤り訂正符号に基づく暗号 8章 暗号プロトコルの安全性

書記の読書記録#677『グラフ理論 (Springer‐Verlag GTMシリーズ)』

R. ディーステル(訳:根上 生也,太田克弘)『グラフ理論 (Springer‐Verlag GTMシリーズ)』のレビュー レビュー根気さえあれば要求される前知識は少ないが,R.J. ウィルソン『グラフ理論入門』が基礎理論に終始していたのに対し,本書の第6章以降は応用に特化した印象。 もくじ第1章 基本用語  1.1 グラフ  1.2 頂点の次数  1.3 道と閉路  1.4 連結度  1.5 木と林  1.6 二部グラフ  1.7 縮約とマイナー  1.8 オイラー周遊

書記の読書記録#676『ロボティクス概論 (ロボティクスシリーズ 1)』

有本 卓『ロボティクス概論 (ロボティクスシリーズ 1)』のレビュー レビューロボットが実社会にどう役に立つか,人間の代替としてのロボットの実現と課題について簡単にまとめられている。 もくじ1. ロボットの歴史とロボティクス誕生 1.1 ロボットの歴史  1.1.1 ロボットのコンセプト  1.1.2 産業用ロボットマニピュレータとその技術の源流 1.2 ロボティクスの誕生  1.2.1 ロボティクスとは  1.2.2 ロボットシステム技術  1.2.3 ロボットの知能化

書記の読書記録#675『複素解析と流体力学』

今井 功『複素解析と流体力学』のレビュー レビュー前半は複素解析の基本事項のまとめ(解析接続まで),後半は流体力学への応用といった構成で,複素解析の教科書としての側面が強い。両分野をある程度学習した後に本書で関係性を補完する使い方が良さそう。 もくじ第1部 正則関数 第1章 複素数 1 複素数 2 定義と記号 3 複素数の幾何学的表示 4 直線の方程式 5 円の方程式 6 平面上の質点の運動 7 複素数の積とベクトルの積 8 2次元のグリーン公式の複素形

書記の読書記録#674『統計学が最強の学問である』

『統計学が最強の学問である』のレビュー レビュー本書のレベル感は「第1章+終章」とそれ以外で二分され,前者は教養,後者は専門への導入と割り切って読むと期待通りになる。著者の専門が生物統計学ということもあり,一般化線形モデルや実験計画法になると早口になる傾向。 もくじはじめに 第1章 なぜ統計学が最強の学問なのか? 01 統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた H・G・ウェルズの予言/あみだくじの必勝法/統計学を制する者が世界を制する 02 統計学は最善最

書記の読書記録#673『楕円曲線論入門』

J. H. シルヴァーマン,J. テイト『楕円曲線論入門』のレビュー レビューディアファントス方程式から出てくる楕円曲線は代数幾何において興味深い材料である。入門書とはいえ,2章以降では群論,4章以降では体論やガロア理論の知識が前提。 もくじ序章 第1章 幾何と算術 第2章 有限位数の点 第3章 有理点のなす群 第4章 有限体上の3次曲線 第5章 3次曲線上の整点 第6章 虚数乗法 付録A 射影幾何解説 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#672『現代ロシア文学入門』

ポスト・ソヴィエト文学研究会『現代ロシア文学入門』のレビュー レビュー編者:ポスト・ソヴィエト文学研究会 岩本和久、鴻野わか菜、越野剛、高柳聡子、松下隆志(五十音順)からなる現代ロシア(語)文学研究会。二〇二〇年より活動。 主に21世紀以降のロシア文学について多角度からの接近を試みている。最近のロシア文学を追えてないなら本書を読んでおけば十分だろう。 もくじ序 作家インタビュー 聞き手:奈倉有里 リュドミラ・ウリツカヤ ドミトリー・ブィコフ 小説 オリガ・スラヴニコ

書記の読書記録#671『射影幾何学の考え方 (数学のかんどころ 19)』

西山 享『射影幾何学の考え方 (数学のかんどころ 19)』のレビュー レビューほとんどが初等的な内容であるが,それでも十分に射影幾何学の便利さを知ることができる。射影幾何学は代数幾何学に必須の分野で,まず本書で確認しておくのがよい。 もくじ第1章 プロローグ 1.1 平面上の直線 1.2 2次の行列式 1.3 3次の行列式 1.4 空間内の平面 1.5 空間内の直線 第2章 射影の考え方 2.1 平行光線による射影 2.2 点光源による射影 2.3 円錐曲線 2.4 無

書記の読書記録#670『加群十話―代数学入門 (すうがくぶっくす)』

堀田 良之『加群十話―代数学入門 (すうがくぶっくす)』のレビュー レビューひょうきんな文章ながらも,加群をもとに代数学を見直すには必須の本。線形代数や表現論,微分方程式との関連もわかるようになる。 もくじ1. 加群と剰余  1.1 代数とは何だったか?  1.2 可換環=可換代数  1.3 公理の縮小―加群  1.4 巡回群  1.5 “余り”の群=剰余群  1.6 剰余群の一般的なつくり方  1.7 同値類 2. 環づくし  2.1 準同型など  2.2 S加群  2

書記の読書記録#669『流体力学 (物理テキストシリーズ 9)』

『流体力学 (物理テキストシリーズ 9)』のレビュー レビュー流体力学の理論についてのコンパクトな教科書で,中級者へのステップアップには必須だろう。 もくじ序言 まえがき 第Ⅰ部 完全流体の力学 第1章 流体力学の基礎方程式   §1 流れを表わす量   §2 運動の調べ方   §3 オイラーの連続方程式と運動方程式   §4 状態方程式   §5 ラグランジュの連続方程式と運動方程式   §6 境界条件   §7 不連続面   §8 流線と流れのみ

書記の読書記録#668『流体力学―シンプルにすれば「流れ」がわかる (専門基礎ライブラリー)』

金原 粲『流体力学―シンプルにすれば「流れ」がわかる (専門基礎ライブラリー)』のレビュー レビューどちらかといえば工学的応用に寄った流体力学の教科書。入門レベルとして流体力学の概念を知るには良い。 もくじ第1章 流体と流れの特製  1.1 流体力学と流体の性質  1.2 流体の圧縮性と表面張力  1.3 流れのとらえ方  演習問題 第2章 静止流体の力学  2.1 力,応力,圧力  2.2 マノメ―タ  2.3 全圧力と圧力中心  2.4 浮力と浮揚体の安定性  演習

書記の読書記録#667『ロボットと解析力学 (ロボティクスシリーズ 10)』

有本 卓,田原 健二『ロボットと解析力学 (ロボティクスシリーズ 10)』のレビュー レビューロボット工学に寄せた内容は7章と9章にあり,解析力学の基礎とリーマン幾何学への接続にもなる。ある程度の基礎概念を知っている人なら,ロボットと無関係でも使いやすいかもしれない。 もくじ1. ニュートンの法則 1.1 座標系と位置ベクトル 1.2 速度と加速度 1.3 ニュートンの運動の法則 章末問題 2. 質点系の運動 2.1 質点の運動の軌跡 2.2 運動量保存則 2.3 角運

書記の読書記録#666『Pythonではじめるベイズ機械学習入門』

森賀 新,木田 悠歩,須山 敦志『Pythonではじめるベイズ機械学習入門』のレビュー レビュー扱っている範囲は須山『機械学習スタートアップシリーズ ベイズ推論による機械学習入門』に近く,PyMC3,Pyro,NumPyro,TFP,GPyTorchを用いた実装に特化した教科書。 以前はMartin『Pythonによるベイズ統計モデリング: PyMCでのデータ分析実践ガイド』を用いていたが,古いところもある。本書も賞味期限は長くはないだろうが,当分はこれをメインに学習する

書記の読書記録#665『文化のなかの西洋音楽史』

ポール グリフィス(訳:小野寺 粛)『文化のなかの西洋音楽史』のレビュー レビュー特に現代音楽を専門とする著者(他に『現代音楽小史―ドビュッシーからブーレーズまで』『現代音楽 1945年以降の前衛』など)による音楽評論,周辺の文化や作曲家同士の関係などが一本の糸に繋がっている。グラウト/パリスカと並行して読むのも良い。 もくじ日本語版監修者まえがき 序章 先史時代 第一章 全き時 1.バビロニア人からフランク族へ 第二章 測られる時 1100―1400 2.トルバド