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書記の読書記録まとめ

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今までに読んだ本についてのレビュー。 ブクログ:https://booklog.jp/users/9512a62a15b04973
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2021年12月の記事一覧

書記の読書記録#358『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』

ポール・セン(訳:水谷淳)『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』のレビュー レビューカルノーからベッケンシュタイン・ホーキンスにわたる熱力学の歴史についての啓蒙本。熱力学や統計力学を学習し始める人におすすめ。 邦題が残念なことになっているが,原題は『アインシュタインの冷蔵庫』を意味しており,(重要なテーマの1つではあるが)これをそのまま載せても大抵の人には訳が分からなかっただろうから,落とし所が難しい。 もくじ第Ⅰ部 エネルギーとエントロピーの発見 第1章 イギリス旅行――蒸

書記の読書記録#357『やさしい原理からはいるタンパク質科学実験法1 タンパク質をつくる 抽出・精製と合成』

『やさしい原理からはいるタンパク質科学実験法1 タンパク質をつくる 抽出・精製と合成』のレビュー レビュータンパク質に関する実験についてのレシピで,原理についても簡単に説明されている。 もくじ1章 タンパク質の分離と精製 2章 タンパク質の定量・電気泳動と同定 3章 組換えタンパク質のデザインと発現 4章 膜タンパク質の可溶化と調製 5章 タンパク質の無細胞合成 6章 タンパク質の化学合成 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#356『新版 入門医療統計学』

森實 敏夫『新版 入門医療統計学』のレビュー レビュー医療現場での実用のための教科書で,理論の説明薄めでRでの実装例が多く盛り込まれている。特に第1章(診断の良し悪し,オッズ比,ベイジアンネットワーク,ROC曲線),第9章(臨床判断,決定木モデル,期待効用)あたりは基礎統計学ではカバーできないため,本書での学習もアリだろう。 もくじ第1章 診断と医学統計 第2章 医療データの見方とまとめ方 第3章 検定と分散分析 第4章 相関と回帰 第5章 生存分析 第6章 重

書記の読書記録#355『始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎』

渡邉義浩『始皇帝 中華統一の思想 『キングダム』で解く中国大陸の謎』のレビュー レビュー全体的に記述が簡略化され過ぎており,出典が明記されていないのでどこまで信頼できるかわからない。とはいえ,『キングダム』のシーンの効果性など,ライト層への販売戦略としては妥当だろう。 もくじ第1章 『キングダム』前夜 ~春秋戦国時代はなぜ550年も続いたのか? 第2章 法家と秦の大改革 第3章 中華統一と空前の権力 第4章 始皇帝はなぜ儒家を憎んだのか 第5章 理想のゆくえ 本記事のも

書記の読書記録#354『マークス臨床生化学』

横溝 岳彦『マークス臨床生化学』のレビュー レビュー生化学といえば,ヴォートやレーニンジャーなどが教養課程に用いられているそうだ。ただしこれらは応用科目の医学科では大きすぎるかもしれない。 本書は教養課程と医学科の中間くらいをターゲットにしている感じ。 参考: 生化学の教科書は何が良いか もくじI編 エネルギー源代謝 1章 代謝のエネルギー源と食物の構成要素 2章 摂食(吸収)状態 3章 絶食 II編 生化学の化学的・生物学的基礎 4章 水,酸・塩基,緩衝

書記の読書記録#353『ラテンアメリカ文学入門』

寺尾 隆吉『ラテンアメリカ文学入門』のレビュー レビューラテンアメリカ文学というとマジックリアリズムしか知らなかったのだが,本書でその前後の文脈が理解できる。ブームがある種の陳腐化を招くところはどこも同じだなと思いながら読み進めた。 もくじ第1章 リアリズム小説の隆盛―地方主義小説、メキシコ革命小説、告発の文学 第2章 小説の刷新に向かって―魔術的リアリズム、アルゼンチン幻想文学、メキシコ小説 第3章 ラテンアメリカ小説の世界進出―「ラテンアメリカ文学のブーム」のはじまり

書記の読書記録#352『絶対覚えておきたい疾患別薬物相互作用』

藤村 昭夫(編著)『絶対覚えておきたい疾患別薬物相互作用』のレビュー レビュー『頻用薬の使い分け』や『類似薬の使い分け』と大体同じメンバーによるテキスト。 薬物相互作用について列挙するだけでなく,そのエビデンスについての記述があるのが本書の特徴。 もくじⅠ 総論 1 はじめに 2 薬物動態学的相互作用 3 薬力学的相互作用 4 おわりに Ⅱ 各論 Ⅱ-1 高血圧 1 Ca拮抗薬×イトラコナゾール 2 Ca拮抗薬×リファンピシン 3 ベラパミル×メトプロロール 4 ACE

書記の読書記録#351『物語 ラテン・アメリカの歴史』

増田 義郎『物語ラテン・アメリカの歴史』のレビュー レビュー1998年出版,古代から戦後までのラテンアメリカの歴史について,世界史の教科書+αくらいの記述。 もくじプロローグ 新世界 1 古代アメリカ人の世界 2 侵入者 3 事業家としての征服者 4 イベロアメリカの成立 5 16世紀の変動 6 成熟する植民地社会 7 反乱の世紀 8 自由な空間を求めて 9 開かれた空間における独立と従属 10 20世紀のラテン・アメリカ 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#350『宗教の誕生: 宗教の起源・古代の宗教』

月本 昭男(編)『宗教の誕生: 宗教の起源・古代の宗教』のレビュー レビュー特に第1部が興味深い内容で,そもそもの根源として考えられるものをいっぺんに学べるのが良い。例えば日本文化において,祖先崇拝は馴染み深いだろうが,自然崇拝からはアニミズムが,祈祷からはシャマニズムが見られる。 もくじ第1部 宗教の起源(フェティシズム;アニミズム;トーテミズム;シャマニズム;祖先崇拝) 第2部 古代の宗教(メソポタミアの宗教;エジプトの宗教;イスラエルの宗教;インド・イランの宗教;ギ

書記の読書記録#349『またふたたびの道・砧をうつ女』

李 恢成『またふたたびの道・砧をうつ女』のレビュー 「戦後文学の現在形」収録作 レビュー『またふたたびの道』は第12回群像新人文学賞受賞作,『砧をうつ女』は第66回芥川賞受賞作(日本文壇初の外国人)。 いわゆる「在樺コリアン」としての壮絶な経験と,家族への心境が混ざり合った作品である。主に子供からの目線で語られており,様々な劣等感を育むこととなる。 本記事のもくじはこちら:

書記の読書記録#348『図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか』

『図解・天気予報入門 ゲリラ豪雨や巨大台風をどう予測するのか』のレビュー レビュー同著者『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』の姉妹本に相当し,こちらは天気予報への応用に軸を置いている。面白いのは後半の数値予報で,いわゆる数値計算についての平易な解説が含まれる。 もくじ前編・人による予報の時代──観測、気象の理解から予報へ 第1章 温暖化で強靱化する「台風」、 多発する「線状降水帯」 台風にかかわる気象の物理 台風の発生と発達 台風の進路予報  地球

書記の読書記録#347『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』

古川 武彦・大木 勇人『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』のレビュー レビュー2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎は,二酸化炭素の温暖化影響を予測したことで知られる。 気象学と一言にいっても,本書の副題に「雲・雨・気温・風・天気図」とあるように扱う範囲は広い。そのガイドとして本書は優れていると思う。必要な前提知識はそれなりにあるが,特に熱力学の知識が活きてくる。 もくじ1章 雲のしくみ 2章 雨と雪のしくみ 3章 気温のしくみ 4章 風

書記の読書記録#346『図像で読み解くギリシア神話』

T.H. カーペンター(訳:眞方 陽子)『図像で読み解くギリシア神話』のレビュー レビュー356点もの図版からギリシア神話の伝承を読み解く本。特にBC7世紀から4世紀のアルカイック時代とクラシック時代の美術について。 もくじ第1章 序 第2章 実例による具体的な解説 第3章 神々の肖像 第4章 支配権を握るオリュンポスの神々 第5章 ペルセウスとベレロボーン 第6章 ヘーラクレース 第7章 テーセウス 第8章 アルゴナウタイ;カリュドーンの猪狩 第9章 トロイア戦争 第1

書記の読書記録#345『統計的多重比較の方法』

永田 靖,吉田 道弘『統計的多重比較の方法』のレビュー レビュー少し古い本だが,統計ソフトで多重比較をする機会の多い人は辞書がわりに持っておくと良い。本書では多重比較の必要性の説明から,各手法の理論の簡潔な説明,具体例が書かれている。 もくじ第1章 イントロダクション 第2章 多重比較法はなぜ必要か 第3章 多重比較法の考え方 第4章 基本的な手法 第5章 ノンパラメトリック法 第6章 ボンフェローニ法と関連する方法 第7章 ステップダウン法 第8章 多重比較法における検