すずきけい

イタリアのミラノで、ライターをして暮らしています。

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  • 日本にいないエッセイストクラブ

    • 100本

    世界各国に暮らすもの書きたちによるリレーエッセイです。ベトナム、イタリア、アルゼンチン、インドネシア、イスラエル、ドイツ、カタール、マレーシア、など。どうぞよろしくお願いします。

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ロシアスーパーで缶詰のタラコを見つけた話

先日ツイッターに投稿したタラコの話、自分にしては珍しくバズってスマホがピコンピコン鳴り続いています。めっちゃリツイートされてるんですが、その中にはタラコ以外の美味しい魚卵の話や、意外な食べ方の話もちらほら。 せっかくなので、ちょっと情報をまとめてみました。というか、正直に言うと自分のための覚え書きです。 ちなみに最初の段落は「ご飯に乗せたらおいしかった」という話を無駄につらつらと書いています。手っ取り早く魚卵情報を収集したい方は「タラコ以外にもいろんな『イクラ』があるらし

    • 真夜中に、空から揚げ油が降ってきた話を書いてもいいですか

      しまった、タイトルだけで書きたいことを全部書いてしまった。 「うん、よくわかった」という方は、このままそっとページを閉じていただいてもいいと思う。 * 残ってくれた方に、もう少しだけ詳細を書きたい。 事件は深夜1時に起こった。早く寝なきゃと思いながらソファに寝転んで、ダラダラとYouTubeを見ていた時だった。 突然、上階から悲鳴が聞こえた。 「うぉお」と「うわぁ」の中間のような、男の悲鳴だった。 続いて、けたたましい打撃音が、今度は下階から鳴り響いた。金属をでた

      • トカゲが来たら、家の中がそわそわし始めた

        とうとうトカゲをお迎えしてしまった。 前回のお話はこちら 学校帰りの娘を車で迎えに行き、そのままトカゲショップに直行した。店に入るなり、妻は「あのトカゲについて、いろいろ聞きたくて来た。もう飼育ケージを置くスペースは確保したんだけど」と店のオヤジに宣言し、めちゃくちゃ苦笑されていた。 もう完全に飼う気だ。テンションが上りすぎておかしくなっている。 とはいえ、生き物なので、あまり無責任に飼い始めるわけにもいかない。それなりに寿命は長いし(10〜15年くらいらしい)日本に

        • 大根が手に入った日は、おでん

          最近ミラノはめっきり寒くなってきた。 朝の気温は8度。もうコートが必要な季節だし、気の早いダウン姿の人もちらほら。つい最近まで日中は20度だったから、加減が分からずつい着込みすぎてしまう日もある。 ミラノは霧の街である。冬の朝は、窓を開けたら一面真っ白の景色が広がる日も多い。そういう日は寒さだけじゃなく、湿度も相まって骨の芯まで冷える。 寒い日はやっぱり体が温まるものがいい。幸いなことに、ミラノでは数年ほど前からスーパーにも大根や白菜が並ぶようになった。これまで中華系の

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          パネットーネ発見

          スーパーでふと見上げたら、頭上にパネットーネが並んでいた。 最近は日本でもよく見かけるようになったパネットーネ。言わずと知れた、イタリアのクリスマスケーキだ。私達が想像するような「ケーキ」とはちょっと違って、中身はドライフルーツの入ったパンといった感じ。ふわふわして独特の風味がある。 これがスーパーに並び始めると「そろそろクリスマス」といった感じがする、イタリアの風物詩でもある。と言っても早いところでは10月くらいから並び始めるのだけど。 今年はスーパーでも見かけること

          パネットーネ発見

          トカゲを迎える

          我が家では今、トカゲがブームだ。そもそもの発端はこの日記にある。 ざっくりまとめると、よく泊まるホテル(ちょっと違うが)の犬が可愛すぎて、我が家でも飼いたくなった、という話。 だけど妻と娘と話し合った結果、散歩や世話の手間を考えるとちょっと難しいんじゃないかという結論になった。そもそも我が家は手狭で引越しを考えているのに、現時点で犬まで増えるのは現実的ではない。残念だけど仕方ない。そうやって、一度は話が完結したはずだった。 しかし、抑圧された欲望はそのまま放置して昇華さ

          トカゲを迎える

          冬支度はいつも後回し

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第10回目のテーマは「服」。5人目はイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください! * ようやく衣替えをした。 うちでは冬物の衣類は段ボールに詰めて、天井近くにある収納スペースに保管している。床から2メートル以上高い場所にある、広さ2畳ほどの、そして中の高さは1

          冬支度はいつも後回し

          ちゃらけた夏の夜

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第9回目のテーマは「夜」。2人目はイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください! * イタリアの夜は遅い。 夜が始まるのも遅ければ、ふけるのも遅い。 イタリアはヨーロッパの中では南に位置する国だけど、実のところ緯度はかなり高い。ミラノやヴェネツィアの緯度は日本

          ちゃらけた夏の夜

          愛おしい小麦粉の塊

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第8回目のテーマは「日本の恋しいもの」。最終ランナーとしてイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください! * 「日本の恋しいもの」ってなんだろう。 自慢じゃないけど、そんなものいくらでもある。さんまの塩焼き、あじのお寿司、ぶりかま、焼きたらこ、とんかつ、宇治金時

          愛おしい小麦粉の塊

          我が家はそろそろ限界ッス

          * 最近、なんだか家が手狭になってきた。 理由はもうわかっている。娘がだんだん大きくなって、自分のスペースが必要になってきたからだ。ミラノ市内の、でも10分も歩けば別のコムーネ(市)にたどり着くギリギリの場所にある我が家は、2部屋の小さなアパートで、妻と娘と3人で住むにはちょっと狭い。 8年前にここに引っ越して来たときは夫婦2人だったので十分、むしろモノが少なかったので広く感じたほどだった。でも暮らしているうちにモノが増えて手狭になってきた。ついでに娘まで増えた。 モ

          我が家はそろそろ限界ッス

          炎上した車のすぐ隣で、彼は「早くタバコを出せ」と言った

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第6回目のテーマは「冒険」。最終ランナーとしてイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください! * 今回のリレーエッセイのテーマは「冒険」である。とはいえ普段暮らしている中で、目的のために自分の身を危険に晒すことなんてそうそうない。都市の中に住んでいる我々は、猛獣に

          炎上した車のすぐ隣で、彼は「早くタバコを出せ」と言った

          犬が欲しくて仕方なくなると、僕らは車を1時間半走らせる

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第5回目のテーマは「思い出の写真」。9人目はイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください。 * 僕たちには行きつけのアグリツーリズモがある。「行きつけの」って言うとちょっと気取った感じがするけど、要は気にいってそこに何度も通っている。 アグリツーリズモというのは

          犬が欲しくて仕方なくなると、僕らは車を1時間半走らせる

          貧乏人の食事

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第4回目のテーマは「お腹が空く話」。8人目はイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください。 * 世界中に散らばる物書きたちのエッセイ、今回のテーマは「お腹が空く話」である。食に関してはわりかし恵まれた国イタリア。ネタは何でもあるだろうとタカをくくっていたら、書く段

          貧乏人の食事

          たぶん一生捨てられない、ボロボロのリュック

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第3回目のテーマは「思い出の一品」。9人目の最終走者として、イタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください。 * 断捨離がどうも苦手だ。 モノを減らすことに憧れる気持ちはある。もう何年も履いていない靴とか、アフリカ旅行の前に衝動買いしたジャンベとか、そういう不要な

          たぶん一生捨てられない、ボロボロのリュック

          1年間一緒に住んだ、ちょっと冴えない男の話

          この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第2回目のテーマは「忘れられない人」。8人目はイタリアのスズキケイから。文末に「前回走者のエッセイの感想」と「次の走者の紹介」があります。 過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください。 * イタリアに渡って、初めて住んだ家はシェアハウスだった。 3部屋プラス共有のリビング、それから狭いキッチンと、2つのバスルーム。ローマのはずれにある小高い丘の上にあって

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          マスクをつけて、紙吹雪をまこう

          コロナウイルスのせいで、ミラノの雰囲気はどこか暗い。 街はいつも通りで、歩いている人もいるし店も開いてるけど、やっぱり少しピリピリしたものを感じる。人とすれ違うときも「お前は違うよね、大丈夫だよね」って、そんなピリッとしたやりとりをしているような気がする(自分がアジア人だからじゃなくて、一般論って意味です)。自分は今のところコロナウイルスが原因で差別的な扱いを受けたことはないけど、やっぱり街中を歩くときは身構えてしまう。 イタリアでは21日以降、感染者が爆発的に増えた。5

          マスクをつけて、紙吹雪をまこう