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冬支度はいつも後回し

この記事は、世界各国の物書きによるリレーエッセイ企画「日本にいないエッセイストクラブ」への寄稿です。第10回目のテーマは「服」。5人目はイタリア在住・すずきけいがお届けします。文末に前回走者の紹介と、次回以降のお知らせがあります。

過去のラインナップは随時まとめてあるマガジンをご覧ください!

ようやく衣替えをした。

うちでは冬物の衣類は段ボールに詰めて、天井近くにある収納スペースに保管している。床から2メートル以上高い場所にある、広さ2畳ほどの、そして中の高さは1メートルほどの奇妙な収納スペースだ。

この家に引っ越したばかりの頃は、自分の身長よりもはるかに高い場所にある、しかもまあまあ広いこのスペースにめちゃくちゃ戸惑った。なんでこんな高い場所に空間があるんだろう。脚立の一番上の段までのぼって、ようやく中がのぞけるくらいの高さだ。

ここを「収納」とか言われても、荷物が出しにくいったらありゃしない。

だけどイタリアのいろいろな家を見ていくうち、この天井近くの収納はわりと普通のスタイルだということに気がついた。扉付きで部屋のようになっているもの、空間を区切らずロフトのようになっているものなどいろんな形があるが、とにかく天井付近に備え付けの収納がある家は多い。

個人的には、日本の押し入れのほうが使いやすいのになとは思う。

奥行きがあって広々としているし、何より背の高さにあるので荷物が出し入れしやすい。でもそんな便利な押し入れがある家は見たことがない。イタリアの家はもともと石造りなので、壁をくり抜くという発想がそもそもないのかもしれない。

天井近くの収納は高い場所にあって、しかも広さは2畳ほどもある。

1メートル65センチしかない自分が奥にある荷物に手をのばすためには、脚立から収納スペースに飛び乗らなければいけない。正直、毎回ちょっと怖い。

そうやって苦労して飛び乗った収納スペースには、90リットルのスーツケースやら9キロもあるテントやらバーベキューグリルやらプリンターの空箱やらがぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、その一角に目指すべき冬服の詰まった段ボールがある。

服の詰まった段ボール……味気ないったらありゃしない。もう8年も住んでいるのに、未だに引っ越しの荷解きが終わっていないみたいだ。せめて衣装ケースにでも入れて収納したい。

だけど服の詰まった衣装ケースをかついで脚立を上って、2メートル以上もある収納スペースに収める自信はちょっとない。結局、ダンボールに詰めるほうが使いやすくて、かろうじて出し入れできる大きさと重さに収まる。

脚立に上って収納スペースの荷物ををかき分けて、冬服が入っているダンボールをよいしょと下に下ろす。この恐ろしく面倒な作業のせいで、我が家の衣替えはついつい後回しになってしまう。

ちなみに春にも同じことが起こる。我が家はいろいろと限界だ。

前回走者、がぅちゃん(さん?)の記事はこちら。

書き出しの「GUが好きだ。」にもう全肯定です。安いしそこそこしっかりしてるし、あんなに良いものは世界を探してもそうそうない。イタリアにはGUはないけど最近ユニクロが初めてオープンして、開店当初はちょっとしたブームになってました。かつて日本でベネトンがブームになってたのと同じ現象だなと思っています。

そして、次回のバトンを渡すのはベルリン酒場探検隊の久保田由希さん。前回の記事はこちら。

最近は厳しくなってきたという酒場のお話。イタリアで言うとバールみたいなものかなと、いつも勝手に脳内変換して読んでいます。バールには朝からビール飲んでるおじいちゃんとか、ルール不明のカードゲームに興じているおじさん集団とかいるんですが、最近は(特にミラノでは)見かけなくなったような気がします。なんというかバールらしさがなくなるようで、ちょっとさみしくありますね。

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