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さびしんぼうの旗

さびしいときは、人のせなかに旗が立つ。
つまようじくらいの長さの棒に
モンシロチョウの羽根のような白い旗。
それが
さびしい人のせなかに
ぴこん、と立っていのが見える。
かがんだせなかはアルマジロの鎧。
硬いせなかに
さびしんぼうの旗は
申し訳なさそうに立つ。

旗にはその人の
丸っこい文字で小さく
さびしいよう、
と書いてある。
その旗が立ったとき
わたしは
そうかさびしいのか、と思って
その人におっかなびっくり声をかけてみる。
するとその人は
めんどくさそうに
なんだよ、と言う。
なんだよってなんだよ
と背中をむけて去ろうとすると
その人はわたしの上着のすそを
クッとにぎっていたりする。
さびしんぼうは
案外あまのじゃくだ。

さびしんぼうの旗が
風もないのにせなかでひらひらしてるのが
気になってしかたがないから
いっそのこと抜いてしまおうかと
ひっぱったら
痛い!
とその人はいった。
さびしんぼうは
その人のからだの一部なんだね。

さびしんぼうの旗は
まわりの人にはなかなか見えない。
でもきっとその人は
簡単にはわかってほしくなんかないのだろう。
わたしは見えないふりをして
なんとなく隣にすわり
なんとなく星をみる。
さびしんぼうの旗が
すーっとひっこむのをみとどけるまで
蚊にさされてもここにいる。


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鈴懸ねいろ
文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。