見出し画像

長男のリュックと芍薬と夫婦で夜散歩

5月18日。木曜日。

朝からいいお天気。窓を開けて吸いこんだ朝の空気はどこか少し熱気を持っているようで、今日も暑い一日になりそうな予感がした。気になってスマホで一日の天気を確認してみたら、なんと30度近くまで気温が上がるとのことだった。昨日午後はなかなか暑かったけど、今日はもっとすごそうだ。子どもたちも今日は半袖短パンがいいというので、慌てて別室にしまってあった夏服をいくつか引っ張り出してきた。

去年着ていた夏服を一年ぶりに着せてみたら、案の定成長していた子どもたちには小さくなっている服もあって、これはいくつか服を買い足さなければ、と思う。我が家は幸い三歳違いの同性兄弟なので、長男の汚れていない服はいい感じに次男にお下がりとして譲れるものもあり、それはありがたい。今日はとりあえず家にある服でなんとかアレンジさせて、いつも通り朝ご飯を食べさせて学校へと見送った。

その後掃除洗濯を済ませて、自分の朝ご飯を食べた。昨日久々に食べたブルーベリージャムトーストが美味しかったので、今日も同じものにした。食べ終わったあとはあまりゆっくりせず早速身支度を始める。今日は駅前までいろいろと買い物に出かける予定だった。

今日の買い物で特に大事なのが、長男の自然教室用のリュックサックだ。小6長男は来週に二泊の自然教室を控えていて、事前に持ち物リストを確認して必要なものは大体揃えていたつもりだったのに、一番肝心な荷物を入れるための大きなリュックを準備することがすっかり頭から抜けていたのだ。慌ててネットで注文しようかとも思ったけれど、できれば実物を見てサイズ感など確認したかったので、ひとまず最寄り駅前の量販店を見に行ってみることにした。

今週に入ってからはずっと体調不良で家にいたので、外に出ることが自体が久しぶりで、外出には少し気合いが必要だった。しかも私が出かける時間帯には、朝に感じた外の熱気がますます増してきていたので、気をつけないとまた熱中症にでもなってしまいそうなので用心しなければ。夏らしい陽気に、腕や首周りに日焼け止めを塗り、日傘も持っていくことにする。なんだか外出の準備の工程が夏らしくなってきたなぁ、なんて思う。

いざ外に出てみたら、確かに暑さもあったけれど、久々に爽やかな空気を吸いながらゆっくり駅まで歩く道のりはとても気持ちが良かった。駅前に到着するなり、まずは今日一番気になっている長男のリュックを子ども用品売り場にチェックしにいくことにした。

子どものカバン類を置いているコーナーはそこまで広くはなかったけれど、それこそ我が家のように自然教室などのシーズン近いこともあってかそこそこ種類は豊富で、その中でも荷物の量と長男の体型などを考慮して、ちょうど良さそうな大きさのリュックがあったので、そのままそこで購入することにした。ネットで見ていたリュックの実物も置いてあったのだけど、実際は思っていた以上に大きく、比較的小柄な長男が背負うにはだいぶアンバランスだったので、ネットで買ってしまわなくて良かった、とホッとした。

一番の懸案事項だったリュックの買い物が無事済ませられて安心したところで、そのますぐ近くのユニクロに向かう。お目当ては長男のショートパンツと夏用のパジャマ。ちょうどいいものを見つけられて、短時間で購入を決められた。特にパジャマのほうはちょうど限定価格になっていてラッキーだった。

そこから近くのGUにも寄り、今度は自分の夏用のトップスを見て回った。実は私も今朝暑い気温にあわてて自分の夏服を引っ張り出してきたのだけど、普段使いのトップスを昨年結構処分してしまっていたので、気楽に着られるトップスを何枚か買い足したかったのだ。自分の希望するトップスの形や色などを事前に決めてからお店に行ったので、その条件に合致するものをいくつか見つけ、試着もしてみて、早々に購入するものを決めた。かわいいリブ素材のTシャツを色違いで二枚と、クロップ丈の白いTシャツ一枚。どちらもデニムを合わせて試着してみたら可愛くて、いい買い物ができて嬉しかった。

その後図書館に寄って本を何冊か返却し、逆に予約していた本が何冊か到着していたのでそれを受けとった。さらに適当にエッセイ本や小説の棚を巡り、気になった本を追加で借りる。なんだかんだで手にとっていたら、最終的に七冊も借りていた。買い物用に持参していたエコバッグが本でいっぱいになってしまった。でもこれから読む本がたくさん手元にあるのは幸せな気持ちになる。

図書館を出てからは駅前の花屋さんに立ち寄った。暑い気候に合わせて、普段はお店の外に陳列されているお花もすべて店内に下げられていた。どのお花をお迎えしようかとお店の中に足を踏み入れると、そこまで広くはない店内の半分は様々な種類の芍薬がメインで飾られていた。季節的に今が芍薬の季節のピークらしく、「芍薬フェア」というポップも設置されている。あぁ、芍薬。今日はやっぱり芍薬にしようかな。濃いピンク、薄いピンク、白、ピンクの縞模様が入ったようなクリーム色の芍薬を目にして心がときめく。

芍薬といえば、実はつい一週間ほど前にも、私は別の花屋さんで芍薬を三本買ったのだった。そのときはまだ固くて丸い蕾の状態だった芍薬。ちょうど去年の今頃に同じように蕾の状態の芍薬を購入してうまくお花を咲かせるに至ったので、今年もそんな感じで数日後にはきれいな芍薬の花にお目にかかれるだろうと、家でウキウキ手入れをしていた。しかし、何日経っても蕾が開いたり膨らむ様子がなく、自分なりに適度に花の表面の蜜を拭いて蕾をほぐしたり、茎を少しカットしたり水を替えたりケアをしてみたつもりなのだけど(しまいには花びらを少し手で広げてみたりもした)、結局大して変化はなく、ほぼ蕾の状態のまま三本の芍薬は枯れていってしまった。

それはそれで、その蕾自体も飾っていたらかわいかったし、そもそも花はいつでもこちらの理想通りに形を変えたり保ったりできるわけではないことはわかっている。だから花が開かなかったのは花のせいでも誰のせいでもないのだけど、それでも、やっぱりちょっと残念な気持ちは拭えず、そして、やっぱりあの迫力さえ感じる大きな芍薬の花を今年も季節が終わる前に一度は見たいなと、ひっそり芍薬への未練を抱えていた私だった。

そんなところに出会った大量の芍薬。やっぱり今日は他のお花ではなく、一度は見たかった芍薬の花にリベンジしよう、と芍薬フェアを前に思う。となれば、今度は多くある種類の中からどれをお迎えしようかとじっくり店内を見回す。ちょうどお店の人は他のお客さんの接客をしていたので、私は気兼ねなくどの芍薬を迎えるかをゆっくり吟味することができた。

結局、淡いピンクの芍薬と、赤紫に近い濃いピンクの芍薬の二本を購入することにした。その後お店の人に丁寧に対応いただき、実は最近購入した芍薬をうまく咲かせることができなくて残念だった、という話をしたら、「もし確実にお花が咲くように安心してご購入されたければ、やはり固い蕾の状態より、お花が既に咲き始めている状態のものがおすすめですよー」と気さくにアドバイスをいただき、少し開き始めた花を選んだ。

念願の芍薬を抱えながら、次は近くのお惣菜屋さんに寄って、子どもたちの好物のじゃがいもコロッケを夕食のおかず用に購入した。そのまま帰宅途中に八百屋さんにも立ち寄り、きのことトマトを買って帰った。久々に外出しての買い物だったので、色々と立ち寄りたい場所や買いたいものが多くて、買い物を終える頃には大量の荷物で両手が塞がって、暑い中歩いて帰るのはなかなか大変だった。それでも、今日行きたかった場所にすべて行けて、買いたいものも全部買えたので、すごく達成感のある帰り道だった。

気温がますます上がってきたお昼近い時間に帰宅したら、しばらく歩いてきて体が火照ってきていたこともあって、家の中がすごく暑く感じて、速攻窓を開けた。けれど、その窓の外から入ってくる外気もすっかり熱を帯びていて、窓を開けたほうが暑いような気もした。これは、下手すると冷房を入れてもいいレベルの暑さではないだろうかと思うくらい。それでも、まだ五月なのに突然冷房を入れる気にはなれず、ひとまず窓を開けておいてみる。

荷物を置いたら、まずは何より先に芍薬の花を花瓶に生ける。再び我が家に芍薬がやってきてくれて嬉しい。その後、お腹が空いたので、簡単にチャーハンを作ることにした。てっきり冷蔵庫にあると思っていた玉ねぎがなくて戸惑いつつ、結局レタス、えのき、ツナ缶を使った和風チャーハンにした。在宅勤務の夫の分も作ったのだけど、夫は仕事が取り込み中のようだったので、食卓で一緒に食べるのではなく、お皿に盛ったチャーハンを作業部屋に持っていってあげた。私は読みかけの本の続きを読みながらチャーハンを美味しくいただいた。

その後子どもたちが帰宅してあまりに暑いというのでせめて扇風機を出そうかと何度から扇風機を出してきたら、その時点になって、そういえば昨年の季節の終わりに扇風機が変な音を出すようになってほぼ故障状態だったことを思い出した。結局扇風機は使えず、窓を閉めて外の熱気を遮る形で、今日はみんなで暑さに耐えることになった。

夕方になって陽が落ちると、一気に気温も下がったようだった。恐る恐る窓を開けたら爽やかな涼しい風が舞いこんできて、その快適さに思わず心が和んだ。ふと、この爽やかな風の中でお散歩でもしたら気持ちよさそうだなぁなんて思う。そういえば、サランラップを切らしていて、このままだと今日炊いたご飯を冷凍保存する際に使用するラップがなくてピンチだったことを、同時に思い出す。今日せっかく買い物に行ったのに肝心のラップを買い忘れたのだ。ラップはどうしても欲しいから、近くの薬局に散歩がてら買いに行ってこようか、と涼しい風に当たりながら
思いつく。

さらに、ふと夫も誘ってみようかと思いついて、夫にも声をかけてみた。
「外がすごく気持ちよさそうで、ちょうどラップも切らしているから後で散歩がてら買いに行ってこようかと思うのだけど、一緒に行く?」

すると一仕事終えた夫も、「おぉ、確かにこの時間の散歩は気持ちよさそうだね」と乗り気な様子だった。結局、子どもたちがご飯とお風呂を済ませてひと段落したあたりで、さっと二人で散歩に行こうかということになった。

夜八時頃に外に出ると、日中のじんわり汗が滲むような暑さとは打って変わって、体全体が涼しい空気に包まれるようでとても心地が良かった。それでも少し日中の名残りの湿気も潜んでいるようで、上着なしの半袖でちょうどいいくらい。歩きながら頬や腕を撫でる優しいそよ風が日中火照った体を冷ましてくれるようだった。

夫とああだこうだ他愛もない話をしながら夜道をゆっくり進んで、近くのスーパーに向かった。夜の散歩はどこか非日常の空間に足を踏み入れたかのような感覚があり、ちょっと特別な感じがする。その非日常を夫と共有していることがなんだか嬉しい。スーパーでは一番の目当てのラップはもちろん、安くなっていたりんごとゴールドキウイも購入した。ちょうど家にフルーツが切れていたので良かった。惣菜コーナーの唐揚げがまだ出来立てて美味しそうだったので、それも買った。

「夜のお散歩いいね」「気持ちよかったね」と夫と口々に言い合いながら帰宅すると、子どもたちは子どもたちで夜のお留守番というちょっとした非日常を楽しんでいたのか、テンション高く私たちを玄関先で出迎えてくれた。私と夫は買ってきた唐揚げやら家にあった漬物やらと一緒に炊き立てのご飯をちょこちょこ食べた。揚げたての唐揚げは外はカリカリ中はジューシーでとても美味しかった。夜のお散歩で買った唐揚げも、なんだか特別な感じがする。

朝から晩まで、どの時間もそれぞれ濃厚で充実していた一日。どこが一番よかったか、とか決められない。それってとってもありがたく、嬉しいことだ。今日も楽しい一日だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?