「よくわからない言葉や発音しにくい単語を伝令などで使う者はこれを罰する」と、スヴォーロフ は書いています。特に後者が重要であるのは、やはり多民族に共通の言葉での意思疎通ということなどが要因であったと推察できます。 と、書いているのは、つい先日に差し歯が2本抜け、この状態で喫茶店などに入り、ややこしい名前の飲み物を注文したら、数店で数度も聞き返されました。現代でもこれ、ましてや当時は歯が2本どころかスカスカだった人も多かったであろうな、とテーブルで考え、ふと、wやhのような音
作家の稲垣足穂の晩年、友人が訪ねてみると、彼はあまり衛生的ではない、虱の湧いた床の中で本をじっくりと読んでいて、友人が「誰の本か」と尋ねたら、彼は「自分の本だ。文章が美しい」と言ったといいます。 芭蕉の「蚤虱馬の尿する枕もと」という俳句から一種の安堵や人間の生活という解釈を見出した方もおられるように、足穂はナルシシズムを超えて晩年、自らの足跡を見つめ直すことに安らぎを感じていたと思えばこの話は本当にうらやましいものであると考えます。 さて、私の枕もとを見れば、付箋紙のたくさん
かなり昔の話ですが『スヴォーロフ』(”Суворов” ,1941)という映画を観る機会がありました。主演の俳優さんの風貌が「まさしくスヴォーロフ将軍!」という方で、特に「部下に慕われて笑顔を見せる様」が印象的でした。 作品内ではパーヴェルを中心とした宮廷とスヴォーロフ両者にとっての「常識」のずれが衣服や調度品など細部にも見える、いつかまた観たい映画のひとつです。 2022/07/20
「普段から靴ばかり履いています」というのも当たり前なんですが、休みの日になりますと下駄を出しては履いて近所を散ら歩くのが好きです。 そういえば私の育った土地ではよく「ぽっくり下駄」というものを見かけましたが、いざ越した先では「こっぽり」という名前になるそうです。他にも呼び方はあると思いますが、ぽっくりもこっぽりもどちらものどやかな音ですね。 いつもありがとうございます。のんびりとした週末をお過ごしください。 2022/07/09
酷暑、猛暑など言葉は多々ありますが、本当に暑い日が続いております。あちこちの友人たちも挨拶がわりに「暑い」と。四、五百年前に書かれた『鹿苑日録』などにも夏の暑さについて、毎日「炎暑」などという単語が散ら散らと出て参ります。そんな時のお寺の食事なども「うどんを食べた」など。少し微笑ましいですね。 何はともあれ暑中お見舞い申し上げます。 2022/06/30
何の変哲もない日常のことなのに、大変に色気のある文章を書いておられる方がたまにおられます。文章に限らず、味わいのある立ち振る舞いというか、まさにそれぞれですが、私はそれを「よい香りのする空気を一枚まとっている」と言うことが多いです。年齢などによらず、ああいうものは降ってきたように「ふわり」と本人の知らぬ間に身についているものなんだな、と思えば、自分にもいつか降ってくるかもしれないな、と。それくらい呑気な心持ちでよい一日をお過ごしください。 バスを待ちながら 2022/06/2
つい先日に外国の友人から、 「この”Nagori”という言葉はどう訳せばいいか」 と尋ねられ、さて、どうしたらわかりやすいかと考えてみましたが、じっくりと「名残り」という言葉に向かい合って考えてみることも滅多となかったことに気がつきました。 「春の名残り」などと言いますが、「思い出」や「余韻」に近く、もっと感覚的な言葉。一言で説明できないから考えている間は楽しくもありました。 日記 2022/04/20
縁の深い人々からデジタル媒体で写真や近況が送られてくるが、双方に手紙や小包を送ることが困難になり久しい。手書きの文字には力があると思っていたが、皮肉にもこういう形で本当の意味がわかったようなと考えてみたら、ふと、放蕩息子とその父の気持ちを少し汲み取れるような気持ちになる。 疲れや心配が教えてくれることもある。願わくば、これが勘違いであって欲しくはない。
この報告書(原文訳部分は4ページ)を翻訳するのに際し、最も困難であったことは当時の背景を考慮しつつ口語体を読解したこともありますが、部分部分の単語を精査することがとても難しい作業でした。一例としては、 “генера́л-анше́ф”(=General Anshefa) は訳者が考察するに、 “général en chef” というフランス語の発音に起因する単語と考えたとき、これを日本語ないしは他言語に訳することは本当に困難でした。そのように、言葉の意味や役割を
仕事と結石の治療で長らく何も書けませんでしたが、二、三日中にスヴォーロフの報告書を上げたいと思います。1775年の飼料問題についてのものですが、やはり相変わらずの口述筆記でした。が、内容は理路整然としています(写真は「まだ雪の残る昨年四月のアルプス」です)
私見。ゆっくり翻訳をやってますと、スヴォーロフの人柄もそこまで無礼ではないが、言葉や文法が無骨であるため誤解も多いと感じますし、むしろ気骨が伝わってきます。が、意見書や上奏書には気遣いと感情の両方が見え、訳もまたより難解、読み解くのは更に楽しいですね(2021/05/04)