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#小説
百文字こばなし「めぐる雲」
うろこ雲、魚のうろこのようだから。
ひつじ雲、羊の毛並みのようだから。
入道雲、入道のようだから。
入道はお坊さんの妖怪のことらしい。仏門を極めた夏の妖怪は、秋空で魚になったり羊になったり。これも輪廻転生?
百文字こばなし「プレゼント」
どれにしようかな。なにが喜ばれるかな。
嬉々とした心でハンズを闊歩する私。
あれもこれも魅力的に見えたり、どれもなんか違う気がしてきたり。
どれにしようかな天の神様の言う通り…、これぇ?神様マジで言ってる?
百文字こばなし「形容詞」
首相「我が国は形容詞に頼りすぎている現状にあります。形容詞による簡潔な表現の濫用を控え国民の語彙力向上を図るため、『形容詞禁止法』を発布致します。」
国民一同「「うるさい!!」」
喧しいサイレンが鳴った。
百文字こばなし「えがお」
笑顔が苦手です。特にカメラを向けられて作る笑顔。
そんなに楽しくなくても、すごく楽しくても、なんか、こわばる。
口角を上げる、って何気に難しい。
どれだけ硬くても、笑おうとしてるってことを酌んでくれるなら。
百文字こばなし「全部嘘です」
全部嘘です
花粉のひどさも肌荒れも、出来ない自分も出来るあの子も、傷の痛みも慣れる怖さも、理不尽な大人も不安を抱える子供も、空から降ってきた爆弾も消えた命も、全部嘘です。
全部、エイプリルフールの嘘です。
百文字こばなし「電車」
ガタン、ゴトン
ガタン、ゴトン
人のまばらな車両に漂うぼんやり暖かい空気。
うとうと船を漕ぐ中学生、スマホをいじるお兄さん、文庫をめくるおばあさん。
色んな人の今日が見えてくる。
私は、どう見えているのだろう。
百文字こばなし「新生活」
慣れないメイクをしてみる。
ジャケットを羽織ってみる。
うーん、違和感。
見かけはなんかそれっぽいのに。
運び込んだばかりのドレッサーの前でポーズを取り違和感の所以を探す。
死んだ魚の目が私を見つめていた。
百文字こばなし「はらり」
随分食いしん坊な目白だ。
嘴を真っ黄色に染めて桜の蜜を吸っている。
そんなに美味しいなら、ここはひとつ私も。
あれ、うまく吸えない。
いっそ花ごと落としてしまえ。
「見て見て、ママ。雀が桜を落としてくれたよ。」