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あいつ教員辞めたってよ#3 教員は世間知らず?

よく「学校の先生は世間知らず」と言われます。
学校社会という場の世間知しかない,という批判的な意味で「世間知らず」と言われるのだろうと思います。
これは本当にそう思う。
ただしそれは,よくも,悪くも,世間知らずなのだと感じています。


一般的には,社会の常識を知らない,という意味で使われる「教員は世間知らず」という言葉だけれど,働き方が世間からズレていることをよくわかっていない,という面でも世間知らずだと感じます。

私が心理の資格を取るために実習に行った時に驚いたことのひとつが
専門職としての他職種と教員との働き方の違い,です。

病院でカンファレンスに参加して驚きました。
どの専門職もきちんと専門の仕事を行い,カンファレンスでは堂々と意見を述べます。専門職としてのプライドを感じました。
互いに専門性を持ち合わせ,その仕事を全うする。

私はこの経験で初めて,「教員の専門性とはなんだろう」ときちんと考えるようになりました。
心理職は専門性ということを大事に考えています。その辺りは大きな違いだと思います。



教員の業務に関して。
教員は”なんでも”やります。
電話受付や発注,会計業務,企画運営,環境整備(清掃や掲示),子どもたち集団と個別のアセスメントと対応,お客様対応にあたる意見処理と対応etcetc

例えば,部活動の仕事であれば,企画運営はもちろん,会計業務では発注と支払いと帳簿作成,大会運営となれば所属学校外の外部組織の役員も兼ねます。
『教科』『学校運営』『部活動』それぞれにこれらの業務が発生します。

病院や一般的な企業であれば,規模にもよりますが「会計」「清掃」あたりは完全に切り離されているところが多いのではないでしょうか。
例えば病院で,治療費や入院費の滞納があったときに,医師や看護師が直接患者さんにお電話を差し上げるケースはかなり少ないのではないかと思いますが,教員の場合にはそういったお金に関する保護者への連絡に関しても教員が行うことの方が多いように感じています。
業務が多岐に亘りすぎているために,肝心な授業準備ができない,という逆転現象が起きています。

つまり
教員の専門性とは何か?
専門職としての働き方とはどういうことなのか?

世間知らずな教員は”なんでもやる”仕事,マルチタスクが当たり前になりすぎていて,ここがわかっていないように感じました。

高校の教育の現場では,生徒が行うことに関しては全て”教育”なので,その全てに教員が関与することになります。
つまり,枠組みが曖昧なのだと思います。
やろうと思ったらいくらでもできる。
でも,その働き方は互いの他職種の専門性を尊重する世間一般の働き方とは違うように感じます。
世の中の要請をなんでも引き受けてしまう。どんどん業務が拡大していく。
そしてつまりのところ,自分達”教育の専門性をも蔑ろにしてしまっている”ように私自身は感じました。


もうひとつは時間的な働き方に関して。

お昼休みや土日の部活動ひとつとっても,教員は時間枠のない,曖昧な働き方をしています。

担任を持っていると,土日に関わらずあるいは24時間ずっとどこかで緊張していました。
今は個人情報の観点から教員の自宅に直接電話がかかってくる,ということは無くなりましたが,少し前までは直接自宅や携帯に電話がかかってくることもありました。

自宅で自分の子どもたちとのんびり過ごしている休日。
電話がかかってくると,子どもたちに「お仕事の電話だから,しーーっ」と指を立てて,自分の子どもが心配そうに耳をそば立てている側で保護者の電話対応をすることも何度もありました。

あるいは家族で出かける約束をしていた休日に,生徒のことで呼び出しがあって学校に駆けつけるということも何度もありました。

こういった時間的な拘束(精神的な拘束と言ってもいいと思うのですが)が大きいのも教員の働き方を大変にしていますが,これも世間一般の働き方からは逸脱している気がします。
このような24時間教員&滅私奉公こそが教員の働き方である!と強く信じている人たちが教員の中にはまだ多くいることも事実です。

でも,その枠の緩さは,生徒とのバウンダリーのなさ,感覚の緩さにも繋がりかねない。。。



私が心理の資格を学校の外で生かそうと考えたのには,教員が”何でも引き受ける”のは違う,と思ったのもひとつの理由です。
心理職でもない教員ができることには限界がある。
心理資格を持つ私のやり方が教員としての心理支援のロールモデルになると,教員がますます苦しくなるだけです。



教員が世間知らず,ということはひとつの本当に大きな問題かなと私としては感じていました。
教員のなり手不足や教員の不祥事,という問題を考える時にも,この視点は大事かなと思います。
それについては,また今度書いてみたいと思います。




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