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「アメトーーク!」風なパネルディスカッション

2022年3月に「東京2020オリンピック・パラリンピック」関連の活動をふりかえり、新たなリスタートを切るためのイベントがありました。
私は、基調講演とパネルディスカッションのコーディネーターを担いました。

パネルディスカッションのコーディネーターは、これまでにも色々とやってきましたが、今回ゲストの数を聞いてびっくり!
その数「11人」です。さて、あなただったらどうしますか?

↑ イベントのリーフレット

そこで、考えたのが「アメトーーク!風パネルディスカッション」です。
「アメトーーク!(テレビ朝日 木曜 夜11:15~)」は、大人気なお笑いトークバラエティ番組です。「○○芸人」などの企画で、年に数回スペシャル番組としてゴールデンタイムに放送しているので、おそらくほとんどの方が知っていることと思います。
元雨上がり決死隊の蛍原徹さんMCをつとめ、その脇にはツッコミを入れたり、MCをサポートしてくれるゲスト(芸人・タレント)がいて、右側には多くの芸人がひな壇に座ってレベルの高いトークを織りなしている。
そして、カメラの手前にはチーフプロデューサーの加地倫三さんがいる。
これは、まるで複雑に絡み合うオーケストラだと思い、分析しながら観ることにしました。

そこで手に取ったのがチーフプロデューサー加地倫三さんが2012年に執筆された『たくらむ技術(新潮社)』。

尊敬の念を込めて一部紹介させていただきます。
(たくさんの学びが詰まった本ですので、ぜひご一読ください)

◆この本は作り手側の「企み」について書いたもの
◆芸人さんはすごい才能の持ち主。構成力、間、トーン、言葉のチョイス・・・全てが違う
◆しかし、それぞれの役割や向き・不向きがある
◆「アメトーーク!」はチームプレイ。投手ばかり、ホームランバッターばかりではなりたたない
◆出演者全体が活きることが大事 などなど

「アメトーーク!」大好きだから、加地さんの言葉がたくさん染み込んで理解できます。ありがたや。

さて、今回集まったパネルディスカッション出演者11名は、パフォーマーの二人を除いて、芸人とは違う一般的な「素人」なわけです。単純に11人並べば楽しく、有意義なトークになるかというと、決してそうではない。めちゃくちゃになるリスク、トークが弾まないリスクの方がはるかに高いです。時間制限もあります。

まずは、場づくりから。

私はこれまで「アメトーーク」を見続けて、出演者の役割・ポジショニングを分析してきました。これを一般のパネルディスカッションへの応用につなげるため、以下のように出演者に伝えました。なお、品川庄司の品川祐さん(尊敬!)がひな壇芸人の分析をしていて、それも参考にしてパネルディスカッションへの応用としました。

ゲストの役割

❶ 自由形

進行役が「学びになる話」を引き出す際に、活躍するゲストです。パネルディスカッションの一般的なパネラーをイメージしてください。
よく見る一般的なパネラーは❷裏回し型や❸ガヤ型の役割をほとんどしません。
「一般の聴講者が共感できるような学びのあるお話」を一番求められる役割となります。
エピソードや写真・動画、物、動きなどを交えて、効果的にお話ししてください。

❷ 裏回し型

「裏回し」とは、「進行役(MC/コーディネーター)が振った話題について、ゲスト同士で回して盛り上げる」という技術を指します。
進行役や他のゲストに話題を振ったり、ツッコミを入れたり、質問をしてみたりと、トークイベントに慣れていなかったり緊張している他のゲストが話しやすくなるような雰囲気作りをします。
進行役⇔登壇者Aさん、進行役⇔登壇者Bさん・・・という形式で、直接のやりとりの繰り返しになると面白味がなくなります。そのため、裏回し役は自然な進行が求められます。
進行役(MC/コーディネーター)の進行をスムーズに促して手助けも行ってください。

❸ ガヤ型

進行役や他のゲストが話をしたときに、場を盛り上げる役割を担います。
大きめのリアクション(相槌や笑い、拍手、立ち上がるなど)や「あぁ〜!」「へぇ〜!」「なるほど〜!」「いいですねぇ!」などと感嘆してみせることで、全体の一体感や楽しい雰囲気づくりを行います。
進行役や他のゲストが話した際に、会話に短く入ってきたり、ちょっと大きめの声でツッコミやヤジを入れたり、勇気を持って会話に介入してみてください。

・・・お伝えした結果、みなさん「ふむふむ」と。
なので、一回、「トークの場をリアルに作ってみましょう」と、舞台づくりをみんなで行ってみました。
そしたら、(僕も含めて)みんなでテンションが上がりました!!
「アメトーーク!」風のフォーメーションって、それだけでもとっても楽しくてワクワクして、気分が高揚します!これは大きなポイントです。
リハーサルを5分くらいしてみたら、それぞれがその役割を分かってくれて良い雰囲気 ♪

ゲストのポジショニング(フォーメーション)

上記の役割を考えたものの、それぞれの元々の個性・立場があります。無理やりにあてがうのは限界があります。
おそらく、ほとんどの人はパネルディスカッションのときに「❶自由形」になるはずです。
ですので、「❷裏回し型」「❸ガヤ型」をお願いできる個性・立場の方に役割を担っていただく形で調整しました。
結果、ポジショニング、フォーメーションはこうなりました。

ここで、加地倫三さん『たくらむ技術』をまた紹介させていただきます。
<「アメトーーク!」における基本フォーメーションについて(抜粋)>
◆まずは、その回の「核」となる人。多くの場合、そのテーマについてすごく詳しい人や、そのテーマを体現しているような人が、安定感のあるトークをしてくれる
◆さらに、その人をイジれる人。核になる人をからかったり、本筋ではないところでも笑いが取れたりできる人。
◆それ以外にも「かき回し役」のような人。とにかく大声で、その場を盛り上げたり、にぎやかにしてくれたりする人。
◆さらにそれとは別に独特の視点を持って話をする人もいると幅がぐっと広がる
◆出演者は、その回のテーマや役割分担、配分(バランス)などを考えて決める
◆こうしたバランスを考えたうえで、座る席をきめるのも非常に大切
◆「核になる人」はMCに一番近い最前列左端
◆その隣は「安定感」があり「イジれる人」
◆前列の右端は「かき回し役」
◆後列の左端や真ん中には「安定感抜群の人」
◆後列の右端は「大ボケ」の人の定位置
◆仲のいい人を隣同士にすることもあれば、あえて知らない同士を近くに置くこともある

・・・などなど、とても勉強になることがたくさん書かれています。

MCについて

加地倫三さんの著書『たくらむ技術』より紹介させていただきます。
◆「アメトーーク!」のMCの凄さの一つに「一歩引く」ことを嫌がらなかったという点がある
◆ゲストのトークがおもしろくなることを第一目標に置いている
◆ゲストがスベっているのも大好物。スベった笑いもイジってあげるので、現場は「スベってもかまわない」雰囲気になる。スベった芸人も気が楽になり、次にまた爆笑をとりにいく
◆とくかく芸人が好き。優しさがのびのびした「アメトーーク!」の空気を作っている

・・・大変勉強になります。

今回工夫した点・分かったこと

最後に、パネルディスカッションのプロデューサーかつMCとして私が工夫した点を紹介させていただきます。
◆舞台は、後列をなるべく高く設定しました。その方が顔も見え、話しやすいし、声も通ります。
◆前列は肘掛付きの椅子でゆったり座ってもらい、後列は丸椅子にしてカジュアル感を出しました。
◆MCのとなりに、MCサポートとして「裏回し」と「ガヤ」の役割の方を配置しました。パネルディスカッション全体のテーマを良く理解していたり、声の通る方を配置しました。
◆役割分担については、みんな意識してくれました。みんな楽しんでくれたと思います。
◆「アメトーーク!」では、編集によって字幕や音響が加わりますが、パネルディスカッションでは困難です。「アメトーーク!」でもテーマがかわるときに、画面いっぱいにテーマが掲載されます。そういった意味で、スクリーンを活用して、テーマを掲示して、そのテーマに沿ったことを話してもらいました。テーマは5つくらい用意して全体的な流れだけは全員に認識してもらいました。中身はそれぞれのフリーでお話ししてもらいました。
◆「アメトーーク!」ではVTRが流れることも多くあります。動画は難しかったので、写真をたくさん用意して、ゲストが話している間に関連する写真を1スライド1枚×複数枚用意して、ポチポチとパワポを送りました。
◆ストップウォッチのアプリで時間をカウントアップして、観客は見えないけどゲストが認識できる場所に、こそっと置きました。
◆ゲストの大学生の二人の緊張を和らげるため、また、前列の右端なので目立つ場所なので、「ミライトワ」「ソメイティ」のぬいぐるみを持ってもらいました。装飾的にも良かったです。
◆MCの蛍原さんがいつも持っている指し棒を用意しておけば良かったです。
◆返し側のモニターがあると、ゲストの目線が後ろを向かないので良かったです。
◆マイクが1人1本ずつあるorマイクなくても声がしっかり聞こえる会場だと良いです。
◆舞台の装飾はもっと盛れば良かったです。できれば、そのテーマに関係のある装飾が良いと思います。

・・・その他にもいろいろと細かい点がありますが、いったんここまで。

↑ スクリーンでテーマを掲載
↑ 雰囲気づくりのためみんなになるべく着飾ってもらいました。

人数が多くても大成功!

制限時間がある中で大人数だと、必然的に一人が話す時間は短くなります。
ですが、キャッチボールを全体でたくさん行えると満足感がゲストも聴講者も高くなるものです。
MC役だけでなく、全員でプロレスをしているようなもの。
そんな感覚で楽しいパネルディスカッションをやっていきましょう。

なお、「アメトーーク!」はプロの芸人。それもオリンピック級のエースたちです。今回紹介したのは、あくまで素人としてのトークを最大限盛り上げる工夫としての方法になります。この点、ご注意をお願いいたします。

何人か集めた「形だけのパネルディスカッション」を聴講した経験は多くの方にあるかと思います。パネルディスカッションは工夫次第でもっとおもしろくなります。
これを読んだ皆様の何かしらのご参考になれば幸いです!

おわり

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