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檜山×「自然」×脱炭素

 未来の地球環境を守るべく推進するゼロカーボンの達成に欠かせない再生可能エネルギー。じゃあ、再生可能エネルギーを増やすために木々を伐採して太陽光パネルを設置して・・・。これって何か変じゃない?
 ということで今回は、再生可能エネルギーと私たちに様々な恵みを与えてくれる自然との関係についての話題です。


再生可能エネルギーの課題

 ゼロカーボン達成に欠かせない再生可能エネルギー。国において2021年に策定した「第6次エネルギー計画」では、再エネ比率を36%~38%(2021年度の再エネ比率は20.3%)の実現を目標に様々な施策が展開されています。私たちが暮らす北海道もその豊富な再エネポテンシャルを活かし、ゼロカーボン北海道の実現に向け取り組んでいます。
 その一方、再生可能エネルギーには様々な課題があります。系統容量の不足や適地の減少など様々ですが、メディア等でもよく取り上げられるのが「自然との共生」です。
 2012年のFIT(固定価格買取制度)開始以後、急速に太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの設置が増加した結果、災害の危険があり地域住民の安全を脅かすような太陽光パネルの設置や景観を乱すようなパネルの設置、管理が行き届いておらず放置されたパネルなども増えていきました。
 福島県福島市では「ノーモアメガソーラー宣言」を行い、災害の発生が危惧され、誇りである景観が損なわれるような山地への大規模太陽光発電の設置をこれ以上望まないことを宣言する事態にもなりました。また、北海道小樽市は、市内で計画された大規模陸上風力発電の設置に対し、自然環境や景観への影響から反対を表明し、事業計画は中止となりました。
 これ以外にも2030年代半ばには使用済み太陽光パネルが大量発生することも懸念され、環境のためにも適切にリユース・リサイクルできる体制構築も急がれます。

課題解決方法は?

 こうした状況に対し、様々な対策も取られています。皆さんも聞いたことがあるかもしれませんが、環境アセスメントもその一つです。日本では1997年に「環境影響評価法」が制定され、2011年に概ね現在の形に改正されました。環境アセスメントとは、道路や空港、そして発電所といった開発事業について、その内容を決める前の段階から、その開発行為が環境にどのような影響を及ぼすかについて、事業者自らが調査、予測、評価を行い、その過程や結果を公表して一般の方々や地方公共団体から意見を聴き、それらを踏まえて環境保全の観点からより良い事業計画を作り上げようという制度です。
 ただ、こうした制度があっても前述のような問題が発生しています。実際、環境アセスメントが必要となるのは一定規模以上の発電所に限られますし、住民意見を聴く行程を経ていても実際には地域住民の合意形成ができていないケースがあるなど課題もいくつか指摘されています。
 こうした中、国が新たに進めているのが「地域脱炭素促進事業」です。

「地域脱炭素促進事業」とは

 「地域脱炭素促進事業」とは、地球温暖化対策法に基づき地方公共団体が策定する「地方公共団体実行計画」を拡充し、円滑な合意形成を図りながら、適正に環境に配慮し、地域に貢献する再エネ事業の導入拡大を図る制度です。
 具体的には、地方公共団体が計画を策定するにあたり、地域のステークホルダーが参加する議論の場を設け、「対象となる区域」や地域として事業者に求める「地域の環境の保全のための取組」「地域経済及び社会の持続的な発展に資する取組」を決定し、計画に位置づけます。事業者はこの議論の場を活用し、合意形成を図りつつ、市町村の計画に適合するように再エネ事業計画を作成し、認定申請を行います。これを受けた市町村は、事業者に代わり国や都道府県に協議し、同意を得た上で、環境に適正に配慮し、地域に貢献する再エネ事業計画を認定する、という仕組みです。

環境省「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定・実施マニュアル(地域脱炭素促進事業編)」から抜粋

 市町村としては、再エネを促進する区域や環境配慮事項を対外的に示すことで適地に事業者を誘導しながら、地域共生型の再エネ導入を積極的にアピールできますし、事業者にとっても適地で事業実施することで未然にトラブルを回避でき、事業計画の認定を受けると環境アセスの一部を省略できるなど、スピーディな事業実施が可能となります。

檜山地域では・・・

檜山地域でもこの制度を上手く活用し、再エネとの地域共生を目指す自治体が出てきています。
せたな町では、全国的にも早い令和3年度から促進区域の設定を目指してゾーニングを開始しました。ゾーニングでは、再エネ設置を促進するエリアとステークホルダーへの十分な調整が必要なエリア、設置を望まないエリアを区分けし、マップに落とし込むという作業が行われます。外部有識者や地域のステークホルダーなど様々な立場からの意見をもらいながら、令和5年度にゾーニングマップを公開しました。また、江差町は今年度ゾーニングを開始し、年度内のゾーニングマップ完成を目指して取組を進めている最中です。
こうした取組により、檜山地域においても乱開発や地域との軋轢を生むような再エネ設置がなくなることが望まれます。

最後に

 先日、出張で釧路町を訪問した際、初めて釧路湿原を訪れました。非常に雄大で美しい景色に「これぞ北海道」と感動しました(生まれも育ちも北海道ですが)。こうした守るべき自然を子どもたちやその先の未来に残すためにも、自然や地域に寄り添った脱炭素を進めなければと再認識しました。

釧路湿原国立公園 細岡展望台からの景色

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