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好きの熱量を超えるPRノウハウは無いのかもしれない

マーケティングやPRのノウハウ本を漁り、あれも違う、これも違うと試行錯誤を続ける毎日。

ノウハウばかり気にしていると、つい忘れそうになることがあります。

それは、自分自身がそのものを好きという気持ち。

先日奈良県の吉野に行った際に、好きの熱量はあらゆるノウハウを超えるかもしれないと思った体験をご紹介します。

中井春風堂の中井さんの熱量

奈良県吉野の名物といえば、つるっともちっとした口当たりが特徴の“吉野葛”。

そんな吉野葛の有名店といえば、『中井春風堂』さん。

美味しい“吉野本葛”が食べられるのはもちろんですが、1番の魅力は店主の中井さんによる、解説付きの葛作りの実演が見られることです。

その実演を見て、私はハッとしました。

実演や解説の内のクオリティは然ることながら、何より店主中井さんの葛に対する愛情と、情熱に心が動かされたのです。

店主・中井さんの実演・解説

中井春風堂の葛の賞味期限は、作ってからわずか10分。

そのため、作るのは、注文を受けてから。

葛きりもしくは、葛もちを注文すると、席に案内される前に、店頭の実演スペースに案内されます。

そこで、中井さんの噺家さんのような流暢な説明と共に、葛作りの実演がスタート。

「作る時間と説明の時間が必要になるので、他のお店より時間をいただいてしまいますが、せっかく吉野で葛を食べるんだから、しっかり理解していただきたい。理解して食べた方が絶対に美味しい。」

葛の原料は、実は私たちが良く目にするような植物。その植物の根っこの部分からデンプンを抽出して、固めたものが葛、それを粉状にしたものが、葛粉。そんな葛粉を100%使用したものが「吉野本葛」、葛粉の他に、サツマイモなどのデンプンを混ぜてあるのが「吉野葛」。

「どちらがいいとかではなく、大事なのは、違いを知ること。違いを知ることで、本当に葛を味うことができるんです。」

こういった話を、お客さんとの対話を交えつつ、テンポ良く伝えてくれます。

葛の勉強の後は、いよいよ実演が始まります。

葛もちと葛きりに使う材料は、どちらも水と葛粉だけ。

つまり、葛もちと、葛きりの違いは、水の量の違いだけなんです。

水とは相性が悪いデンプンですが、熱湯とは相性が抜群。

水と混ぜた葛粉を熱湯に入れると、一気に熱湯を吸い取り、白かった葛が一瞬で透明になります。

「マジックではありませんよ~」と得意げな表情で語る中井さん。

透明な葛のあまりにも美しい様子に呆気に取られていると、「さて、賞味期限は10分です。どうぞお召し上がりください。」と促されます。

目の前で美しい葛もちが出来上がります。

「どうぞ葛の美味しさを味わうために、最初の一口は何もつけずに召し上がり下さい」

この一言がすっと入ってくるのは、葛の魅力や歴史、そして作る過程を知れたから。

それを知っていたからこそ、ひと口めを大切にいただきたい気持ちが強くなります。

そのまま、何も知らず食べていたら、きっとこのひと口めの美味しさは味わえていなかったでしょう。

何よりこの日で、“吉野本葛”自体のことを本当の意味で好きになれた気がしました。

PRの基本だけど...

実演で興味をもってもらう。そこで歴史やストーリーなどを正しく伝える。そして正しい知識の元味わってもらって好きになってもらう。

PRの手法としては、基本的なこと。

ただ、分かっていても、実際に行動して、継続することが一番難しかったりします。

それを毎日何度も継続している中井さんをまず尊敬。

そして、何より感動したのが、中井さん自身がすごく生き生きしていたこと。

「葛本来の美味しさと美しさを知ってもらいたい」

それは中井さん自身が、心の底から、葛本来の美味しさと美しさを知っていて、それを愛しているから。

話しているときの笑顔、お客さんとの対話、「おぉ!」と歓声があがったときの得意げな顔。

そういった所作から、中井さんの葛愛があふれ出ていました。

そしてその気持ちこそが、人々を惹き付け、魅力を伝えるエネルギーになっているのだなあと、しみじみ。

PRのお仕事をしていて、世に知ってもらうためにどうしたらいいかということを考えていると、戦略や手法に目が行って、忘れてしまいがちですが、“自分自身がそのものごとを好きでいること”の力強いパワーは、他の何にも変えられないことを、改めて実感いたしました。

誰かに好きになってもらうには、まず自分自身が好きでいること。

当たり前だけど、忘れがちなことなので、改めて大切にしていきたいです。

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