お母さんと電話の不思議。
子どもの頃、母に言ったことがある。
「お母さんさ~、電話だと声変わるよね。性格悪っ。」
なんで声が変わることが性格悪いのかは分からない。子どもの発言はいつだって矛盾だらけでその場の感情ありきだ。大方そのとき、母に頭にきていたことでもあったんだろう。
でも本当に不思議だった。わたしや妹に話しかける母の声と、電話先の顔もわからないだれか(母は分かっているのかもしれないけど。)に話しかける声は、まるで違っていたから。きっとわたしたちに話しかける声が、優しく丁寧で、流れるような声であれば、電話口の母の声が違ってもそこまで疑問に思わなかっただろう。しかし母に優しく語りかけられるのは電話の向こうの“誰か”であって、わたしたち姉妹と話す母の声は無造作で、適当で、感情的だった。
その答えは出ているようで、出ていない。
私は勝手にこの現象は日本中、いやもしくは世界中で起きていることだと踏んでいる。世界には私と同じようなことを疑問に思い育った大人がたくさんいて、いまもなおその疑問と向き合っている子どもたちがいると信じている。
いまわたしは大人になり、子どもの頃よりもたくさんの“電話の向こうのだれか”と話す機会がある。そしてそれは、子どもの頃同じように疑問を抱いた同志たちも同じだろう。
上手く理由は言い表せられない。
でも電話口で、声は、変わる。
わたしがこの疑問に対して、数十年の時を経て、得た答えである。
いま疑問を感じている子どもたちにも、数十年経てばここに行き着くだろう。
・・・・・待ってる。
本日も読んでいただきありがとうございます。
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