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「やさしい猫」中島京子(著)

入管制度、外国人労働者への差別について描かれた家族小説です。
以前から読みたかったのですが、読むと止まらなくなりそうで、やっと手に取ることが出来ました。読んでいて何度も目頭を熱くなりました。そして鳥肌がたった。
(以下、若干ネタバレありです)
シングルマザーの保育士ミユキさんとスリランカ出身で自動車整備士として働くクマさんが、被災地ボランティアで出会い、惹かれ合い、時間をかけて結婚をする物語です。
物語は、ミユキさんの一人娘マヤちゃんの目線で書かれているので、とても読みやすい。
前半は、小さくてささやかな母娘の家族に、クマさんが加わっていく穏やかな日常が細やかに描かれていて、私もすっかりクマさんファンになってしまいました。
ところが、中盤から物語の状況は一変、家族の小さな幸せは突然奪われてしまいます。ある日突然、出掛けたまま帰らなくなったクマさん。
「在留期限」「入管法違反」「収容」「退去強制」「裁判」…これまで聞いたこともなかった言葉に母娘は困惑します。
日本人だと、なかなか知ることのない日本の外国人の在留に関する制度についても物語の中に分かりやすく盛り込まれています。
純粋な家族の愛を疑われ、何度もびっくりするような辛い言葉を浴びせられ、窓もない施設に何カ月も収容されるクマさん。
収容は刑罰じゃない。それにも関わらず…
「どんな悪いことをした罰なんだろう。まるでミユキさんが外国人と結婚したから罰を受けているみたいだよ」というマヤちゃんの言葉が印象に残ります。
そしてもう一つ、物語で弁護士先生が日本の難民の受入についてを、避難所に例えて説明していたのが分かりやすく、心にずしんと響きました。
「日本の難民申請の認定率は1%未満。これは避難所に千人逃げてきても、そのうち997人を、あんたは家流されてないだろう、避難所の飯をただ食いしようとしてるんだろうって追い返しているようなものだよ。たっだら避難所ありますなんて言うなよなぁ」
勿論、外国人の中には、入国・在留させるべきではない「犯罪目的」の人がいることも事実でしょう。
何が正しく、何が間違っているのか判断するのは容易ではないと思います。
けれど、日本で働き、私たちの生活を支えてくれている外国人の方々は身近にもたくさんいらっしゃる。
私も含め日本人はもっと、この国で生活する外国人に関する制度、問題に関心を持たないといけないんじゃないかな、と思います。
この本は、高校生のマヤちゃんの目線で書かれていて、入管制度を知らない方にもおススメです!

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