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鉄筋コンクリートの恋② アクション

 向こうから歩いてくるあいつ。遠くてよく見えないけれど、感じが変わったことはわかる。
「先輩、一か月あっという間でしたよ。」
そういう彼は、髪形もすっきりして、別人のようになっている。
「おまえの印象がそこまで変わるとは、予想していなかったよ。」

 あいつは照れて、頭に手をやりながら、
 先輩が「他人の目から自分を見る」と言ったので、試しに
「すっきりする髪形、お任せで」と頼んだんです。

 「よく似合っていて、目が印象的に見えるな」
今まではマッシュヘアで(柔らかい 抜け感)を意識していたけれど、俺のは
単なる(だらしなさ)になっていたことが、わかりました。
 
 髪はまた伸びるし、モヒカンやスキンヘッドでなければOKと思って頼んだら、店の人も「すべてお任せ」と言われ、がぜん張り切ってカットしてくれました。

 それと、玄関に置きっぱなしになっていた宅配の段ボールを片付けたら、
同じようなスニーカーが5足並んでいるのに気が付きました。
1人しかいないのに。いくつか処分したら、玄関の隅に大きなほこり。
そうじをひさしぶりにしたら、心がすきっとしました。
 それからは、「どうせ、後から使うから」と出しっぱなしにしていたものを、すぐ片付けるようにしています。

 これまで「片付けるといいけど」と何度も思いながら、結局何もしない自分に嫌気がさし、自分のことが好きでなかったかもしれません。

「女性へのひとこと大作戦」は功を奏し、コンビニのアルバイトの女性から
笑顔で迎えられるようになりました。俺、気づいたんだけど、店員さんはマニュアル通りのあいさつだと思い、誰もあいさつを返さないんだ。だから俺がそれに応えるとそれだけで、喜ばれるんです。
 
 また商店街のお総菜屋さんの人から
「そこのイケメンのお兄さん」と呼びかけられたんですよ。
思わず後ろを振り返りましたけど、、、
 もう3年ぐらい、その店には行っているのに。髪形が変わりどうやら
別人と思われたようです。夕方遅いので、もう売れないかもしれないと
俺の好きなちくわのてんぷらをおまけしてくれました。
 生まれて初めてなんです。知らない人から明るく話しかけられ、親切にしてもらえたことが。

「彼女が欲しい」と始めた行動が日々の幸福感につながっています。
仕事でも鉄筋コンクリートの弱みを改善し、成長・拡大を考えていく
プロジェクトチームの一員になりました。

 だまって聞いていた先輩が言った。 
「行動を変えることになると、たいてい途中で挫折するのによく続けたな。
ほとんどの人が、できない自分を棚に上げ、言い訳をするのに」
 いいところに、『素直」と付け加えてくれ。

「おまえ、よくしゃべるようになって、びっくりだな。ところで、彼女はどんなタイプ?」
「定食屋でバイトをしているさばさばして、話しかけやすい感じの人です」

 それなら、一か月後デートに誘うときの参考に、お客さんと彼女の会話から趣味や興味があることをさりげなくリサーチしておくこと。
 またデートに行ったら会話に要注意!!
多くの女性や男性の一部にも当てはまる鉄則。それは
   
      話の内容ではなく、その時の感情を受け取る。
例えば、上司の急な頼み事で遅くまで仕事をした。
それには、大変だったね。でもよく頑張った。お疲れ様で十分。
 そんな場合に、具体的な対応について話すと理屈はわかるが、それを
冷たいと感じ、怒り心頭に発することもある。
女性側としては、こちらが心を開いて話しているのに、冷静に判断されると反発心が働くのだ。大事なのは(共感)だ。

 また、この前聞いた「俺、結構お金持ってます」はいただけない。それが一番のセールスポイントだろうけど。お金を本当に持っている人は言わない。お前が持っているのは同世代より僅かばかりだろう。だからチャリーンと音を出して自慢したくなる。
 「お金はないより、あるほうがいい。それには、ほとんどの人が
賛成だろう」
 「僕は、お金を持っています」という男と付合ったら(お金が目的の女)
というレッテルを張られると思い、女性は嫌だと拒絶する。

 これから話すことは万人に当てはまる心理だと思うので、
よく聞いてほしい。

「僕・私のことを信じて」と言う人は不実だ。もともと信頼できる人はこんな言葉を決して言わない。相手が自分を疑い始めているので、揺さぶるのだ。
好きな相手に「信じられないの?」と問われたら
「信じてる」と答えるだろう。だましのテクニックだな。
人が口にしていることは、逆だと考えてほぼ間違いない。

「先輩。こんなに人の心理が分かるならば、『男性による 男性のための
恋愛カウンセリング』を立ち上げませんか。男性同士だからこそプライドも
保って素直にアドバイスが受けられると思います。俺、明日からこの体験をブログに書きますね。」
 
「なあ、お前、話がそれているぞ。彼女に声をかけ、デートに誘うのがまずは
目標だろう?」

 「そうなんですが、先輩のアドバイスを聞いて行動していたら、自分はできるという根拠のない自信が湧いてきたもので」
と頭をかいた。

 頭の中で考えていたことが、実際に後輩の変容につながっていくのを目の当たりにし、通信教育でちゃんと心理学を学んでみようかと思い始めた。

 ありがとう。勇気づけられたのは、俺のほうかもしれない。

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