ひなちゃん(仮名)に救われる

月曜日の朝はなにかと忙しい。
バタバタと家を出る。ちゃんと鍵を閉めたか気になって戻ってしまう。
私のあるある。
ロスタイムを取り戻すべく急ぐ。
月曜日の午前中はやることがたくさんあって忙しーい!!
キャリーオーバーが出ているからお客さんも次々来る。

次はあれやって、これ書いてと、
『あっ、いらっしゃいませ〜』
アレ?なにしてたんだっけ?そうだそうだ、あれだった!その次はどっちを先にやるべきか…

ちょっと気持ちに余裕がなくなってきたそんなとき、30代かな?まだかな?くらいの男性客が来た。

『ジャンボってありますか?』

『すみません、今はジャンボやってないんですよ〜』

『なんで?』

(なんで、とは???)

『ジャンボは期間限定で、今は発売期間ではないんですよ。前回のはもう終わっていますので』

『終わり?なんで?』

(2度目のなんで。今言ったんだけどね…
トンチでも仕掛けてる?)

笑うでもなく、はにかむでもなく、当たり前のことのように、太々しく聞いてくるこの男性に、久しぶりにフツフツと「怒」が沸いてきた。
忙しいときってダメだなぁ。

『あのぉ、発売期間ではないからです。それ以外の理由はないんですけど…』

『は?』

(おいおいおい、は?じゃないでしょ)

『今は売ってないんですよ〜すみません』作り笑顔でそう言った。

キィーーーーーッ!お若い人よ、、なめんな!

ムッとしたら暑くなってきた。
冷房の温度を1度下げる。

あっという間に午後になり、ダースベーダーが来たかと思ったら、ひなちゃんだった。
ひなちゃん2度目のご来店。

絶対に日焼けをしたくない!と言っていたひなちゃんは、今日も真っ黒サンバイザーに、黒いレース生地のケープ(名称がわからない)のようなものを羽織っていた。今日も全身黒ずくめ。暑そう。

『こんにちはひなちゃんです!』

『こんにちは!いらっしゃいませ』

『今日は○○○の○○様のお誕生日だから来ました!』
(だ、誰様?聞き取れなかった。たぶん、推しのような人なのだろう)

ひなちゃんがサンバイザーを上げてくれた。
ら、、今日はサングラスもかけていた。

『ごめんなさいの。今日は太陽さんギラギラだから、ひなちゃん眩しいと目が痛くなっちゃいますの』

『大丈夫です!ありがとうございます!』

『ひなちゃんネコが大好きですの。だから今日はネコちゃんのスクラッチを買います!
お姉さんネコちゃん好きですか?』

『大好きです!!』

『じゃあひなちゃんのネコちゃんを見せてあげます!』

スマホで、昔飼っていたというネコちゃんを見せてくれた。

『ひなちゃんの彼氏も見せてあげる!』

『えっ?』

スマホではなく、カバンから手帳のようなものを出してくる。
その手帳を、パッと開いて、パッと閉じた。
舞台みたいなとこで、ギターを弾いている男の人が一瞬見えた。
相変わらず不思議な人だ。

濃いめのサングラスにまた私の顔が映っている。
(あっ、今日の私の眉毛、左右がイマイチだわ)
うっすらだが、ひなちゃんの目は分かる。

そしてまた、ひなちゃんがシールをくれた。
今回はピンクのウサギちゃんのシール。

『いいんですか?すみません、ありがとうございます』

『いいよ!バイバーイ!』

不思議なひなちゃんワールドに浸ったら、午前中の「怒」がスーーっと消えて、浄化されていくような、私の鬱屈していた気分は緩み、穏やかな気持ちにさえなってくる。
ヒーラーひなちゃん!?

ひなちゃんて、何してる人なんだろう?どんなとこに住んでるんだろう?なに食べてるんだろう…

そんなことを考えて、しばしぼんやりしてしまう。
不思議な人だ。

ひなちゃん、どうもありがとう!!

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