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今宵は満月🌕~艶楽と研之丞②   (短編連載小説)

ガラ、ガラガラ・・・

「ああ、やってますねえ、艶楽えんらく師匠」

まぁた、研之丞けんのすけだ。
今日も、興業は休みだったかい?

「ああ、随分、草稿、床に広げちまって・・・」
「はぁ・・・もうねえ、今となったら、どれがいいのかってねえ」

研之丞は、草稿の一枚を、手に取って、首を傾げる。

「ああ、アレ、昔、やってた、アレ、男衆おとこしゅに、人気のあったヤツ」
「え?」
「さし絵が好かったから、肌色つけてくれ、って、頼まれて・・・」
「ああっ、・・・んもう、ニヤニヤするんじゃあないよ」
「流石、艶楽だって、評判になって、へへへ、あの後、絵どころじゃなくなって・・・」

何か、言いやがったな。この馬鹿役者。
理由知り顔で、こっち、見るんじゃないよ。
今は昔の、それこそ、お伽噺。

五月蠅うるさいよ」
「まあ、まあ」

二ヤつきながら、研之丞は、草稿を少し集めて、綺麗に重ね、傍に寄せた。
所作は綺麗なんだが、何の事はない。座るとこ、見繕っただけで。

「ああいうのはね、当節、どうなんだか、と、思ってねえ」
「まあ、上からのお達しで、厳しくなってますからねえ」
「・・・ところで、何の用だい?」
「ああ、そうそう、なんで、一昨日、十三夜に団子って?」

そんなこと、聞きに来たのかい?暇人が。

「今宵は、満月ですぜ」
「ありがたいことだねえ。月明りがしっかりしてくれりゃあ、こそ泥もやりにくい。安心だねえ」
「晴れたらですけど、・・・で、団子は?」

なんだろうね、嬉しそうにして。
やっぱり、馬鹿なんだねえ。研之丞は。

「うーん、一昨日、食べたからね」
「そんなもんですかい・・・」
「それだけ?・・・ケンさん、そんなこと、聞きに来たのかい?」
「まあ・・・筆の進み具合もね、見に来たんですけどね」
「・・・ああ、だったら、あの、あれ」
「はい?」
「桝田屋のおいなりさん」
「あ、次は桝田屋ね、はいはい、いってきます」

研之丞は、二つ返事で飛び出していったけど・・・

要は、ネタ繰りだ。
もう、旧いんじゃねえのかな?
これは、もう、要らないか・・・

ビリビリビリ・・・

はぁ、・・・旧い草稿の一覧は、破り捨てた。

千部振舞にて、氏神様に参拝

なあ~んて、壁に達筆、張り付けたけどさ。
そこまで、できた試しもねぇんだからね。・・・あはは。

ぐ~っ・・・

あれぇ・・・まあ、どんな時でも腹は減る・・・
まあ、いっか。
おいなりさん、頂いてからにしようかね


みとぎやの小説・連載中 今宵は満月~艶楽と研之丞 第二話

お読み頂き、ありがとうございます。

今夜こそ、満月なのですが。
(初回、投稿日のことです。ちなみに、12/23は新月です)
ちなみに写真は、今夜の満月、みとぎやリアルの家付近にて。
下手糞写真で、すみません💦

艶楽師匠は、旧いものを捨てて、
お願い事というか、目標を書いて
壁に貼っているようですね。

「作品が、千部刷って売れたら、氏神様にお礼参りします」

昔、流行ったジャンルが、どうも怪しかったらしいです。
それで、気に入り(スポンサー)がついたとか、つかなかったとか。
研之丞は、当時の、華やかなりし頃の師匠に戻ってほしいと
思っている節もあるのですが・・・
さて、どうなることやら・・・

このお話は、こちらから、纏め読みできます。
よろしかったら、お立ち寄りください。


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