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艶楽師匠の徒然なる儘・艶楽と研之丞+諸国漫遊記篇✒

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創作家・御伽屋艶楽は、日常から、いよいよ、旅に出ることに。 役者の研之丞や、ちょっと好い仲の療養所の庵麝先生などと過ごす中、 かつての恋人から頼まれた約束を思い出す。それを果たす… もっと読む
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今宵は満月             ~艶楽師匠と打ち合わせをしました

みとぎやの創作裏話です。 久しぶりに『お話を練る』タイムが成立しました。 これは、長くなるかもしれない。長編になりそうな予感ですね。 昨晩、みとぎやの方に、艶楽師匠が下りてきました。 艶「よいしょっと、ああ、ごめんなさいよ。ああ、すまないねえ、ケンさんじゃなくってさあ」 み「あ、艶楽さん、わざわざ、来て頂いて。やる気を出してきたんだそうで」 艶「何、言ってんだい? あんたが、ちゃんとしてくれれば、あたしは、いつも、やる気満々なんだけどねえ」 み「それは、そうかもしれないで

あ、また、これ・・・💦艶楽と研之丞①       (短編連載小説)

ドンドン、ドンドン・・・ ・・・うーん、誰だい? 大きな音で、戸を叩く奴は? 「師匠、艶楽師匠!・・・ああ、もう、入りますよ」 ガラ、ガラ、ガラリ・・・ 「あ、やっぱ、開くじゃねえか、不用心な、相変わらず・・・」 「ふわぁ・・・もう、なんだい、朝っぱらから」 「朝っぱらじゃねえですよ、もう、お天道様は真上、お昼間ですから」 「ああ、ケンさんかい」 「ケンさんかい、じゃないですよ、昨日、本屋と約束したじゃないですか」 「・・・は?・・・何の事だい?」 「黒墨の所為にして

今宵は満月🌕~艶楽と研之丞②   (短編連載小説)

ガラ、ガラガラ・・・ 「ああ、やってますねえ、艶楽師匠」 まぁた、研之丞だ。 今日も、興業は休みだったかい? 「ああ、随分、草稿、床に広げちまって・・・」 「はぁ・・・もうねえ、今となったら、どれがいいのかってねえ」 研之丞は、草稿の一枚を、手に取って、首を傾げる。 「ああ、アレ、昔、やってた、アレ、男衆に、人気のあったヤツ」 「え?」 「さし絵が好かったから、肌色つけてくれ、って、頼まれて・・・」 「ああっ、・・・んもう、ニヤニヤするんじゃあないよ」 「流石、艶楽

研之丞の仕込み~艶楽と研之丞③ (短編連載小説)

まぁ、なんていうんですかね、 師匠は描かなくなるんですよ。 気に入りの旦那ができると、 そっちでいっぱい、いっぱいになって。 ああ、これからって時にね、 旦那の為だけにね、なっちまって。 そんなこんなしてる内に、 黒墨に罹っちまうし。 ああ、黒墨っていうのは、 当節、流行りの、女だけがなる病で、 俺も詳しくは、解らねえんですけどね。 最初は、サボりたいだけの仮病かと思ってたんですけど、 どうやら、本当らしくて。 あれだけ、好きだった、三味も謡も、 止めちまったのは、そ

もみぢ葉 第一話 ~艶楽の徒然なる儘                   艶楽と研之丞続き(連続短編小説)

んー、久方に、良いお天気だねえ。 少し寒いけど、布団干して、 畳みを掃いて、雑巾がけ。 案外、気持ちいいもんだよねえ。 あー、どっこいしょ。 イタタタ・・・腰だけはね、やったら、困るからね。 はぁ・・・ 研之丞の奴が、書物屋に話つけてきたから、 何か、やんなきゃとはね、思ってるんだけどねえ・・・ 「ごめんください」 あれ、聞いたことある声だねえ、誰だっけか・・・? 「はい、はい、お待ちを・・・」 ガラガラガラ・・・ 「あ、あらぁ、どうも、わざわざ、今日は、こん

もみぢ葉 第二話 ~艶楽の徒然なる儘

 秋芝居興業の入りは上々で、来る日も、来る日も、満員御礼。  まあ、女役の時に限って、よく、客が入るんだよなぁ。  で、本日も、大入り袋で、懐も温い。   「ただいまぁ・・・」  鼻歌混じりで、家に帰ると、土間で、お雪が、咳込んで、何か、気ぜわしくやっている。 「ごほっ・・・ああ、あんたぁ、アレが・・・」 「アレって?」 「みたらしの」 「団子か、団子、今日は買ってきてねえぞ」 「違うよ、アレ、付け文だよ」  見ると、竈の灰が掻き出されて、土間が灰だらけになっている

もみぢ葉 第三話             ~艶楽の徒然なる儘

ドンドン、ドンドン 「開けますよ、いるんですね、艶楽師匠」 「ああ、ケンさん、忙しないねえ、相変わらず、どうしたんだい?」 「さっき、来たら、留守だったんで」 「まあ、いつでも、居ると思うんじゃないよ」 「どこ、行ってたんですかい?」 「古物屋だよ」 「え?」 「大きなものはね、大八車で、来てもらってね。で、小さなものは、持って行ったのさ。あーあ、忙しかったよ・・・で、すっからかーんで、気持ちいもんさね」  確かに、文机一つ、って感じだけど・・・ 「はぁ、そんなの、あっ

もみぢ葉 第四話 ~艶楽の徒然なる儘

「じゃ、いいですね、庵麝先生。今、行って、艶楽師匠を迎えに行きますから、先に、安楽寺に行っててくだせえ」 「え?・・・研之丞、ちょ、ちょっと待て」 「何、言ってるんですか。待ちませんよ。意を決して、団子に付け文、そして、もみぢ葉まで添えて、一度、渡し済みなんですぜ」 「いや、それが届かなかったのだから、それは、それまでと・・・」 「だから、それは、あっしの所為ですから。邪魔しちまったんですから。仲立ち、致しますから」 「いや、待て、研之丞・・・」 「今日は、診立てをお休みにし

もみぢ葉 最終回 ~艶楽の徒然なる儘

ドンドン、ドンドン 「はいはい、どうぞ」 ガラガラ、ガラガラ・・・ 「ケンさん、今日も、興業なんだろう?・・・なんだい?そう、毎日来なくったってねえ。ちゃあんと、やってるんだから、」  にっこにこ、の笑顔、・・・は、いいんですけど、  腹の中、どうなってるんですかい?師匠。・・・狸だったんですかい? 「なあに、怖い顔して?見栄の練習かい?そんなの、稽古場でやっとくれ」 「・・・」 「なんだい?ケンさん?黙りこくって、ほんとに。具合でも悪いのかい?」 「・・・あっしだ

あの頃、出会い 前編          ~艶楽の徒然なる儘 第九話

「泣き虫は、変わんないね。ちっさい時からね。ふふふ・・・」  出会った頃みたいに、艶楽師匠は、あっしの頭を撫でた。  何かと、敏感な役者の心持・・・っていえば、カッコいいかもしれませんが・・・  まぁ、それにね、男が泣くなんて、みっともねえって、思われるかもしれませんが・・・  思えば、何度も、そんなこと、あったよなぁ・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  あの頃、まだ、幼かった頃のこと。 北の雪深い山奥から、丁稚奉公

あの頃、出会い 後編         ~艶楽の徒然なる儘 第十話

 丁稚奉公先の紺屋が、火事で焼け落ち、十のあっしは、行くところがなくなった。その晩から、艶楽師匠の家に、ご厄介になっていた。  長屋の作りだが、新しい設えで、小奇麗な部屋だった。 「そうさねえ、ここも実はさ、先頃、もらい火食らってね、火元が、この裏の、大店の物置でね。店の方は大丈夫だったからね、その店が立て直してくれたんだよ。まあ、留守中のことで、不幸中の大幸いだねえ。ふふふ、持ち物は、全部、失ったけど、世話してくださる方がいてね・・・まあ、良かったんだけどねぇ・・・しか

頼まれごとは、生涯一の仕事 その一     艶楽師匠の徒然なる儘~諸国漫遊記篇~第一話

 一応ね、ここまで、纏めたんだよ。  でも、歯抜けで、繋がらない。  少しでも、ぞんざいに扱ったら、解けて、解れて、風に乗って、どっか行っちまいそうだよねえ、これさあ、仙吉さん。  でもさ、何とか、読める所までは、書き起こしたんだよ。  これを、全部、纏めて、後の世に遺そうってぇのが、仙吉さんの望みなんだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「どうもなあ、この、絡繰りとか、弄ってるのはいいんだがな。こういう、ものの本を、じっくり読んだ

頼まれごとは、生涯一の仕事 その二 艶楽師匠の徒然なる儘~諸国漫遊記篇~第二話

「ちょいとぉ、痛いよっ、ちゃんと歩きますからっ」  あーあ、どうなっちまうんだい、ほんとに・・・。  それにしても、庵麝先生ったら、何も言わないし、研之丞も大人しくなっちまって、頼りないねえ、男二人して、本当にもう・・・。  あれ?ここ、奉行所じゃないね、まあ、何したっていうんじゃないんだろうから、すぐになんだってことでもない、・・・っていうか、ここ、碧山の旦那のご自宅じゃないか。 「旦那、つれてきやしたぜ」 「ああ、ご苦労だったな、もう、行っていい」 「わかりやした」

頼まれごとは、生涯一の仕事 その三       艶楽師匠の徒然なる儘~諸国漫遊記篇 第三話

 今回からは、私、語り部を交えた形のお伝えとなります。  よろしくお願い致します。  さて、いよいよ、艶楽たち一行と、真菰座の出立の日と、あいなりました。 「準備はできたかー、」 「はいっ、座長」  結構な荷物だねえ。まあ、商売道具一式、衣装から何から、大八車に積んでねえ。賑やかな旅だねえ。ああ、楽しみだ。城下から出たこともないからねえ。さてさて・・・。 「ああ、真菰座の旗印、綺麗な緑、いいねえ、初夏の青空に映えて」 「師匠、いいですか?」 「なんだい?ケンさん」 「