リサーチクエッションのつくりかた:③natural RQ → process RQ
▶︎ natural-RQ と process-RQ
前回まで、臨床疑問(clinical question: CQ)を研究疑問(research question)に変えるプロセスを見てきました。
✅ CQ to RQへのプロセス >>> note, & 勉強方法 >>> note
①勉強によりknowledge gapを明確にする
②疑問の質を測るFINERの篩にかける
上記の①②が確認された後、研究計画を立てることになります。
ですが、その前に、もう1つ行った方がいいことがあります。
それは、『natural-RQをprocess-RQに変える』ことです。
ナチュラルチーズとプロセスチーズってありますね。
ナチュラルチーズ:乳酸菌などの微生物の働きで乳を固めて発酵熟成させたあるがままのチーズ
プロセスチーズ:「加熱・溶かす・成形」という使用用途に応じて加工されたチーズ
RQは、芋づるの先頭バッターです。
どういうことか?臨床研究は、RQに答えようとする形で進んでいきます。
つまり、その一文の臨床疑問から、研究背景、研究目的、研究方法、必要な結果、考察というすべてが芋づる式に引っ張り出されることになります。
そのRQが、一連の臨床研究における「検索ワード」になるのです、ずっと。
だからこそ、あるがままのRQでスタートを切ってはなりません。
良き答えは、良き質問によって導かれる
前回までで、勉強によってknowledge gapが明らかとなり、FINERで磨かれたRQは、すでに臨床研究が求める主要素を包含しています。
今回は、それをしっかりとRQの中に明文化する必要性、具体的方法についてみていきます。
✅ process RQとnatural RQの定義
natural RQ:まだ加工されていないRQ
process RQ:臨床研究の主要素をしっかり包含するよう明文化されたRQ
▶︎ process-RQの威力:①常に思考を促す
スーパーコーチであるトニー・ロビンズは、以下のように述べています。
そもそも考えるということは、「質問」し、それに「答える」プロセスにすぎないのだ。したがって、人生の質を変えたければ、毎日自分自身や周りの人に、どんな「質問」をすれば質の高い答えに導かれるかをいつも考えていることだ。
われわれは、質問に答えるように思考する側面をもっているのです。
そのため、RQがぼやっとしていると、思考もぼやっとしてしまいます。
「筋力って、何なんだろうね?」
これは、非常にぼやっとした質問と言えます。思考が止まりませんか?
しかし、次のような質問ならどうでしょう?
「病院を退院後の地域在住高齢者において、5年間の最大膝関節伸展筋力の変化と退院時の日常生活自立度との関連はあるか?」
これに対しては、思考が進みますよね。例えば、以下のように。
病院を退院後の地域在住高齢者→年齢は65歳以上で、病院退院後の患者をリクルートする必要があるな
最大膝関節伸展筋力→ハンドヘルドダイナモメーターで計測しようかな
退院時の日常生活自立度→FIMを使うべきか、BIを使うべきか
これが、大切なのです。
芋づる式に、思考を促していくような一文があると、その臨床研究が発展しやすくなります。
▶︎ process-RQの威力:②コンセプトを明確化し、ブレない
コンセプトとは何か?なんとなくボヤッとわかっているんだけど、その言葉が置かれることで新しい現実が見えることがコンセプトである
尾原和啓
コンセプトは大事です。
臨床研究を計画したり、実行したりしていると、五里霧中の状態になることがあります。そんなとき、あらゆる枝葉的な事象に目を奪われてしまうのです。
そうすると、1本筋の通った臨床研究になりにくく、結果、学術体系(自分以外)が利用しにくい研究になってしまいます。
そういった際の羅針盤・コンパスとなるのが、process-RQなのです。
これが具体的であるほど、「関係ない」ことが明確になるのです。
先程の例でいえば、「筋力って何だろう?」に関しては、筋力関係のことはことごとく包含されてしまうので、何が幹で何が枝葉なのかがわかりにくいです。
一方、「病院を退院後の地域在住高齢者において、5年間の最大膝関節伸展筋力の変化と退院時の日常生活自立度との関連はあるか?」であれば、「子どもの筋力が・・・」や「健康な地域在住高齢者は・・・」とかいった枝葉事項を、スパッと「関係ない!」と判断することができます。
これは、研究のアウトラインや研究計画を立てていくとより具体的になっていくのですが、それを一文でパッとわからせてくれるのが、process-RQの真骨頂です。
▶︎ 具体的なprocess-RQのつくりかた
process-RQは、以下の3要素を満たすものです。
①予測因子、②アウトカム、③目的母集団を含むリサーチクエスチョン
木原雅子/木原正博, 医学的研究のデザイン - 研究の質を高める疫学的アプローチ
例をあげながら説明します
✅ process-RQ:病院を退院後の地域在住高齢者において、5年間の最大膝関節伸展筋力の変化と退院時の日常生活自立度との関連はあるか?
以上、3つの要素を入れ込み、一文で表現するのです!
難しい作業ですが、慣れれば呼吸をするようにできるようになる、と信じます。
孔子も言っています。
「衛の君が、先生をお迎えして政治を為すなら、先生はまず何を第一にしますか」
先生がおっしゃった。「まず必ず物の名前を正すことから始めるだろう」
僕たちも、まずRQを正すことからはじめましょう。
▶︎ natural-RQ → process-RQの例
以下に、いくつかの例を示します。
✅ 例題1
natural:歩行自立した後に、動く患者さんと動かない患者さんがいるよね。その違いって何?
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process:回復期病棟入院中の体幹・下肢骨折後の高齢者における歩行自立後の身体活動量は疼痛・心理的尺度と関連するか?
✅ 例題2
natural:股関節骨折後に、膝が痛くなる患者さんが多いけど、あれってなんで?
↓↓↓
process:回復期病棟入院中の股関節骨折後の膝関節疼痛発症は、レントゲン上の大腿骨形態と関連するか?
✅ 例題3
natural:退院後って、いろいろアクシデントが起きやすそうな気がするけど、本当?
↓↓↓
process:回復期病棟から退院直後の高齢者において、転倒、住環境変更は退院直後の時期によって異なるか?
▶︎ まとめ
✅ natural-RQはprocess-RQに加工していく必要がある
✅ process-RQは、常に具体的な思考を促し、コンセプトを明確化する
✅ process-RQには、①予測因子、②アウトカム、③目的母集団を入れ込む
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